東京株式市場
足元の日経平均株価は、7月18日にかけて23,000円までの戻りを見せる展開となったが、23,000円を前に戻り売り圧力に抑えられ、上値の重い動きになっている。中期的なトレンドとしては23,000円を再び突破するシナリオは維持されているものの、5月21日、6月12日と直近で23,000円台を付けた局面と比べると今回の戻り相場はインデックス主導で一部の225型銘柄によって引き上げられたことで、売買高が総じて低水準であり、力強さに欠けていた。
7月30・31日に行われた日銀の金融政策決定会合では、長期金利の誘導目標を「ゼロ%程度」とする方針は維持したほか、上場投資信託(ETF)では、TOPIX型の買い入れ額を増やすことなどを決定。発表後は足元でみられていたNT(日経平均/TOPIX)修正に伴う巻き戻しの動きが強まり、銀行株が失速する一方で指数インパクトの大きい値がさ株の一角が強含む格好となったが、これは短期的な反応に留まった。中長期的には、日銀のETF購入配分見直しを受け、日経平均寄与度の大きい内需・ディフェンシブ系の値がさ株の調整とともに、出遅れていたバリュー株の水準訂正が進みやすい地合いとなっている。また、本格化する企業の4-6月期決算については、7月末時点では総じて堅調な業績が確認されており、一部市場関係者によると、「事前予想である前年同期比4%程度の増益に対して、実績は同10%超の増益」との指摘もみられる。今期の企業業績に対する過度な警戒感は後退しつつあるといえよう。
図1 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図2 直近1年のマザーズ指数チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
米国株式市場
米国市場では、7月27日に発表された4-6月期GDP速報値が良好な内容となり、貿易摩擦への懸念が強まる中でも米経済は堅調であることが示された。一方で、自動車・自動車部品の関税導入を巡る他国との交渉や米中交渉は未だ解決しておらず、引き続き上値を抑える要因として意識されている。ファクトセット社の集計によるとS&P500構成銘柄の53%が決算発表を終了し、83%が利益、77%が売上高のアナリスト予想平均を上回った(7月末時点)。全体では、先月末時点で20%の増益が予想されていたが、21.3%の増益見通しへと改善した。ヘルスケアや一般消費財セクターの成長が要因で、製薬のギリアド・サイエンシズやブリストルマイヤーズ、ネット小売のアマゾンの好決算が寄与した。また、アルファベットやアップルも好調な業績が継続していることが確認され、IT大手の良好な決算もみられた。他方、フェイスブックは情報漏洩問題の影響が業績に反映されたことで成長鈍化への懸念が台頭する格好となった。
8月1日(日本時間)の朝方に米トランプ政権が中国からの輸入品2,000億ドル相当への関税率引き上げを検討していることが伝わるなど、米中貿易摩擦に対する警戒感は依然として日米株式市場にくすぶる。11月の米中間選挙までは駆け引き等は続くとみられ、引き続き一喜一憂する状況が続きそうだが、市場がこういった報道にも底堅さをみせてくることで、ショーカバーを誘う流れには注目しておきたい。
図3 直近1年の日経平均チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4 直近1年のNASDAQチャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日本銀行は7月30−31日開催の金融政策決定会合で、金融緩和を継続するための枠組みを強化することを決定した。強力な金融緩和を粘り強く続けていく観点から、政策金利のフォワードガイダンスを導入することにより、「物価安定の目標」の実現に対するコミットメントを強めるとともに、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の持続性を強化する措置を決定した。
政策金利のフォワードガイダンスについては、「日本銀行は、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの影響を含めた経済・物価の不確実性を踏まえ、当分の間、現在のきわめて低い長短金利の水準を維持することを想定している」との文言が声明文に含まれた。
長期金利の誘導目標を「0%程度」とするこれまでの方針は維持しつつ、「金利は、経済・物価情勢等に応じて上下にある程度変動しうるものとし、国債買入れ額については、保有残高の増加額年間約80兆円をめどとしつつ、弾力的な買入れを実施する」との方針が決まった。
なお、今回の会合では以下の実務的な対応がおこなわれることも決まった。
- 日本銀行当座預金のうち、マイナス金利が適用される政策金利残高(金融機関間で裁定取引が行われたと仮定した金額)を、長短金利操作の実現に支障がない範囲で、現在の10兆円程度から減少させる。8月の積み期間では5兆円程度になる見込み。
- ETF買い入れについては、銘柄別の買入れ額を見直し、TOPIX に連動するETFを対象に、銘柄毎の時価総額に概ね比例するように買入れる額をこれまでの2.7兆円から4.2兆円に増額し、3 指数(TOPIX、日経225、JPX日経400)に連動するETFを対象に、銘柄毎の時価総額に概ね比例するように買入れる額を3兆円から1.5兆円に減額した。これにより日経平均寄与度の大きい内需・ディフェンシブ系の値がさ株の調整とともに、出遅れていたバリュー株の水準訂正が進みやすい地合いとなっている。
金融政策決定会合の結果を受けて円安・株高の相場展開に
7月31日の東京市場でドル・円は反発。110円75銭まで下落後、111円46銭まで上昇した。金融政策決定会合が通常よりも長引いたことから、円買いが一時強まった。その後、日銀のフォワードガイダンス導入など、強力な金融緩和を継続するための枠組み強化決定の発表を受けて、円売りが優勢となった。同日のニューヨーク市場でドル・円は一時111円96銭まで一段高となる場面があった。
日経平均は小幅反発。午前中に200円近く下げる場面があったが、金融政策決定会合の結果発表を控えて下げ渋った。日銀は上場投資信託(ETF)の買い入れ配分を変更するなどの金融政策の修正を発表し、日経平均は一時22,678.06円(前日比133.22円高)まで上昇したが、その後再びマイナスへ転じるなど方向感に乏しい展開となった。大引けの日経平均は前日比8.88円高の22,553.72円。
今回のFOMC会合の結果
米連邦準備制度理事会(FRB)は7月31−8月1日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で金融政策の現状維持を決定した。足元のインフレ率(6月のコアPCE)はFRBの目標水準である2%をやや下回ったが、インフレ鈍化の兆しはみられない。FOMC声明では「労働市場は引き続き力強さを増し、経済活動は力強いペースで拡大していることが示唆された」、「金融政策は依然緩和的」、「一段の緩やかな利上げが必要」との見解が表明されており、年内2回(9月、12月)の追加利上げの可能性を高める内容だった。次回のFOMC会合では、政策金利であるFFレートの誘導目標水準は現行の1.75%−2.00%から2.00%−2.25%に引き上げられる可能性が高い。
1日のニューヨーク市場でドル・円は、112円01銭まで上昇後、111円39銭まで反落し111円72銭で引けた。米中貿易摩擦激化に対する警戒感が再び高まり、ドルは伸び悩んだ。米国株式はまちまちの動き。ダウ工業株30種平均は81.37ドル安の25,333.82、ナスダック総合指数は35.50ポイント高の7,707.29で取引終了。買いが先行したが、トランプ政権が中国からの輸入品2,000億ドル相当への関税率引き上げを検討していることが報じられると、ダウ平均は下落に転じた。
7月米雇用統計予想
日本時間3日午後9時30分に発表される7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数は、前月比+19.0万人程度、失業率は0.1ポイント低下し、3.9%と予想されている。主に雇用者数の増加によって7月の失業率は低下する可能性がある。市場関係者が最も注目している平均時給の伸び率は6月実績と同水準の前年比+2.7%と予想されている。ただ、労働市場の需給関係はひっ迫しつつあることから、伸び率は市場予想を上回る可能性もある。
平均時給の伸びが市場予想と一致、または上回った場合、リスク選好的なドル買いがやや優勢となりそうだ。なお、非農業部門雇用者増加数が市場予想を下回った場合でも、6月と7月の雇用者増加数が合計で35−40万人程度ならば、市場は悪い数字と解釈しないと思われる。完全雇用に近づきつつあることを考慮して、ドル買い材料になると思われる。雇用統計結果への反応は複雑になっているため、発表された内容にマーケットがどのように反応するか確認しながら取引を進めたい。
図5 直近1年のドル円チャート(日足)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
提供:フィスコ社