夏場にかけて上昇一服となっていたベトナム株式が、景気指標の改善を背景に再び騰勢を強めています。世界経済の改善とリスク要因の減少を背景にPERには上昇余地があるとみられ、引き続き注目できるでしょう。
図表1:ベトナム株式に投資するETF(上場投資信託)
取引 | チャート | コード | 銘柄 |
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VNM | ヴァンエック ベクトル ベトナムETF(VNM) | ||
03087 | dbx FTSEベトナム(03087) |
※SBI証券が作成
ベトナム株式市場が順調に上昇しています(図表2)。年初来10/26(木)までに25%上昇して、新興国株式の中でも比較的高い上昇率です。
同国の景気指標は夏場にかけて改善の動きが停滞して、株式市場も7月から8月にかけて上昇一服となる場面がありました。しかし、図表3の通り、9月の景気指標がいずれも好調であったことから、再度騰勢が強まっています。
企業の景況感を示す日経製造業PMIは5月から8月まで51台にやや低迷していましたが、9月には53.3ポイントに上昇しました。
同様に鉱工業生産は4月から9月にかけて前年比7〜8%増が続いたあと、9月には同13.2%増へ一段レベルが上がりました。年初来9ヵ月の主要品目別生産量は、テレビ、粗鋼、圧延鋼材、天然繊維布、肥料などが伸びを牽引しています。
輸出は世界経済の回復と電子機器輸出の伸びを受けて4月以降は前年比15%以上の伸びが続いていますが、9月には前年比19.8%増と年初来で最高の水準まで上昇しました。
また、同国の実質GDPの伸び率は、サムスン電子が同国で生産する「ギャラクシー ノート7」のリコールの影響で1-3月期は前年比5.1%増まで低下しましたが、「ギャラクシー8」の出荷が始まると安定し、4-6月期に同5.7%増、7-9月期に同6.4%増と回復してきました。
ベトナムの主要経済指標は、10/26(木)〜31(火)に鉱工業生産と貿易統計、11/1(水)に日経製造業PMIの10月分が発表される予定で、9月分に続いて高い水準となるか注目されます。
企業業績については、ベトナムVN指数採用企業のEPSは17年12月期に前年比15%増、18年12月期は同13%増が予想されています。予想PERは株価の上昇を受けて17年12月期基準で16.9倍まで上昇してきましたが、18年12月期基準では15.0倍となる計算です(図表4)。
世界経済は緩やかながらも改善傾向が続いていること、同時に世界経済のリスクとなり得る要因が少なくなっていることから、予想PERは上昇余地を残していると考えられ、引き続き注目できそうです。
一方、ベトナム株式に投資する際のリスク要因としては、FRB(米連邦準備制度理事会)人事を要因に米長期金利が上昇する可能性があげられるでしょう。米国の金利が上昇すると新興国からの資金流出が懸念されるためです。
しかし、議長人事を要因とするものであれば、ワンオフのイベント(一度限りのイベント)になると考えられます。もしこれが原因で下落するようなら、買いのチャンスとなるのではないでしょうか。
図表1は、当社が取り扱うベトナム株式に投資するETFです。「ヴァンエック ベクトル ベトナムETF」は、NYSEアーカ市場に上場する「マーケット・ベクトル・ベトナム・インデックス」への連動を目指すETFです。同インデックスは、ベトナム株式で流動性の高い大企業から組成されています。
「dbx FTSEベトナム」は、香港市場に上場する「FTSEベトナム・インデックス」への連動を目指すETFです。同インデックスは、外国からの投資が十分可能である約20銘柄から組成されています。
図表2:順調に上昇するベトナム株式(ベトナムVN指数、日足、1年)
※当社WEBサイトを通じてSBI証券が作成
図表3:ベトナムの経済指標は9月に改善
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
図表4:予想PERは上昇してきたが、まだ上昇余地あり?
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成