注目されていた日米首脳会談は、安倍首相とトランプ大統領の関係構築としては二重丸の結果となった。安倍首相は、日米首脳会談後に行われた記者会見で、「アジア太平洋地域に自由かつルールに基づいた公正なマーケットを、日米両国のリーダーシップのもとで作り上げていく」と述べたが、米国と中国の今後に経済関係については特に言及しなかった。日米両国は2国間の枠組みに関する議論を含めて、経済成長を達成するための最善の方法を今後探求することになるとみられる。
一方、今回の首脳会談では、日本の金融・為替政策に対する批判は特になかったもようだ。ゴルフでラウンドしている際にどういった会話が行われていたかはわからないが、市場が懸念していた「日銀の金融政策に対する批判」は回避された様子だ。ただ、日本銀行による大量の資金供給や長期金利の上昇を抑制する金融調節は、円安を招くと批判される可能性は今後も残されている。日米のボスは仲良くなりつつあるが、実務者間での話し合いが注目されよう。
今後のマーケットはどのように考えればよいだろうか。トランプ大領領の“口撃”に注目が集まりがちだが、今回は年3回の利上げが予想される米国の金融政策と大きな相場の転換点で存在感を発揮するゴールドマン・サックス(GS)の「先物売買動向」について確認してみたい。
米国の年3回利上げは本当か? |
週明けの日経225先物は19,500円台を回復するなど強い値動きがみられる。ただ、為替市場では、ドル・円が114円台と円安ドル高基調は一服。これは、ムニューチン米財務長官や、トランプ大統領がドル高けん制発言を行ったことが影響したと思われる。また、米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は、2月14日に実施された議会証言で
「経済が軌道に乗れば一段の金利調整が必要になる可能性」
「利上げを過剰に長く待つことは賢明ではない」
「FRBは見通しの展開に伴い、金利予測を調整へ」
などとコメントしている。この発言に対し、市場では想定外にやや「タカ派」寄りの発言と理解され、米10年債利回りは上昇し、米国では金融株が買われる展開となった。証言後の質疑応答でイエレン議長は「今後数ヵ月間にバランスシートの戦略について協議する」と述べており、金利引き上げの作業後は、バランスシートの縮小に着手することになるとの見方も広がっている。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)が算出しているFed Watch(FF金利先物のFOMC予想確率)では、3月利上げの確率は13.3%とイエレン議長の議会証言前後でほぼ変化はない。可能性が高まっている6月で70.1%(複数回の利上げ予想も含む)である。市場は3月利上げをほぼ想定しておらず、6月、9月、12月の3回を見込んでいる。つまり、昨年12月にFOMCがにおわせた17年3回の利上げ見通しは、現在も十分意識されているといえよう。FRB関係者のコメントや米雇用統計など経済指標で、利上げを見込む流れは多少変化するが、昨年12月利上げ実施から2ヵ月が経過しても、3回利上げ見通しが市場で意識されている点は、昨年と大きく異なる。ちょうど1年前の今頃は原油価格の急落、急激な円高、株安でかなりきつい状況だった。昨年のような利上げ見通しを大幅に引き下げるようなネガティブな地合いには、現状ならないと想定する。基本的な日米金利差を考慮すると、今後も大幅な円高推移は回避されるとみる。
図1:直近2年のドル円(週足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
ゴールドマン・サックスがTOPIX先物を大量買い越し |
日経225先物はあと少しで昨年来高値19,640円(1月4日、5日の取引時間ベースでの高値)を上抜く状況にある。ドル・円が114円台で推移していることを考えると、日本株の強さが目立つ。この背景には、ゴールドマン・サックス(以下GS)によるTOPIX先物があると考える。GSは、8日(3,596枚の買い越し)、9日(2,860枚の買い越し)、10日(3,524枚の買い越し)、13日(2,967枚の買い越し)と4日連続で買い筆頭となった(14日は79枚の買い越し)。もともと、GSは7万枚ほどのTOPIX先物の買いポジションを持っていたが、2月14日時点の推定ポジションは8.2万枚の買い越しと買いポジションを積み上げ始めている。
TOPIX先物の買いポジションだけで相場の方向性を示すわけにはいかないが、これまでも同社は相場の大きな転換点で存在感を発揮してきただけに話題性は大きい。また、トランプ政権に多くの閣僚を輩出していることも気になるところだ。TOPIX先物による買いは、比較的投資スタンスの長い投資家、つまり年金筋よる買いと捉えられる。短期投資家が好む日経平均先物と異なり「買いの筋がいい」と判断される。もっとも、同社のポジションは9万枚当たりでピークを迎える傾向があるとの指摘もあり、今後も買いポジションを積み上げていくかどうかは要注目といえよう。
実際、TOPIX先物は取引時間ベースでの昨年来高値1,561.50p(1月5日)にあと1.5pまでせまっている。3月限のポジションを大量に保有していることから、3月のメジャーSQ日に向けて、このポジションを6月限に移し変えるのか、現物株に置き換えるのか、それとも決済(反対売買を行いポジションを整理)してしまうのかが注目となろう。225先物よりもTOPIX先物の動向および手口に注目しておきたい。
図2:直近1年の日経225先物(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図3:直近1年のTOPIX先物(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
- ※各取引所より発表される売り買い上位20社のデータをもとに、売り買いの差し引き週間累計の上位順に表示してあるため、日々ベースで上位となっている証券会社でも表示されていないケースがあります。また日々発表される手口は20位以下が未発表であるため、差し引きが実際とは異なる(大きく傾いて表示される)場合があります。日々の手口は限月間スプレッドを含み、イブニング、立会外及びSGXは含んでいませんが、推定建玉はイブニング、立会外の分も加味しています。尚、推定建玉は週初一回のみ各取引所より発表される建玉残に日々の売り買い差し引き枚数を加減算した推計値となっています。
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