10月10日、ブラジル中央銀行が政策金利を25bp引き下げ、7.25%にすることを発表した。今回の利下げにより、同国中銀は昨年8月から10会合連続で利下げを決定したことになり、ついに利下げ幅は累計で525bpとなった。リーマンショック後の連続利下げによる累計利下げ幅の500bpを超えることとなった。
8月のレポートにおいて、「今回の利下げを受け、昨年からの利下げサイクルは終了した可能性が高いと考えている。あっても、年内にあと1回あるかどうかというところだろう。」と指摘したが、実際に今回の金融政策委員会前にはエコノミストの間でも「金利据え置き」か「小幅な利下げ」で意見が割れていた。
実際には「小幅な利下げ」という結果になった訳だが、今回の結果を受けても前述のレポートで指摘した相場の見方に変更はない。今回の利下げをもって利下げサイクルは完了し、同国中銀は年内は緩和策の効果を慎重に見極めるスタンスをとるだろう。
その根拠として、これまでは利下げ幅が50〜75bpであったところ、今回の利下げ幅は25bpと縮小したこと。また、8名の政策委員のうち3名が「金利据え置き」という判断を下したという点である。今年の5月以降は全会一致での政策決定がなされていた訳だが、今回は政策委員の中でも意見が割れており、今回の利下げを以って、当面は追加利下げは実施されないと考える。
同国のマクロ指標を見ると、消費者物価はやや上向きながらも横ばいを維持しているが、生産者物価は急角度で上昇している。これまでも指摘してきたが、タイトになった労働市場や、年初に行われた最低賃金の引き上げ等を考慮すると同国のインフレ圧力は燻っているとの考えが適当であり、また原油をはじめとするエネルギー価格の上昇や、異常気象を背景とする穀物価格の上昇などが更にインフレ圧力を強いものとする可能性は高い。
同国中銀はインフレ指標について中央値(4.5%)に上下2%のレンジを設けているが、上限に達せずとも利上げに踏み切るケースは過去にも見られており、年明け以降は利上げの時期を模索する展開となろう。要人の発言等を見るに、直ちに利上げはしない旨が読み取れるが、現時点において額面通り受け取っても問題はないものの、利上げを意識した海外投資家のレアル買いを牽制したいとの思惑が背後にはあると考える必要もあるだろう。
年内は同国において大きな金融政策の変化は見られなくなりそうだが、それだけに同国をとりまく外部環境の変化にはこれまで以上に注意を払うべきである。今後は年明け以降の利上げタイミングも含め、それを市場が織り込み始めるタイミングや、通貨高に対する同国当局の対応など、様々な動きをウォッチし、変化がある毎に引き続きこの場で情報を配信していこうと考えている。