2017年もあとわずかとなったところで、海外ETFの年初来騰落のランキングを作成してみました。騰落率トップは電気自動車(EV)へのシフトで注目されるレアアース関連の企業に投資するETFと判明しました。これを含む、騰落率上位のETFをご紹介いたします(図表1)。
図表1:騰落率ランキングから注目のETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
---|---|---|---|
REMX | ヴァンエック ベクトル レアアース ETF | ||
SCIF | ヴァンエック ベクトル インド小型株ETF | ||
02801 | iシェアーズ MSCI チャイナ インデックス ETF | ||
EPOL | iシェアーズ MSCI ポーランド・キャップト ETF | ||
03087 | db x トラッカーズFTSE ベトナムUCITS ETF |
※SBI証券が作成
当社取扱の海外ETF(ブル・ベア型を除く)について、年初来騰落率のランキングを作成し、上位15銘柄を図表2にリストアップしています。
インド、中国、ブラジル、ポーランド、ベトナムなど新興国関連のETFが上位を占めました。投資テーマでレアアース関連、テクノロジー関連のETFもランクインしています。
年初来騰落率が上位で、かつ、過去3ヵ月の騰落率もプラスのものから、レアアース関連株、インドの小型株、中国株、ポーランド株、ベトナム株のETFを選んでご紹介いたします。
〇ヴァンエック ベクトル レアアース ETF(REMX)
同ETFは7月から上昇し始めて年間の騰落率トップとなりました。過去3ヵ月でも2桁の上昇となっており、物色が継続していると言えそうです。
中国経済の堅調と環境規制の強化を受けて銅、アルミニウム、ニッケルなど幅広い非鉄金属市況が上昇したこと、さらに、イギリス、フランスが先行きガソリン自動車を禁止する方針を打ち出して電気自動車(EV)シフトへの期待が高まったことが株価上昇の背景と見られます。
EVの普及が進むと駆動装置となるモーターの需要拡大が想定され、これに多く使われるレアアースへの需要増が見込まれます。EVへのシフトは息の長い投資テーマになると考えられ、また、なかなか投資しにくい分野でもあるため、注目のETFと言えるでしょう。
同ETFは、「マーケット・ベクトル・レア・アース / ストラテジック・メタルズ指数」への連動を目指し、主に希土類および戦略的金属や鉱物の生産、精錬とリサイクルに関連する多様な活動に従事する上場企業の株式から構成されます。
組入れ上位銘柄(12/26時点)は、中国本土株のアモイ・タングステン、チャイナ・ノーザン・レアアース、香港上場の洛陽モリブデン(03993)、オーストラリアのライナスコーポレーション、米国のトロノックスなどになります。
〇ヴァンエック ベクトル インド小型株ETF(SCIF)
インドの小型株に投資する同ETFは、年初来65.4%上昇して騰落率2位でした。過去3ヵ月でも23.4%の上昇と、物色傾向が続いているとみられ、注目できるでしょう。
インド株式の代表的な株価指数である、インドSENSEX指数の年初来上昇率は25.7%ですので、インドの小型株は大幅にアウトパフォームしたことになります。その推移を確認すると年間を通じて徐々に超過パフォーマンスを累積しています。
インドについては、モディ首相による経済改革への期待が高まっています。「高額紙幣の廃止」「物品サービス税の導入」などドラスチックな政策によって短期的には経済活動の混乱もありましたが、中長期には経済取引の円滑化によって成長確度を高めると期待され、株式市場の上昇が有望視されています。
〇iシェアーズ MSCI チャイナ インデックス ETF(02801)
香港ハンセン指数は年初来で34.4%上昇して、主要市場の中では非常に高い上昇率となりました。中国経済の堅調に加え、株価指数を提供するMSCI社が中国本土株の「MSCIエマージング指数」への組入れを決定したことも株価の追い風になったとみられます。
ただ、ランキング3位「03040」の53.2%、同4位「02801」の51.8%とは開きがあります。理由の一つは、人民元が対ドルで6.1%上昇したこと、もう一つは、両ETFとも「MSCI中国指数」への連動を目指しますが、同指数は株価が大幅に上昇したアリババグループ(BABA)とテンセント(00700)の組入れ比率が高いことと考えられます。
〇iシェアーズ MSCI ポーランド・キャップト ETF(EPOL)
ポーランドの代表的株価指数のワルシャワWIG指数は、年初来で22.2%上昇しています。さらに、通貨のポーランドズロチが対ドルで18.2%上昇したことから、トータルで40%以上の上昇となっています。
同国は欧州の新興国と位置づけられ、ユーロ圏に比べてベースの成長率が高いうえ、昨年からの欧州経済回復の恩恵を受けていることが好パフォーマンスの要因と考えられます。同国の実質GDP成長率は、16年の前年比2.9%増から17年は同4.3%増に改善する見込みで、7-9月期は前年同期比4.9%増まで改善しています。
〇db x トラッカーズFTSE ベトナムUCITS ETF (03087)
同ETFの上昇率が42.5%、ベトナムの代表的な株価指数であるVN指数は年初来45.3%の上昇ですので、ほぼ指数に沿った上昇です。10/27(金)に掲載の「景気指標の改善を背景に再び騰勢を強めるベトナム株式」でご説明した通り、景気指標の改善が株価上昇の主因と見られます。
また、11月には香港のジャーディンマセソンがベトナム最大の不動産企業ビングループの株式を取得したことやビングループによるショッピングモール運営子会社の分離上場の成功などが資金流入の契機となった可能性がありそうです。
ベトナム市場の時価総額は、ホーチミン取引所が約12.9兆円、ハノイ取引所が約0.5兆円と小さく、海外投資家の注目を集めると大きく押し上げられる可能性があります。サムスン電子など主要な進出企業が牽引して経済は好調が続く見通しで、引き続き注目できるでしょう。
図表3では、上記でランキングから除いたブル・ベア型の騰落率上位銘柄を、ご参考にリストアップしています。
図表2:年初来騰落率の上位(ブル・ベア型を除いています)
市場 |
コード |
銘柄 |
年初来 |
3ヵ月 |
---|---|---|---|---|
NYSEArca |
REMX |
ヴァンエック ベクトル レアアース/戦略的金属ETF |
70.6 |
16.5 |
NYSEArca |
SCIF |
ヴァンエック ベクトル インド小型株ETF |
65.4 |
23.4 |
香港市場 |
03040 |
Mirae Assetホライズン MSCI 中国 ETF |
53.2 |
7.2 |
香港市場 |
02801 |
iシェアーズ MSCI チャイナ インデックス ETF |
51.8 |
5.9 |
NYSEArca |
EPOL |
iシェアーズ MSCI ポーランド・キャップト ETF |
47.2 |
2.8 |
NYSEArca |
BRF |
ヴァンエック ベクトル ブラジル小型株ETF |
44.6 |
-4.6 |
香港市場 |
02848 |
db x トラッカーズ MSCI 韓国インデックスETF |
42.6 |
7.9 |
香港市場 |
03087 |
db x トラッカーズFTSE ベトナムUCITS ETF |
42.5 |
23.2 |
香港市場 |
02823 |
iシェアーズ FTSE 中国A50 インデックス ETF |
42.1 |
9.7 |
香港市場 |
02802 |
iシェアーズ MSCI エマージング アジアインデックスETF |
42.0 |
6.6 |
NYSEArca |
IXN |
iシェアーズ グローバル・テクノロジー ETF |
39.7 |
8.8 |
香港市場 |
02836 |
iシェアーズ S&P BSE SENSEX インディアインデックスETF |
38.6 |
11.2 |
香港市場 |
02835 |
Mirae Assetホライズン KOSPI 200 ETF |
38.6 |
7.1 |
香港市場 |
02846 |
iシェアーズ・コア CSI 300 インデックスETF |
38.0 |
7.0 |
NYSEArca |
EPI |
ウィズダムツリー インド株収益ファンド |
37.6 |
12.5 |
注:当社が取り扱う298の海外上場ETFからブル・ベア型を除いたものが母集団です。騰落率はNYSEArca市場上場銘柄が米ドル建て、香港市場上場銘柄がHKドル建てですが、両通貨はペッグされているため比較可能です。17年12月26日までのデータによります。
※当社WEBサイト、BloombergのデータをもとにSBI証券が作成
図表3:ブル・ベア型の年初来騰落率上位
市場 |
コード |
銘柄 |
年初来 |
3ヵ月 |
---|---|---|---|---|
NYSEArca |
LABU |
DirexionデイリーS&Pバイオ株ブル3倍ETF |
152.3 |
-0.6 |
NYSEArca |
EDC |
Direxion デイリー新興国株ブル3倍 ETF |
128.4 |
17.6 |
NYSEArca |
INDL |
DirexionデイリーMSCIインド株ブル3倍ETF |
126.5 |
37.0 |
NYSEArca |
CHAU |
DirexionデイリーCSI300中国A株ブル2倍ETF |
75.4 |
16.0 |
NYSEArca |
CURE |
Direxionデイリーヘルスケア株ブル3倍ETF |
71.1 |
5.9 |
注:当社が取り扱うブル・ベア型のETFが母集団です。17年9月27日までのデータによります。
※当社WEBサイト、BloombergのデータをもとにSBI証券が作成