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金は世界的な景気後退懸念が支援要因
2019/8/19
提供:ミンカブ・ジ・インフォノイド
金は米中の電話協議の行方も焦点
8月12日の週のニューヨーク金市場は、香港国際空港の一時閉鎖やアルゼンチン・イタリアの政局不安でリスク回避の動きが支援要因になった。中心限月の期近12月限は一代高値1,546.1ドルを付けた。米国が一部の中国製品に対する追加関税発動の延期を発表すると、利食い売りが出たが、英米の長短金利逆転で景気後退に対する懸念が高まったことや中国が米国に対する報復措置を警告したことを受けて押し目は買われた。一方、中国の内需刺激策やドイツが景気後退時に財政均衡ルールを撤廃する用意とし、景気後退に対する懸念が後退すると、上げ一服となった。
英米の国債市場で14日、2年債と10年債の利回りが逆転し、景気後退に対する懸念が強まった。また15日の米国債市場で景気の先行き懸念から30年債利回りが1.916%と過去最低を更新し、10年債利回りは1.495%まで低下し、2016年8月以来の低水準となった。米中の貿易戦争に対する懸念が残るなか、中国の経済指標が事前予想を下回ったことに加え、ドイツの国内総生産(GDP)のマイナス成長で世界経済の先行き懸念が強い。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は23日、カンザスシティー連銀主催の年次シンポジウムで講演する予定となった。講演の題目は「金融政策の課題」。世界的な景気の先行き懸念から、9月の追加利下げの可能性が示されるとみられている。CMEのフェドウォッチによると、16日の米短期金利先物市場で12月のフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準の確率は1.25〜1.50%が44.6%(前週36.1%)、1.50〜1.75%が39.5%(同45.7%)、1.75〜2.00%が8.0%(同13.1%)となった。現在の2.00〜2.25%から年末までに2〜3回の利下げが見込まれており、追加利下げ観測が強まると、金の支援要因になる可能性がある。
米経済指標では底堅さが示されたが、一部指標が悪化し、先行き懸念が残る。7月の米小売売上高は前月比0.7%増と事前予想の0.3%増を上回ったが、米鉱工業生産指数は0.2%低下し、事前予想の0.1%上昇から予想外に低下した。製造業部門の減速が背景にある。また8月の米ミシガン大消費者信頼感指数速報値は92.1となり、前月の98.4から低下し、7カ月ぶりの低水準となった。事前予想の97.0も下回った。米連邦準備理事会(FRB)が10年ぶりに利下げを決定したことを受け、消費者がリセッション(景気後退)の可能性に対する見方を強めたことが指摘された。
トランプ米大統領は株価が急落した14日、米大手銀3社トップと電話会議したことが伝えられた。各社幹部は、米中の貿易問題が解決されれば米経済の追い風になると説明した。米大統領は対中追加関税の発動を発表し、中国に対する圧力を強めたが、15日には中国の習国家主席と近く電話協議を行う予定と述べ、協議を進める意向を示した。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は18日、向こう1週間から10日のうちに電話協議が予定されており、協議が進めば米国に招いて閣僚協議を行うことを計画していると述べた。また景気後退は全く見込んでおらず、景気押し上げのために追加措置を講じる計画はないとした。一方、米通商代表部(USTR)がノートパソコンや携帯電話など一部の中国製品への追加関税発動を12月15日まで延期すると発表したが、中国は15日、米国に対する報復措置を警告しており、当面は電話協議がまとまるかどうかが焦点である。第4弾の対中追加関税の対象品には日用品が多く、米経済への影響を緩和させるための措置とみられている。
8月16日のニューヨークの金ETF(上場投信)の現物保有高は前週末比3.55トン増の843.41トンとなった。米中の貿易戦争や景気後退に対する懸念、米連邦準備理事会(FRB)の追加利下げ観測を受けて投資資金が流入した。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月13日時点のニューヨーク金の大口投機家の買い越しは29万0,090枚となり、前週の29万2,545枚から縮小した。今回は手じまい売りが4,335枚、買い戻しが1,880枚入り、2,455枚買い越し幅を縮小した。
プラチナは景気後退懸念が圧迫も中独の政策で下げ一服に
ニューヨーク・プラチナ期近10月限は、英米の長短金利逆転による景気後退懸念の高まりを受けて軟調となり、7月15日以来の安値835.2ドルを付けた。ただ中国の内需刺激策やドイツが景気後退時に財政均衡ルールを撤廃する用意とし、景気後退に対する懸念が後退すると、下げ一服となった。また米通商代表部(USTR)が一部の中国製品への追加関税発動を延期すると発表した。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長が通商協議の日程の見通しを発表しており、協議が進むようなら下支え要因になるとみられる。
プラチナETF(上場投信)の現物保有高は、9日のロンドンで12.05トン、16日のニューヨークで22.75トン(同22.75トン)、南アで32.18トン(同32.60トン)となった。一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、8月13日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万1,676枚(前週2万1,944枚)に縮小した。新規売りが新規買いを上回った。
ニューヨーク金は高値更新後に乱高下も押し目は買われる
ニューヨーク金12月限はリスク回避の動きを受けて一代高値1,546.1ドルを付けたのち、乱高下する場面も見られたが、押し目は買われて堅調となった。RSIが買われ過ぎの水準に入っており、利食い売り主導の調整局面が警戒される。ただ英米の長短金利逆転で景気後退に対する懸念が高まったことや、中国が米国に対する報復措置を警告したことが金の下支え要因である。一方、中国が内需刺激策を発表しており、各国の景気対策次第では利食い売りが出る可能性がある。今週は23日にパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演が予定されており、金融政策の見通しも焦点である。
8月19日からの週の注目ポイント
19日 | 貿易収支(7月速報) | ☆☆ |
ユーロ圏国際収支(6月) | ☆ | |
ユーロ圏消費者物価指数(7月確報) | ☆☆☆ | |
20日 | 独生産者物価指数(7月) | ☆ |
21日 | 米中古住宅販売統計(7月) | ☆☆ |
米FOMC議事録公表 | ☆☆☆ | |
22日 | ユーロ圏製造業購買担当者景況指数(8月速報) | ☆☆ |
ユーロ圏サービス業購買担当者景況指数(8月速報) | ☆☆ | |
米新規失業保険申請件数 | ☆☆ | |
23日 | 消費者物価指数(7月) | ☆☆☆ |
米新築住宅販売(7月) | ☆☆☆ | |
米FRB議長講演 | ☆☆☆ |
※重要度を3段階で表示
金(現物1oz.あたり)日足 6ヵ月
<参照>SBI証券>マーケットデータより
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