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金価格とマネーサプライの関係に注目
提供元:森田アソシエイツ
コロナワクチン接種により、マクロ環境の不確実性が低下し、セーフヘブン需要が減少したため、金価格がしばらく下落傾向にあった。しかし、ここに来て、世界経済の回復に伴い 銅、アルミニウム、材木などの素材が高値を更新し、価格インフレが顕在化している。パウエルFRB議長は、こうした物価高騰は一時的であるとの認識を示しているが、米国経済の成長軌道を維持する超緩和的な金融政策を継続しない選択肢は取りづらく、インフレをコントロールすることは困難であると考える投資家が増加している。平均賃金の上昇も、インフレの進行を意識させる材料である。さらに、急増する米国政府債務や膨らみ続けるFRBのバランスシートが過剰流動性を生み、資産インフレをもたらすリスクについても警戒感が増している。
実際、米国の中期インフレ期待は加速して上昇しており、高水準に達している(図表1参照)。また、「インフレ」をキーワードにしたインターネット検索が急増していることが報道されており、消費者の自己防衛意識の高まりがうかがえる。インフレ対策の必要性についてコメントする機関投資家も多見されるようになった。インフレの上昇が、ドルの購買力低下を招き、逆相関の関係にある金価格を押し上げる圧力になっている。
金はインフレヘッジ機能があると言われ、データでも確認できるが、どのインフレ指標が金価格との相関が高いのか、あまり正しく認識されていない。代表的なものは消費者物価指数(CPI)であるが、実は、金価格との関係は安定しておらず、中長期の相関も高くないという分析結果が度々報告されている。
一方、米国のマネーサプライM2は、金との相関が高くかつ安定的であることが、調査によって明らかにされている。CPIは主に伝統的な物価インフレを捉えているが、M2の方は緩和的な財政・金融政策がもたらす通貨価値の毀損や資産インフレも対象としているため、より広範囲にインフレリスクを把握できることが、主な理由として指摘されている。
他に、世界ベースのマネーサプライM2や複数の指標を混合したインデックスなども検証されているが、いずれも米国M2ほど金価格とのしっかりした相関が見られない。
(図表1)米国インフレ期待
米国M2は、2020年以降、リーマンショック後よりも高い伸び率を示しており(図表2参照)、正常化するまでの過程で、金融市場の混乱や高インフレリスクをもたらすリスクがあることは否定できない。確かに、物価連動債や一般的なコモディティは、物品・サービスの価格上昇に対するヘッジとして機能するが、購買力全般の保全において力不足である。その意味において、金は極めて少ない選択肢の一つである。
(図表2)米国M2およびMZMマネーサプライ
それを映してか、2021年第1四半期の地金・コイン需要は、ほぼ全ての国や地域において、コロナウイルス発生前を大きく上回るレベルまで急増しており(図表3参照)、根底にあるのはインフレおよび自国通貨の価値下落に対する警戒感である。また、上昇する原材料費や賃金がどのように企業の業績・経営計画・株価に影響を与えるかも要注意であり、ポートフォリオ分散効果も提供できる金への関心が、機関投資家の間でも広がっている。
(図表3)地金・コイン需要
インフレは、今後の金価格を考える上で重要な要素であり、米国M2の行方にぜひご注目を。
森田アソシエイツ 森田 隆大(もりた たかひろ)
ニューヨーク大学経営大学院にてMBA取得。1990年にムーディーズ・インベスターズ・サービス本社(ニューヨーク)にシニア・アナリストとして入社。2000年に格付委員会議長を兼務。2002年に日本及び韓国の事業会社格付部門の統括責任者に就任。2010年にワールド・ゴールド・カウンシルに入社、翌年、日本代表に就任。金ファンダメンタルズおよび投資における金の役割に関する調査・研究の提供、および投資家との直接対話を通して、金投資の普及活動に取り組む。
2016年に森田アソシエイツを設立、ワールド・ゴールド・カウンシル顧問を兼務。現在、埼玉学園大学大学院客員教授、特定非営利活動法人NPOフェアレーティング代表理事、MSクレジットリサーチ取締役兼評価委員会議長も兼任。立命館大学金融・法・税務研究センターシニアフェロー、法政大学大学院兼任講師を歴任。
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