足元の日経平均株価は上値が重いが、昨年末12月26日につけた19,530.35円をボトムとした戻り基調は続いている。3月にかけては約3ヶ月ぶりとなる節目の22,000円を試す場面があったものの、3月4日のザラ場高値21,860.39円をピークとしていったんは上昇一服の状況だ。3月中旬に開催観測がある米中会談で両首脳が貿易協定案の署名も可能との見解を米政府高官が明らかにしたことを背景に、為替相場にて約2ヶ月ぶりに1ドル=112円台まで円安が進行する場面があったことなどは好感された。
しかし、米中の貿易交渉や英国によるEU(欧州連合)離脱問題などニュースフローに一喜一憂する相場に大きな変化は無い。また、東京市場では東証1部の売買高は2月22日には10億株を割り込むなど、商いの盛り上がりには欠ける展開となっており、直近の日本株の戻りは海外投資家を中心とした先物の買い戻し(ショートカバー)の動きが主な要因とみられている。
また、3月6日には経済協力開発機構(OECD)が2019年と20年における世界経済の成長率見通しをそれぞれ3.3%、3.4%とし、昨年11月に続き再び下方修正した。世界的な景気減速懸念は根強いと見られるなかで、これまで拡大基調にあった日本企業の業績に対する先高感への見方も市場では二分してきており、現状の日本株は現物を中心とした海外勢による腰の入った買いに伴う商いの盛り上がりが確認できない場合は、本格的に上値を追う動きは見込みにくい状況となっている。
特に日経平均株価の21,500円〜22,500円には累積売買代金が積み上がっている戻り売りゾーンがあり、すぐに突破するのは難しいと考えている。さらに昨年10月2日の高値24,448円に挑戦するにはかなりのエネルギーを要する。
ただ、今後だが4月の新年度入りとともに株式投資の季節の到来を予想。政治的な事情(4月の統一地方選挙、7月の参院選挙、10月の消費税率の引き上げ)に加え、5月1日の新天皇の即位(国民的な慶事)があって、大きく買われる場面がある、と予想している。そうしたタイミングが到来したときには逃さずしっかりと利益を確保したい。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
英国政府は欧州連合(EU)からの離脱合意案の修正(法的に拘束力のある手段)を辛うじて確保したが、3月12日に英国議会で行なわれた修正離脱合意案の採決で、合意案は反対多数で否決された。今後については以下のシナリオ(スケジュール)が予想される。
ケース1:合意なき離脱を回避し、離脱期限の延期を確保する
英下院で13日に合意なき離脱の是非を問う採決が行なわれる予定となっている。大半の関係者は、合意なき離脱の否決を予想しており、離脱期限の延期をEUに求めるかどうか、下院は14日か週内に採決するとみられる。ただし、通商分野における協定は含まれていない。
ケース2:合意なき離脱回避も離脱期限延期の協議難航
合意なき離脱が否決された場合、離脱期限の延期をEUに求めるかどうかについて議会で採決するが、ユンケル欧州委員長は「英国は5月23日までにEUを離脱しなければならない」と伝えている。この期限までに英国側で多くの政治的な調整を行なうことが必要となる。この期限を後に動かすことは極めて困難であることから、メイ首相も「離脱の延期は短期に留まるべき」との見方を伝えている。
ケース3:大方の予想に反して合意なき離脱に向かう
大方の予想に反して、議会の採決で合意なき離脱への賛成票が過半数を占めた場合、英国は3月29日にEUから離脱する。離脱に関する準備などを2週間程度で行なう必要があるため、社会的な混乱も予想される。英国中央銀行は国内経済や市場の混乱に対処するために、政策金利を一時的に0.25%または0.00%まで引き下げる可能性がある。
中長期的なスケジュール
EU離脱の是非を問う国民投票を再び実施することも可能だが、議会採決の必要がある。また、国民投票を再度実施した場合、EU離脱の反対票は増えると予想されており、英国のEU離脱は実現不可能となる可能性もある。イギリスの最大野党・労働党はブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)を阻止するため、2度目の国民投票を行う案を支持する用意があると明らかにしている。
ただし、匿名の英政府高官は今月12日、「メイ首相は辞任を協議していない」、「選挙の準備はしていない」と述べており、13日時点で修正離脱合意案の否決がメイ首相の辞任に直結するとの見方は広がっていない。
今年のゴールデンウィーク(GW)は、4月27日(土)〜5月6日(月)と一般的には10連休になる予定だ。これに伴い先物・オプション(OP)市場も同様に10連休となり、取引は出来なくなる。国内GW期間中において先物を活用したヘッジ取引は、現物が取り扱えないなかでは機能しないほか、先物OPのショートポジションをそのまま保有する場合は、GW期間中に通常取引である米国でFOMC(連邦公開市場委員会)や4月分雇用統計などの重要イベントなどが控えており、リスクは大きいだろう。
そんななか、損失が出た場合はプレミアム分に限定されるOPの買いスタンスでの取引は比較的有効とみられる。国内の連休が10日間もあることを勘案すると時間的価値低下の影響が小さいとされるアウト・オブ・ザ・マネーの(権利行使価格が市場価格を上回る)コール及び(権利行使価格が市場価格を下回る)プットを両建て買いするストラングルの買いを活用する余地はあるだろう。前述したストラングルの買いは、相場が大きく動く場合に利益が得られ、損失はオプション購入額に限定されるといった取引手法であり、東京市場が10連休のなかで海外市場がイベントを受けて上下した際にこのポジションを保有しておくことは有効となる可能性がある。
提供:フィスコ社