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2021-10-26 18:11:13

大豆は下落も残る構造的な上昇リスク

2021/9/8
提供:株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA)

日本がそのほとんどを輸入に頼っている大豆の価格は、シカゴで取引されている「シカゴ定期」が基準であり、そこに集荷代や米国内の輸送料、船賃などのコストが上乗せされて日本の輸入価格となる。しかしあくまで発射台となるのはシカゴ定期の価格である。この数年の大豆価格の推移をグラフで見てみると、この1年の大豆価格は「20年で3回目」の大幅な上昇だった。1回目はリーマンショック前、2回目は2012年、3回目が2021年だ。

出所:CBOT

この3回の大相場、各々価格上昇の要因は異なるが、2008年の価格上昇は米ブッシュ大統領がエネルギー法案を可決し、環境汚染が指摘されていたMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル。ガソリンの添加材に用いられていた)からエタノールへのシフトが加速、さらには植物由来の燃料(再生可能エネルギー)を自動車向けの燃料として増やす方針を決定したことによる「投資ブーム」が起きたことが要因だ。しかしその後、価格高騰と共に「人が食に用いるものを燃料に使って良いのか」「投資の対象にしていいのか」といった反対意見が強まり、結局投資に規制がかかり、リーマンショックの発生と相まって大幅な下落となった。その後、2010年の中頃からラニーニャ現象が発生し記録的な不作となったことが影響して再び価格は高騰、食品価格の上昇が貧困層の生活を直撃し、この時期に「アラブの春」が発生している。その意味でアラブの春は「民主化の動き」ではない。

今回の大豆価格上昇は2020年頃から始まっている。このコラムでも少し触れているが、これは最大消費国である中国で2018年頃に発生した「豚熱(豚コレラ)」の影響で豚が大量に殺処分され、豚の飼料である大豆ミール向けの需要が減少したことで中国の大豆輸入が減少した。しかし、大豆輸入の減少が中国国内の大豆油需給を逼迫させたため深刻な食用油供給不足をもたらしたこと、さらに豚熱の影響から中国が立ち直ったことで養豚数が増加、飼料向けの大豆ミール需要が増加したことで、急遽、中国が大豆輸入を増加させたため価格が急騰した。これに加えて多くの穀物の不作を引き起こしやすいラニーニャ現象が発生、供給が実際に減少したことも価格を押し上げた。しかし2021年5月13日に米海洋大気庁がラニーニャ現象の収束を宣言したことで急落している。

2000年以降、市場参加者はエルニーニョ・ラニーニャ現象の発生を穀物供給の「先読み指標」としており、良くも悪くも投機資金の動きが穀物価格動向に影響を与えやすくなっている。もし、これまで通りであるならば、大豆価格はさらに下落し、次のラニーニャ現象発生まで価格が上昇しないことになる。実際、直近の米農務省の需給報告では2021-2022年の世界大豆生産は前年比+2,038万トン増加の3億8,363万トンと過去最高となる見込みで、輸入、期初在庫も合わせた供給は6億4,706トンとなる見込みだ。需要も前年比+1,989万トンの5億5,092万トンと増加の見込みであるが、需給バランスは505万トンの供給過剰が予想されており、需給バランスのみで議論すれば価格はさらに下落しておかしくない。シカゴ大豆価格に対する説明力が高い米国の需要と供給を元に計算すると2021年のシカゴ大豆平均価格は12ドル程度が予想される。

しかし、今回の下落はラニーニャ現象の収束が主因であり、再びラニーニャ現象が発生すればこの限りではないし、現在世界的な流れとなっている「脱炭素」の動きが大豆をはじめとする油脂類の需要を構造的に押し上げる可能性があるため、むしろ下落したとしてもその後の価格上昇を警戒する必要がある。米国ではバイオディーゼルの原料としては大豆油のシェアが圧倒的に高く、仮にバイオディーゼルを含む再生可能エネルギー燃料の消費が増えるなら大豆需要は増加することが予想される。また、発電燃料としてパーム油が使われているが、パーム油価格が上昇すれば代替品として大豆油が選好されることになるため、脱炭素の進捗は構造的に油脂類の需要を増加させ、価格の上昇要因となる。

出所:米エネルギー省

こんな中、日本の主要食用油メーカーは、2021年11月から食用油価格を値上げすることを決定した。値上げは2021年に入ってから4回目である。食用油の原料である大豆や菜種などの価格が高い水準で推移していることや、海外から輸入する際にかかる船賃の上昇が背景にある。

しかし上述の通り、既にシカゴ大豆価格は下落している。市場価格が下落しているにも関わらず価格が引き上げられるのは、輸入に関する2ヵ月程度の時間差(主要輸入相手国である米国からの陸上・海上輸送の時間の影響で2ヵ月程度の時間差が発生)があること、最終消費の回復が緩慢な中で最終販売価格への転嫁が非常に困難なことが要因だ。この時間差を考慮すると恐らく2ヵ月程度の時間をもって輸入価格も下落に転じ、国内向けの価格も引き下げられることになると予想される。多くの場合、価格高騰後に価格が下落すると「これで一安心」となりがちだ。しかし恐らくこの下落は仮初めの下落で、その後再び構造的に価格が再度上昇する可能性はむしろ低くないはずだ。今のうちに「下落への備え」と「その後の価格上昇への備え」をしておく必要がある。より具体的には、消費者側は価格が下落した際にどのような行動が取れるかを既に考えておくべきで、それほどのんびりしている時間があるわけでは無いということである。

株式会社マーケット・リスク・アドバイザリー(MRA) 新村 直弘
1994年東京大学工学部精密機械工学科卒。日本興業銀行入行、本店金融市場営業部でコモディティ・デリバティブ開発を担当。国内製造業、金融機関をはじめ幅広い業種に対する価格リスクマネジメントの提案業務に従事。
バークレイズ・キャピタル証券、ドイツ証券を経て2010年5月、企業向け価格リスク制御のアドバイスを専業とする株式会社マーケット・リスク・アドバイザリーを設立、代表取締役に就任。テレビ東京やNHK、日経CNBC等でコメンテーターを務める。
また日経新聞、週刊ダイヤモンド、東洋経済、エコノミスト等のメディアにも多数寄稿。
日本アナリスト協会検定会員、資源エネルギー学会会員
著書:
『調達・購買・財務担当者のための原材料の市場分析入門』(ダイヤモンド社)
『コモディティ・デリバティブのすべて』(きんざい)
『天候デリバティブのすべて―金融工学の応用と実践』(東京電機大学出版)

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