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2019年の国内株式
アジアや欧州の成長の鈍化などが懸念される一方、国内では官民挙げての「決済のキャッシュレス化」が本格化
2019年の銀行セクターの展望は?
信号で例えるなら黄色。全般的に収益の低下圧力が続くことになるでしょう。まず、日本国内においては、貸出金の残高は増えるものの金利が低下して収益を圧迫している状況は変わらないと思われます。物価が上昇しないので日本銀行が金融政策を変更するきっかけがなく、貸出金利の反転は2019年もないと思われます。貸出金の収益の落込みを支えてきたのが貸倒引当金の戻入(利益)でした。倒産が少ないため、引当率が低下したためです。しかし、引当率がこれ以上低下することは期待できないため、今後、戻入による利益は小さくなると思われます。海外においては、ドル金利上昇による与信費用の上昇、アジアや欧州の成長の鈍化などが懸念されます。米中の貿易に関する争いは、2ヶ国以外の国の経済にダメージを与える可能性もあります。こうしたことは海外ビジネスの収益にマイナス影響をあたえることとなります。
2019年の銀行セクターのキーワードは?
「守りを固める」です。国内においては、既存の貸出については借り手の状況を見て、素早く引当を行う判断を取るよう迫られることになるでしょう。また新規の貸出については採算性をより重視する、つまり審査が厳しくなる可能性があります。貸出金の利益が伸び悩む中、手数料ビジネスの強化はさらに進められることでしょう。海外においては、良質な貸出先が少なくなり、業務量が減ることになれば、資本や人といった経営資源を国内に戻す動きも出てくるでしょう。国内・海外ともに与信費用増加、貸倒引当金の増加、となり、収益の下押しになるでしょう。
2019年の銀行セクターの注目テーマは?
「キャッシュレスによる銀行の変化」です。今、日本では官民挙げて決済のキャッシュレス化を進めようとしています。既に乱立気味の決済方法は、日本の金融機関のDNAが遺憾なく発揮されているように思えます。それはさておき、いくつかの金融機関では地域や期間を限定して、実証実験を始めました。2019年は銀行が実験を実現化していくようになるでしょう。キャッシュレス化の推進により、個人顧客へ必要なときに必要なものを提供することができるようになります。また、法人顧客に対しても、決済だけではなくファイナンスニーズも満たすことができるようになるでしょう。新しいビジネスモデルを付け加える機会到来です。
鮫島 豊喜(さめしま とよき)
SBI証券 企業調査部(銀行業界、金融担当 シニアアナリスト)
1983年にシティバンクN.A.東京支店に入行。1995年にSanford C. Bernstein(現Alliance Bernstein)に入社しアナリストとしてのキャリアをバイサイドからスタート。2000年以降はセルサイドアナリストとして、日興ソロモン・スミス・バーニー(現シティグループ証券)、モルガン・スタンレー(現モルガン・スタンレー・MUFG証券)、ゴールドマン・サックスに勤務。その後BNPパリバ証券を経て、2018年3月にSBI証券に入社。
アナリストとして、20年以上一貫して日本の銀行業界を担当し、邦銀を株式の立場から見てきた。マクロに連動する業界ではあるが各社のファンダメンタルズ分析も重視したリサーチを行う。メガバンクから地方銀行までをカバー。米国コロンビア大学ビジネススクール卒業(M.B.A.)。
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