6月に入り日経平均株価は底固い動きになっています。FRB(米連邦準備制度理事会)による利下げシナリオがFOMC(米連邦公開市場委員会)後のパウエル議長の記者会見(6/19)で改めて確認され、米国株の上昇基調が続いたことが追い風になりました。加えて、G20大阪サミット(以下「G20」)で米中首脳会談が開催される方向になったことも好感されました。
ただ、内容的には盛り上がりに欠ける展開です。米中首脳会談が予定されているG20の開催を控え、東京株式市場では様子見気分が強まっており、6/24(月)には東証1部の売買代金が約4年半ぶりの低水準まで減少してしまいました。今後もしばらく続くであろう梅雨のように、しばらくは冴えない相場が続くのでしょうか。
確かに株式相場には波乱の兆しが見えつつあります。6/25(火)の東京株式市場ではドル・円相場が静かに、半年ぶりに1ドル106円台に突入し、株価もじわり下げています。さらに、相場の先行きには意外な展開が待っているのかもしれません。
日経平均株価(図1)は6月第1週(6/3〜6/7)の前週末比1.4%高、第2週(6/10〜14)の1.1%高に続き、第3週(6/17〜21)も上昇し、前週末比141円75銭(0.7%)高となりました。FRBによる利下げシナリオがFOMC後のパウエル議長の記者会見(米国時間6/19、日本時間では6/20)で改めて確認され、米国株の上昇基調が続いたことが追い風になりました。加えて、G20で米中首脳会談が開催される方向になったことも好感されました。
ただ、米ドローンをイランが撃墜(6/20)した事件に絡み、米トランプ大統領がイラン攻撃を一旦は承認していたことが報じられるなど、地政学的リスクの台頭もみられました。また、米国の金融緩和基調を背景に、ドル・円相場については6月第2週末には1ドル108円台半ばでしたが、6/20(木)には同107円台前半と、円高・ドル安が進行しました。その分、東京株式市場は内容的には迫力を欠く展開になっています。
米中首脳会談が予定されているG20の開催を控え、東京株式市場では様子見気分が強まり、6/24(月)には東証1部の売買代金が1.4兆円台と約4年半ぶりの低水準まで減少してしまいました。今後もしばらく続くであろう梅雨のように、しばらくは冴えない相場が続くのでしょうか。
ちなみに、6/17(月)〜6/25(火)の日経平均株価の日次の動きは以下のようになっています。なお、米国株はS&P500で6/20(木)に過去最高値更新となりました。
- 6/17(月)7円11銭高・・・半導体の下げが響きましたが、香港株の反発で切り返しました。売買代金は1.6兆円台に低迷です。
- 6/18(火)151円29銭安・・・一目均衡表の「要注意日」。様子見気分が強く、日経平均高寄与度銘柄の下げが目立ちました。
- 6/19(水)361円16銭高・・・米トランプ大統領がG20で米中首脳会談開催をツイートし、NYダウ(6/18)が353ドル高しました。
- 6/20(木)128円99銭高・・・FOMC後のパウエルFRB議長会見で利下げシナリオが確認されました。
- 6/21(金)204円22銭安・・・米トランプ大統領が一旦はイラク攻撃を承認し、その後に撤回したことが伝わりました。
- 6/24(月)27円35銭高・・・G20を控え様子見。売買代金が1.4兆円台と14/12/26以来の低水準にとどまりました。
- 6/25(火)92円18銭安・・・「米トランプ大統領が日米安保条約に不満」との報道が警戒された上、円高も逆風になりました。
米国で金融緩和への流れが強まる中、同国の10年国債利回りが5月末の2.13%から6/24(月)には2.02%まで低下し、それを受けてドル・円相場(図3)も同じ期間、1ドル108円台から107円台へと円高・ドル安が進みました。すなわち、米国の金融緩和期待は同国株高という追い風を東京市場に吹かせる一方で、円高・ドル安という逆風を吹かせており、強弱材料が相殺され、東京市場での投資家の様子見気分を強めさせる要因にもなっています。
図1 日経平均株価は25日移動平均の上方で展開
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/6/25取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/6/24現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/6/25取引時間中
6/25(火)は6月末に配当や株主優待の権利が確定する銘柄の権利付最終日になっています。6月決算と言うよりも、12月決算の銘柄数がそこそこ多いため、6/26(水)の権利落ち以降の値動きに注意すべき銘柄も少なくありません。また、6/27(木)は株主総会の集中日となっています。東証調べでは3月決算企業2,330社のうち719社(30.8%)がこの日の開催を予定しています。
ちなみに、3月決算銘柄の株主総会は「6月最終営業日の前営業日」に集中しやすいようです。そこで、この株主優待集中日とその5営業日後の日経平均株価を比べてみると、過去10年では5勝5敗と言う成績です。株主優待集中日前後で株価の方向性が変わる傾向はあまり認められないようです。
表1 今後約2週間の重要スケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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6/25(火) |
日本 |
日銀会合(4/25発表分)議事要旨 |
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日本 |
★決算発表〜高島屋 |
インバウンド消費や、国内個人消費等の先行きを占う |
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日本 |
6月末権利確定銘柄の権利付最終日 |
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- |
OPEC総会 |
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米国 |
4月FHFA住宅価格指数 |
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米国 |
4月S&PコアロジックCS住宅価格指数 |
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米国 |
5月新築住宅販売件数 |
市場コンセンサス(前月比)は1.8%増 |
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米国 |
6月コンファレンスボード消費者信頼感指数 |
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米国 |
☆決算発表〜レナー、フェデックス |
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6/26(水) |
米国 |
5月耐久財受注(輸送用機器を除く) |
市場コンセンサスは前月比0.1%増 |
6/27(木) |
日本 |
株主総会集中日 |
|
米国 |
☆決算発表〜ナイキ |
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6/28(金) |
日本 |
日銀会合(6/20発表分)「おもな意見」 |
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日本 |
5月失業率、有効求人倍率 |
前回は失業率2.4%、有効求人倍率1.63倍 |
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日本 |
5月鉱工業生産 |
前回(前月比)は0.6%増 |
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日本 |
★決算発表〜Jフロント |
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日本 |
G20首脳会議(大阪サミット) |
〜6/29(土) |
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6/30(日) |
中国 |
6月製造業PMI |
市場コンセンサスは49.5(50が好不況の分かれ目) |
7/1(月) |
日本 |
6月日銀短観 |
大企業・製造業業況判断指数の市場コンセンサスは+9 |
中国 |
6月製造業PMI(財新) |
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- |
夏季ダボス会議(大連) |
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米国 |
6月ISM製造業景況指数 |
市場コンセンサスは51.2 |
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7/3(水) |
日本 |
★決算発表〜ニトリHD |
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米国 |
6月ADP雇用統計(雇用者数) |
市場コンセンサスは91千人増(前回は27千人増) |
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米国 |
6月ISM非製造業景況指数 |
受注、雇用等の個別指標にも注目 |
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7/4(木) |
日本 |
★決算発表〜ABCマート、7&I HD |
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米国 |
◎休場(独立記念日) |
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7/5(金) |
日本 |
★決算発表〜イオン |
株主優待で人気の企業 |
米国 |
6月雇用統計 |
非農業部門雇用者数(前月比)の市場コンセンサスは169千人増 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
すでにご説明してきたように、6月に入り日経平均株価は底固い動きになっています。米国で金融緩和への期待が強まっているためです。ただ、内容的には盛り上がりに欠ける展開です。G20の開催を控えて様子見気分が強まっており、6/24(月)には東証1部の売買代金が約4年半ぶりの低水準まで減少してしまいました。さらに、株式相場には波乱の兆しが見えつつあります。6/25(火)の東京株式市場ではドル・円相場が静かに、1ドル106円台に突入し、株価もじわり下げています。相場の先行きには意外な展開が待っているのかもしれません。
図4をご覧ください。NY市場では、金先物価格が過去5年程度続いてきたボックス相場の上値抵抗ラインを突破してきたようにみられます。金先物価格は過去5年程度、1トロイオンス1,350〜1,370ドルを上値抵抗ラインとし、そこまで上昇すると跳ね返される傾向にありましたが、6/21(金)に、1トロイオンス1,400ドル台を回復し、6/24(月)には1,418ドルまで進んでいます。金の上昇は、ドルの先安観を示唆したり、既存の通貨への不安を示したりしていると考えられます。ここにきて仮想通貨が勢いを取り戻していることを考えると、これらの相場変動の背景で、マネーの流れに大きな変化が生じているかもしれません。
図5に示されたように、米国では政策金利が引き下げられる可能性が強まっています。金利先物市場からみると、年内に政策金利が引き下げられる可能性は100%に達しています。問題はどの程度の引き下げがあるかということですが、現状から0.5%下がる確率より、0.75%下がる確率の方が高くなっています。1回の利下げが0.25%の場合、市場は年内に2〜3回の利下げがあると予想していることになります。
金相場の大きな変動まで勘案すると、ドル相場の先行きは弱い可能性が大きく、今後円高がさらに加速する可能性は大きいと考えられます。すでに1ドル106円台に入ったドル・円相場が同105円台で止まるとは考えにくく、1ドル100円程度の円高・ドル安になっても不思議ではないと思われます。無論、日銀も追加緩和余地を探ることになりそうですが、その場合、金融セクターの低迷をさらに長期化させる副作用に配慮する必要が出てきそうです。なお、金相場の上昇が例えば中国からの資金流出等、他の要因による場合は別の注意が必要になるかもしれません。
なお、FOMCメンバー17人の予想をみると、年内利上げは1人、政策金利据え置きは8人となっています。0.25%の利下げは1人で、0.5%の利下げは7人となっています。金利先物市場の方が利下げに対してやや前のめりになっているとの印象があり、注意が必要です。仮に、米中協議で何らかの合意が成立した場合、金利引き下げ観測後退という形で揺り戻しが来る可能性もあります。短期的にはそうした面での注意も必要です。
金融緩和は米国市場を中心に追い風になると考えられますが、ゼロ金利政策の効果が乏しかった日本にとっての好影響は限定的となり、景気・企業業績の悪化とともに次第に売り圧力が強まるシナリオに注意が必要です。
図4 NY金先物(1トロイオンス当たりドル)
(1)過去5年(月足)
(2)過去10年(月足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成
図5 金利先物市場が予想する2019年末の米政策金利(上限)の水準は?
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。金利先物市場が年内の米政策金利の各水準について、それらが実現する確率を示しています。あくまでも、確率であり、実際には意外な結果になる可能性もあるので注意が必要です。