足元の日経平均株価は年初来高値を更新する展開となっている。3月から4月にかけては、3月高値21,860円を前に上値の重い動きが続いていたものの、4月8日にザラ場高値21,900円をつけ、その後12日の日経平均は終値ベースで年初来高値を更新した。その後も上昇トレンドが続く格好となっている。
直近の米中貿易協議について、トランプ大統領が中国の劉鶴副首相と会談したことで、通商問題を巡る両国合意への期待感がマーケットで増し始めるなか、中国の製造業購買担当者指数(PMI)の改善なども受け、中国景気減速懸念のボトムアウトを指摘する向きが増加したことも投資家心理の改善に繋がった。
また、英国の欧州連合(EU)離脱を巡っては、英国を除くEU27カ国の首脳らが10月末までの英国の離脱延期で合意したとの報道も伝わっており、いったんは日本の10連休中の波乱要因が一つ減った格好となった。加えて12日から、今8月期第2四半期の決算内容が好感されたファーストリテイリング<9983>、米証券取引委員会(SEC)に新規株式公開(IPO)を正式に申請した米ライドシェア最大手のウーバーテクノロジーズの筆頭株主であるソフトバンクグループ<9984>がともに上昇トレンドを継続している点も、センチメント好転に寄与している。
15日の週に入っても、年初から過去最高値更新を続ける米半導体SOX指数を受け、東京市場におけるハイテク株への買い戻しの動きが継続したことから、日経平均は節目の22,000円を昨年11月以来約5ヶ月ぶりに終値ベースでも回復。需給面でも、東証と大阪取引所の集計による投資部門別売買状況において、海外投資家が4月第1週(1-5日)に日本株(現物)を10週ぶりに6,228億円買い越した(前週は745億円の売り越し)ことが話題となった。これにより、アノマリーとされる外国人投資家による4月の資金流入の動きも意識されているようだ。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
前述の通り、米中貿易協議について、トランプ大統領が中国の劉鶴副首相と会談したことで、通商問題を巡る両国合意への期待感が優勢となって来ている。ムニューシン米財務長官は4月15日に「米中は貿易交渉の最終段階に近づいた」との見方を示した。
状況については楽観視できないものの、技術移転の強要禁止などの合意事項を確実に履行する手段で双方が合意する可能性はあるため、4月中の交渉決着を意識した日本株のリスクオンムードが次第に広がる格好となっている。市場は解決の方向性で織り込んできており、投資家の関心は米欧や日米間の通商協議の動向へと徐々に移って来ている。
こういった状況下だが、12日に発表された9日時点の米商品先物取引委員会(CFTC)における投機筋のドル円ポジションは、差し引きで71,000枚超の円売り越しとなっており、これまで8週連続でショートポジションが積み上がる格好となっている。米中貿易協議の進展に対するネガティブなニュースフローが出た場合は、投機筋による円のショートポジションの急速な買い戻しによる円高が進行するといった潜在的なリスクもあり、1ドル=110円を割り込んだ際に日経平均が21,000円台前半までの下落に繋がる可能性がある点は頭に入れておきたい。
図2 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
4月中旬までに2月期決算企業の決算発表がおおむね一巡した。中心となる小売り、外食企業の決算は総じて厳しい内容となった。決算発表後の株価の軟調ぶりが目立つのがコンビニエンスストア大手で、ローソン<2651>が発表直後に急落し、セブン&アイ・ホールディングス<3382>は2014年以来の安値を付けている。人手不足などを背景に「積極出店」「24時間営業」といったコンビニのビジネスモデルが揺らぎ、次の成長シナリオが示されるまで買いは手控えられやすい。百貨店もJ.フロント リテイリング<3086>など一部を除き、株価の反応はさえない。訪日外国人(インバウンド)需要は足元堅調だが、中国当局による規制の影響への懸念が根強いようだ。外食企業では食材費や人件費の高騰が響いている。今年10月に控える消費増税も懸念材料となっており、内需株の苦戦は続きそうだ。
一方、外需系企業の決算の先駆けとして注目された安川電機<6506>は発表後、悪材料出尽くしを意識した値動きとなっている。決算内容そのものに対しては厳しい見方が多い。ただ市場は足元の苦戦を相当程度織り込み済みであり、中国の景況感改善が株価を後押ししている。今後の主力輸出株の決算発表に臨むに当たり、参考となるだろう。
4月下旬からは3月期決算企業の決算発表が本格化する。市場では国内主要企業の経常利益について、18年度は5-6%程度の増益での着地を見込んでおり、19年度は2-8%程度の増益を予想している。19年度上半期に底打ちし、下半期には回復基調となることが期待されている。しかし、業績予想値の下方修正局面が続いているため、市場は楽観ムード一色とはなっていない。目先は足元の減速感への懸念と底打ち期待が交錯する。株価バリュエーションが一段と上向くには、下半期以降の業績回復に市場が自信を深める必要があるだろう。
提供:フィスコ社