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基礎から学ぶSTO 〜仕組みと魅力〜
STOはSecurity Token Offeringの略称で有価証券の性質を有したトークン(デジタルデータ)を用いた資金調達手法を指し、金融商品取引法及び関連府令の改正により「電子記録移転権利・電子記録移転有価証券表示権利等」(以下、セキュリティ・トークンという)が定義されました。
STOは新しい資金調達の手法として注目され、従来は資金調達が困難であったビジネスやプロジェクトへの活用、これまでの有価証券とは異なる商品性を持つ金融商品の研究が進められています。今回は「基礎から学ぶSTO」と題してSTOの仕組み・魅力を解説します!
- ※本ページはSTOに関する制度概要や商品性一般のご案内・情報提供のみを目的としており、個別の金融商品の勧誘や売買の推奨を行うものではありません。
STO(Security Token Offering)
とは
STOの由来と有価証券の歴史
STOはSecurity Token Offeringの略称で、株式投資の経験のある投資家の方であれば語感がIPOと似ていることにお気づきになるかと思います。
IPOは Initial Public Offeringの略称で新規株式公開を指し、未上場企業が取引所に上場し株式を公開することを指します。セキュリティ・トークンとは有価証券の性質を有したトークン(デジタルデータ)を指し、このトークンを活用した資金調達手法がSTOと呼ばれています。
STOとは別にトークンを活用した資金調達にはICOと呼ばれる手法も存在します。ICOはInitial Coin Offeringの略称で暗号資産(仮想通貨)を用いた資金調達手法として2017年〜2018年にかけて急速に広がりを見せた資金調達手法です。STOはICOで発生した様々な問題を解決する1つのアプローチとして、暗号資産で培った技術的なノウハウを活用しつつ、法令順守の観点から有価証券規制の枠組みが採用されており、技術的な先進性と法律による投資家保護・ガバナンスという特徴を有します。
IPO
法令に従って発行・取引され、
また権利が保証される
中央管理機関によって
システムが一元管理される
STO
法令に従って発行・取引され、
また権利が保証される
信頼できる関係者によって
システムが共同管理される
ICO
発行のルールが特になく、何か
の権利を保証するものではない
管理者の存在しない
システム基盤が利用される
- ※ICOは日本国内では暗号資産に分類され資金決済法の適用を受ける可能性もございます。
セキュリティ・トークンはICOで活用されたブロックチェーンと呼ばれる分散台帳技術やトークン(コイン)のノウハウを有価証券に応用したデジタルな有価証券です。
株や債券等の証券はその昔、券面(紙媒体の証券)が存在しておりました。その後、制度改正により証券保管振替機構(ほふり)と呼ばれる中央集権管理機関において一括管理される仕組みが導入されました。
ほふりによる管理では券面不発行となり、振替口座簿と呼ばれるデータへの記録を持って権利者を確定させます。ほふりは「社債、株式等の振替に関する法律」により定義されますが、セキュリティ・トークンの場合は「社債、株式等の振替に関する法律」の適用を受けず、ほふりで管理されずブロックチェーン技術等を活用した独自のインフラ基盤を用いて発行・管理され取引データが記録される点が特徴と言えます。
有価証券の発行・流通を俯瞰すると紙媒体から券面不発行の集中管理の時代を経て、デジタル有価証券に形を変え新たな分散型の発行・流通モデルの検討という大きな転換点に差し掛かっているのかもしれません。
券面管理
- 株券
- 債券
- ファンド信託受益権等
ほふり管理
- 株式データ
- 債券データ
- ファンドデータ
ブロックチェーン管理
- 株式トークン
- 債券トークン
- ファンドトークン
STOの特徴と魅力
前段の“STO(Security Token Offering)とは”ではIPO・ICOとの違い、名前の由来、管理方法の違いについてポイントを説明いたしました。続いて2019年の法改正以降、STOが注目を集めている理由を探ってみたいと思います。
特徴・魅力
資金調達手法の多様化と期待効果
これまで資金調達と言うと、銀行借入・社債発行(Debt finance)と株式発行(Equity finance)がまず検討されておりました。各資金調達方法にはそれぞれメリット・デメリットが存在いたしますが、STOはこれまでの資金調達手法では満たすことが比較的難しかったニーズを満たす可能性が期待されています。
例えばベンチャー企業が資金調達を検討する際、これまではVC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家から出資を募り、株式の第三者割当増資形式で資金調達しております。このような手法では通常、企業は一定期間後までにIPOを目指すという使命を負います。
はたして株式以外の調達方法、プロ投資家以外を対象とした資金調達手段は検討できないのでしょうか。投資家の出資目的はリターンでも重視する要素は様々であり、経営に積極的に関わる投資家・キャピタルゲインを追求する投資家・ファンとして金銭以外の価値を求める投資家など様々な投資家が想定されます。
今後、株式ではなくセキュリティ・トークンでの資金調達を実現することで、様々な投資家層のニーズに沿った投資機会を提供しつつ、資本政策の柔軟性を高めることが期待できます。このようなケースでSTOを活用することで新しい投資家層へのアプローチと株式以外のファイナンスの検討が可能となります。
他にも、これまではクラウドファンディング等を活用することが多かったプロジェクトベースの事業へのSTOの活用も期待できます。クラウドファンディングは法律的な整理が曖昧で、投資型クラウドファンディングを除くと、ファンによる応援・共感がベースとなるものが多く、大きな金額を集めることは難しい状況でした。
STOではこれまでのアプローチに“投資”のスキームを適用することで従来のボランティアベースに加えて、“出資とリターン”の関係を構築することが可能となります。投資家は自身が興味のあるビジネスや趣味に対して投資を行い、事業が成功した場合には従来のオマケに加えて金銭的なリターンも得ることが可能な設計が可能であり、“投資家=ファン”という図式が成り立ちます。共感投資と呼ばれる事例が増えつつある中、資金調達とマーケティング・ファンコミュニケーションを両立したエコシステムを構築する手法には注目が集まります。
上記の通りSTOは伝統的な有価証券のトークン化以外の活用も検討されております。結果として、これまでプロ投資家等に限定されていた金融商品が小口化され個人投資家が購入可能となる可能性があります。
また中長期的には技術的発展の恩恵を受けつつ、セキュリティ・トークンを取扱う金融市場インフラの整備・高度化、PTSを含むセカンダリーマーケットの設立、技術を活用した業務の効率化・自動化によるコスト削減効果等が期待でき、市場の発展・拡大が期待されております。STOは諸外国においても急速に検討が進んでいる領域であることから、将来的にはグローバルなマーケットが形成され流動性の向上も期待できます。市場の発展に向け、金融商品取引法以外の環境整備が求められます。
システムの特徴と安全性
ブロックチェーンあれこれ
セキュリティ・トークンはデジタルデータとして発行・管理されることから取扱うシステム基盤が重要となります。セキュリティ・トークンは有価証券という性質を考慮し、コンソーシアム・プライベートと呼ばれる類型のブロックチェーン基盤を用いられることが多いとされております。
パブリックブロックチェーンとはビットコインに代表されるような誰でもアクセス可能なネットワークを指します。コンソーシアム・プライベートチェーンは限定された特定の関係者のアクセスのみを許容するネットワークとなります。金融取引で利用されるシステムにおいて、取引に関係のないユーザーにデータを公開する利用が存在しないことからコンソーシアム・プライベート型が利用される傾向にあります。
この場合、ビットコインはPoW(プルーフ・オブ・ワーク)と呼ばれる仕組みでマイナーが競いあうことで膨大なハッシュパワーを必要とする結果、改竄耐性を高めデータの信頼性を担保していますが、一方で、関係者が限定されているコンソーシアム・パブリックモデルでは競争原理が働かないので問題が生じないか?という疑問を持たれるかもしれません。しかし、ビットコインは必ずしも信頼できるとは限らない第三者を前提としたネットワークであり、金融取引で利用するコンソーシアム・プライベートチェーンは参加者が相互に確認でき信頼できる前提が確保されていることから問題は解消されます。関係者間での合意形成方法(コンセンサス・アルゴリズム)はPoWだけではなく、それぞれの用途に合った手法が存在しており使い分けされます。下図の通り、例えば金融向けのブロックチェーンではCorda、ibet for Fin、Progmatなどが存在し、それぞれ用途によって最適な技術・プラットフォームを利用する形になります。
ブロックチェーンの類型と特徴
比較観点 |
パブリック |
コンソーシアム |
プライベート |
---|---|---|---|
参加者 |
制限なし |
複数の信頼ある組織 |
特定の一つの組織 |
管理者 |
なし |
複数 |
単独 |
透明性 |
高い 低い |
||
処理速度 |
低い 高い |
||
単一障害点(SPOF) |
無 |
設計次第 |
|
強制移転 |
不可 |
可 |
|
利用代表例 |
Bitcoin Ethereum |
Corda・ibet for Fin・Progmat |
STOの自主規制
金融商品はそれぞれ自主規制団体が定められております。株や債券のような一項有価証券の場合は日本証券業協会が、ファンドのような二項有価証券の場合は第二種金融商品取引業協会がそれぞれ自主規制を担当しております。
STOの自主規制は2019年10月に法人設立し、2020年4月末に金融庁から認定を受けた、一般社団法人日本STO協会が担います。STOはこれから始まるビジネスとなりますが、業界関係者からは高い関心が寄せられており、今後はより多くの金融機関の参加が見込まれ、各種取引のルールに関しても実態に即した形で整備され、より良い市場の構築が期待されます。
販売中のセキュリティ・トークンをチェック!
セキュリティ・トークンに関する一般的なご注意事項
- 価格変動リスクが存在し元本保証はございません。
- 活発な流通市場は確立されておらず、流動性が劣る場合がございます。
- 取引手数料はセキュリティ・トークンの種類によって異なります。
- 証券保管振替機構(ほふり)で発行・管理されておらず、決済等の方法がそれぞれ異なる場合がございます。
- ブロックチェーン(分散型台帳)技術を利用し電子情報処理組織を用いて権利の記録・移転がなされるため、不正アクセス等により当該記録が改ざんされ、もしくは消滅する可能性があり、ブロックチェーン技術の不確実性に対するリスクがあります。
- 一部の商品において譲渡制限が設けられる場合がございます。
- 税務上の取扱は当局の判断により変更される場合がございます。
- ※本ページはSTOに関する制度概要や商品性一般のご案内・情報提供のみを目的としており、個別の金融商品の勧誘や売買の推奨を行うものではありません。商品性やリスクはそれぞれのSTO毎に特有のものがありますので、個別の商品案内ページにてご確認ください。
商号等:株式会社SBI証券 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第44号、商品先物取引業者
加入協会/日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 日本STO協会、日本商品先物取引協会