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2019年の国内株式
オリンピックに向けて活性化する「5G」サービスの開始と「IoT」のシナジーに期待
2018の情報通信サービス業界を振り返ると?
2018年の情報通信業界では、中核の通信サービスにおいて年後半にかけてあわただしい1年となりました。転機となったのが2018年8月の菅官房長官による携帯料金の値下げ余地発言と、それを契機とした携帯料金割高論の高まりです。さらに、大手通信会社の値下げ発表や、規制強化の動きも重なり、携帯電話業界に対する収益悪化懸念が台頭しました。規制強化については、2018年11月に総務省傘下の研究会が「モバイルサービスなどの適正化に向けた緊急提言案」を発表しています。この提言案では、通信料金と端末代金の完全分離や、行き過ぎた期間拘束の見直し、販売代理店に対する規制強化、などの改善策が示されています。今後は、この緊急提言案をもとに議論がすすめられ、2019年末を目処に法改正の原案となる最終答申が作成される予定です。ただし、その一方で、タクシーの配車サービスや新たな決済手段などの将来の収益につながる新たな動きも活発化しています。12月には、大手通信会社がQRコード決済について、総額100億円の大型還元キャンペーンを実施しましたが、わずか10日で予算総額に到達し、大きな注目を集めました。
2019年の業界展望は?
2019年は、プラスの動きとマイナスの動きが交錯する展開になるとみられます。プラスの動きは、次世代モバイル通信である「5G」の商用サービス開始です。携帯各社は、当初は2020年のサービス開始を予定していましたが、世界的に5Gに向けた動きが活発化する中で2019年に前倒しする意向を明らかにしています。この「5G」の商用サービスの登場により、2020年のオリンピックに向けて新サービス立ち上げの動きが活発化するでしょう。一方、マイナスの動きは、先述した規制強化の動きと大手ネット企業の携帯電話事業参入であり、一時的には懸念要因が増加することになるとみられます。ただし、通信料金の値下げや、高価な端末ばかりが売れる状況の解消により、結果的にはユーザーの購買余力が増加します。中期的には、新サービスの普及の追い風になると見られます。
2019年の注目テーマは?
2019年の注目テーマは昨年に続き「IoT(Internet of Things)」と「5G(第5世代移動通信システム)」です。「IoT」では、身の回りの全ての電子機器や各種家電、自動車、監視カメラや各種センサーなど様々なものがインターネットにつながり、より便利な世界が広がります。これまでも注目されてきた分野ですが、「高速・大容量」「多数の端末への同時接続」「低遅延化」などの特徴を持つ「5G」と組み合わされば、より大きなポテンシャルが生まれます。先述したように携帯各社は2019年より前倒しで「5G」のサービス開始をする意向を明らかにしています。すでにこのサービスインに向けて様々なトライアルが活発化していますが、サービスインを機に、「IoT」「5G」関連銘柄への注目が更に高まると思われます。
森行 眞司(もりゆき しんじ)
SBI証券 企業調査部(情報通信サービス・インターネット業界担当 シニアアナリスト)
1988年に大和証券に入社しアナリスト業務を開始。以来、三菱UFJモルガンスタンレー証券、SMBC日興証券、シェアードリサーチにて、約30年にわたりアナリストとして調査・分析に携わる。担当分野は、機械、自動車・自動車部品業界、情報通信サービスなど。また、IT・情報通信・メディアセクターのチームヘッドを歴任。6年半の欧州(ロンドン、フランクフルト)駐在時には、情報通信、運輸、素材などの欧州企業の調査業務にも従事した。 1992年以降は情報通信サービス業界を中心に担当。 日経ヴェリタス、Institutional Investorのアナリストランキングでは常に上位にランクイン。トムソンロイターのスターマイン・アナリストアワードでは、通信部門で計4回の首位を獲得。 2017年6月末より現職。幅広いセクター経験を活かし、情報通信サービス業界の主力銘柄とともに、周辺銘柄の発掘にも注力する。
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