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アナリストの視点〜(3)ソフトバンクGや日立金で再考、「減損」って悪材料?

2019/11/28
投資情報部 長谷川 稔

当レポートは、一般投資家の皆さんにも、アナリストの分析手法の基本知識や考え方、さらにはノウハウを身につけていただく一助になればとの思いで執筆しています。毎回一つのテーマに関して、分析手法やその裏側に隠れている大事な意味などについて解説したいと思います。

第3回のテーマは、「減損」です。11月半ばで終了した9月期決算発表では、かなり巨額の減損損失を計上する企業が相次ぎました。2020年3月期決算でも同様のニュースが聞かれるものと思います。減損自体は損失なので、基本的には株価材料としてはマイナスです。ただし、減損発表に対する市場の反応(株価の反応)は、企業によってまちまちです。

今回は、まず減損とはいったい何なのだろうという基本的な考え方と、それに対する株価の反応を実例をもとに解説をしていきたいと思います。皆さまの投資のご参考になれば幸いです。

1減損は資産の再評価!!

企業は将来の収益を獲得するためや、あるいは事業基盤を拡大するために、設備投資やM&Aを行います。ところが時間の経過とともに、生産する製品が思ったように売れなくなり、利益を得るどころか赤字を計上したりする場合も出てきます。また、有望だと思って買収や新規投資した会社が、うまくいかなくなってしまう事態も発生します。

俗に言う投資に失敗するケースです。このような場合、投資した機械装置や土地などの固定資産、M&Aで企業買収した場合の投資有価証券(バランスシート上は投資その他の資産に計上)や、M&Aに伴うのれん代(無形固定資産に計上)をそのままの評価額で計上し続けておくことは、企業会計の保守性・安全性の観点から良くありません。なぜならば、その企業は不良資産を抱えているとみなされるからです。

このため、上場企業や商法上の大企業に関しては、2006年以降、減損会計の導入が義務づけられています。これは、企業の固定資産、無形固定資産、投資その他の資産について、一定の要件を満たす場合、資産価値を再評価して、評価を引き下げる処理です。評価を引き下げた分は、通常は特別損失(日本式会計基準の場合)として損益計算書に反映されます。

それでは、下記に簡単な例をあげて説明してみます。

(1)半導体メーカーE社が新素材を使った半導体製造ラインを10億円(減価償却は年間2億円で5年で償却するものと仮定)で新設

〜ところが2年間操業してみたが、その新素材に代わる素材が出現し、E社の製品は全く売れなくなった〜
E社はこのラインは今後も役に立たないと予想して廃棄処分を決定。
機械の簿価は10億円−(減価償却2年間×2億円)=6億円
したがって、E社は減損損失6億円を特別損失として計上することにした。

(2)投資ファンド会社S社が、米国のIT企業(未上場)が有望と考え、将来の上場を狙って10億円を出資した

〜ところがそのIT企業は、強力なライバル会社の出現により2年連続で赤字に陥って、先行きのメドも立たない〜
S社はIT企業再建は不可能と判断し、出資した株式10億円全額を特別損失として計上することにした。

実際には、減損の基準は複雑なケース(例えば@のケースで製造ラインが他の用途に一部転用できるなど)が多々あるうえ、税法との関係もあるため、上記のように簡単にはいかない場合があります。また、IFRS(国際会計基準)採用の企業の場合は減損損失は営業外費用への計上となります。

それでは、減損のデメリットとメリットをまとめてみます。

デメリット

・一度に多額の損失が発生するため、減損を実施した期の収益が大きく圧迫される、また減配の可能性も出てくる。
・赤字となった場合、自己資本の毀損などで企業の安全性に懸念が出てくる。
・投資に関する経営判断が間違っていたと対外的に受け取られるため、経営者は株主から批判される可能性がある。

メリット

・不良資産を抱えないで処理するため、将来の追加的損失を未然に阻止でき、減損後の企業の収益性が高まる可能性が大きい。
・資産の効率性が高まり、減損後にROA、ROEなどの指標は向上しやすくなる。
・減損による損失は通常現金の支出を伴わない。
・減損実施後は固定資産の評価額が下がり、減価償却額が減少しその後の増益要因となる。
・減損による損失の分だけ利益は圧縮されるが、逆に税金は節約できることが多い。

2実際に減損を発表した場合の株価の反応は!?

投資家サイドから見た、企業の減損処理への反応を考えてみます。自分が投資している企業が巨額の減損処理を実施するとのニュースを聞いたら、通常はショックを受けます。減損は株価にとって、基本的には悪材料だからです。しかし、だからといって持ち株を直ちに売却してしまうのは早計です。この章では企業が巨額の減損実施を発表した時の実際の株価の反応を検証してみることにします。最近の9月期決算での減損計上の具体的事例を見てみましょう。

日立金属(5486);10/29(火)の決算発表で、同社の中核事業の1つである磁性材料事業において425億円の減損損失計上と業績の下方修正および減配(34円/株から26円へ)を発表しました。ただし、株価は翌日の寄り付きこそ下落しましたが、その後は逆に反発し前日比プラスで引けました。その後も株価は上昇トレンドを描いています。主力事業での減損計上はやや意外で、減損の金額も大きかったのですが、自己資本が5,755億円と潤沢で会社の存続にはまず問題がないと判断されました。また、減損計上を契機に、収益性が低下していた磁性材料分野での今後の抜本的なリストラ策実行にも期待が持てる展開となったこと、減価償却負担減で来期の増益確度が高まったことなどが株価を下支えし、上昇の原動力となったと推測されます。

ソフトバンクグループ(9984);11/6(水)の決算発表で同社の投資ファンドにおける株式評価損5,379億円の計上等で2Q決算の営業利益赤字転落を発表しました。翌日の株価は若干下落しましたが、その後はほぼ弱保ち合い状態となっています。赤字額は大きくメディアにも取り上げられましたが、同社の自己資本は8兆円以上あり、現在のところ企業の存続には問題がないと判断されたようです。また米国のWeWork社への出資失敗で巨額の評価損が出ることは市場の想定の範囲内であり、株価は決算発表前から既に下落していました。したがって減損損失はほぼ織り込み済みだったと解釈できます。しかしその後の株価が冴えないのは、さらなるWeWork社への追加投資(キャッシュアウト)やその他の投資案件に対する不安が完全には払拭できていないためと考えられます。

MTG(7806);11/19(火)に2019年9月期決算(発表遅延で現在も未公表)での同社の美容器具関連の固定資産の減損損失87億円、および棚卸資産評価損46億円、関係会社株式評価損40億円、などの計上により業績の下方修正を行っています。当期純利益は当初予定の85億円の赤字から267億円の赤字に訂正されました。株価は11/15(金)の時点で決算発表の期日延期を会社側が発表していることから、すでに下げていましたが、下方修正により株価は一段と下落しました。同社の自己資本は6月時点で483億円ですが、赤字計上によりこれが半減以下となりそうです。このため株価はPBRで0.6倍程度まで売られたものと推定されます。決算が現時点でも公表されていない点も懸念材料といえそうです。

これらの例に見るように、減損を発表した企業の株価がすべて下落するとは限りません。逆に買いの好機という場合もあるのではないでしょうか。減損発表企業への投資家の対処法は、@減損の内容および金額と自己資本の規模を吟味する、A今回の減損が株価に織り込まれていたかどうかをチェック、Bその企業の今後の業績や戦略の変化について考える、以上の3点が主なポイントということになります。

表1 最近、巨額の減損を公表した企業の株価

日足;日立金属(5486)

日足;MTG(7806)

  • ※当社WEBサイトのチャートツールを用いてSBI証券が作成。青い矢印が減損発表の日。

アナリスト今昔物語;女性アナリストの活躍

この欄では筆者がアナリストとして活動してきたうえで、業界の昔話や裏話、面白かった経験などを綴ってみることにしました。

今回は女性アナリストに関してです。現在では女性アナリストは特に珍しくありません。セクターによっては、かなり女性の比率が高いケースもあります。特にヘルスケア、消費財や小売り業界などの担当で目立つような気がします。アナリスト以外でもストラテジストやクオンツアナリスト、債券のクレジットアナリスト、ファンドマネージャーなどあらゆる分野で女性が活躍しています。

女性アナリストの登場は、同時に女性の総合職採用が始まった時期、すなわち1980後半のバブル時代から本格的にスタートしたように思います。それ以前は四年制大学卒業の女性を総合職として採用する企業は限定的で、しかも一般職採用には短大卒の方が有利だった時代です。

筆者の記憶によれば女性アナリストが初めて登場したのは80年代半ば、当時の新日本証券(現みずほ証券)に在籍していたMさん(面識はありません)だったように記憶しています。当時としては女性の金融系会社での専門職勤務が珍しかったので、マスコミ等にも大きく報道され紹介されました。ほとんど同時期に、筆者が一緒に仕事をした仲間ですが、大和証券のNさんも有名でした。Nさんはその後米国系大手のファンドマネージャーに転身しています。Nさんは当時女性は一般職の採用しかなかったため、会社にいる時は制服着用で勤務し、取材の時にはいちいち着替えるという面倒なことを余儀なくされていました。

今でも活躍されている著名人には、ゴールドマン・サックス証券(日本)の副会長でストラテジストのキャシー松井さんがいます。彼女とは英系の証券会社で一緒に働いたことがあります。完璧なバイリンガルで、仕事面での能力の高さはもちろんですが、人間的にもとても素晴らしい方です。

90年代以降になると、前回お話ししたように外資系証券の進出とともに、女性を含む外国人アナリストが大挙して日本で取材活動を始めました。日本人にありがちですが、つい外国人から聞かれると日本人には言わない情報でも、つい答えてしまうということがあったように記憶しています。ただし、外国人アナリストの数は、最近めっきり減ってしまいました。日本人アナリストのレベルが上がったのと、残念ですが日本株が昔ほどメジャーでなくなってきたことが背景と思われます。

  • ※本ページでご紹介する個別銘柄及び各情報は、投資の勧誘や個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
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