10/3(木)の東京株式市場では、日経平均株価が大きく下げています。前日の米国市場で株価が大きく下げたことが原因です。米国株が下げた理由は、この日に発表されたADP雇用統計が市場予想を下回ったためと説明されています。
仮に市場の説明通りであれば、米国・日本ともに、株価は過剰反応となっている可能性が大きいと思われます。下の表1は、毎月発表されるADP雇用統計と労働省版雇用統計について、両者の雇用者数増減を調べたものです。ADP雇用統計が示す労働市場の強弱感が労働省版雇用統計のものと、必ずしも一致する訳ではないことが示されています。例えば、8月分のADP雇用統計は雇用者数でみる限り強い内容でしたが、労働省の数字は弱い結果となりました。9月のADP雇用統計では前月分が下方修正されていますが、ある意味、労働省版が示す方向感にさや寄せされたと言えるかもしれません。
このように、そもそもADP雇用統計や労働省版雇用統計は正確さに難のある統計であり、過信は禁物と言えそうです。
趨勢として米国の雇用者数がピークアウトしつつある可能性は否めませんが、完全雇用状態の下にある米国では、さほど不思議ではない状態であると言えます。米国市場はこれらの状態を織り込みつつ推移しており、過度に驚く必要はなさそうです。米中通商摩擦を背景に、製造業を取り巻く数字に厳しいものが目立ちやすくなっている点も、さほど驚きではありません。
米国経済については、10/3(木)発表のISM非製造業景況指数(9月)や、10/4(金)の労働省版雇用統計等の重要指標を確認してから趨勢を判断すべきでしょう。これらの指標によっては株価が下げ止まる可能性もありそうです。
表1 米ADP雇用統計と米労働省版雇用統計における雇用者数(前月比増減)の推移(単位・千人)
調査対象月 | 雇用統計 | 事前予想 (A) |
当月 (B) |
前月 (C) |
前月修正 (D) |
上振れ合計 | 一致・不一致 |
2018年12月 | ADP | 180 | 271 | 179 | 136 | 48 | ○ |
労働省 | 184 | 312 | 155 | 196 | 169 | ||
2019年1月 | ADP | 181 | 213 | 271 | 249 | 10 | ○ |
労働省 | 165 | 304 | 312 | 227 | 54 | ||
2019年2月 | ADP | 190 | 183 | 213 | 264 | 44 | ● |
労働省 | 180 | 20 | 304 | 312 | -152 | ||
2019年3月 | ADP | 175 | 129 | 183 | 220 | -9 | ● |
労働省 | 177 | 196 | 20 | 56 | 55 | ||
2019年4月 | ADP | 180 | 275 | 129 | 158 | 124 | ○ |
労働省 | 190 | 263 | 196 | 153 | 30 | ||
2019年5月 | ADP | 185 | 27 | 275 | 255 | -178 | ○ |
労働省 | 175 | 75 | 263 | 216 | -147 | ||
2019年6月 | ADP | 140 | 102 | 27 | 46 | -19 | ● |
労働省 | 160 | 224 | 75 | 62 | 51 | ||
2019年7月 | ADP | 150 | 156 | 102 | 107 | 11 | ● |
労働省 | 165 | 164 | 224 | 178 | -47 | ||
2019年8月 | ADP | 148 | 195 | 156 | 143 | 34 | ● |
労働省 | 160 | 130 | 164 | 159 | -35 | ||
2019年9月 | ADP | 140 | 135 | 195 | 157 | -43 | |
労働省 | 148 | ? | 130 | ? | ? |
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※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。「上振れ合計」は(B)−(A)+(D)-(C)で計算された数値。
上振れ数値がADP、労働省ともにプラスまたはマイナスならば〇、両者が異なるならば●とした。
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