米大統領選挙は最終コーナーを立ち上がり、最後の直線へ。
11月8日(火)に米大統領選挙の投票日を迎える。東京時間の9日の朝方から続々と開票作業に移っていくことから、東京市場では、カリフォルニア州(55人)、テキサス州(38人)フロリダ州(29人)など大票田といわれる州の開票結果に一喜一憂といった展開となるだろう。
19日(日本時間20日10時前後)に最後の米大統領候補者によるTV討論会が開催される。これまでの2回の結果はいずれも民主党候補者ヒラリー・クリントン氏優勢という結果となり、現状、共和党ドナルド・トランプ氏は劣勢となっている。各メディアが報じる支持率は、NBCとウォールストリート・ジャーナル紙の調査によれば、ヒラリー氏がトランプ氏に対して11ポイントリードしている。また、NBCによる調査では、ヒラリー氏が51%、トランプ氏が41%といずれもヒラリー氏が優勢(10月17日時点)。ただ、投票先を決めかねている有権者が1割ほどいることから、結果は蓋を開けて見なくてはわからない。市場では今年6月末の英国EU離脱の国民投票の再来が警戒されているが、最大のリスクはもちろんトランプ氏が大統領に就任することだ。「トランプ・リスク」は今年最大の「テール・リスク」として意識されており、日本のみならず米国株も出来高は減少傾向にある。今回は、ヒラリー氏、トランプ氏それぞれ大統領に就任した際の市場への影響を考察してみたい。
ヒラリー大統領誕生も円高ドル安で株安? |
優勢と見られているヒラリー氏だが、短期的には「世界的な株高、ドル高」と「リスク・オフ」の流れが強まると思われる。これは、ヒラリー氏が掲げる政策を好感した買いというよりは、相対的な安心感などが意識されるからと考える。トランプ大統領誕生への警戒感の裏返しと言えよう。ただ、あくまでも短期的と見ている。
こんなCMを覚えているだろうか?「俺ならガツンと言ってやるね」――日本人サラリーマンが居酒屋で同僚に威勢よく話していたものの、ホワイトハウスで当時のビル・クリントン大統領(そっくりさん)と対面し、そっくりさんから「Tell me GATSUN?」と迫られると、黙って胸ポケットから取り出した缶コーヒーを飲むだけ。
これは、1990年代後半、金融機関の倒産など経済の混乱が続いた日本に対し、米国の容赦ない市場開放要求に怒りを感じつつも力関係で何も言えないという現実を揶揄したCMである。ヒラリー氏の夫であるビル・クリントン氏が大統領を務めた1993年から2000年、ビル・クリントン氏は就任後ドル安(円高)政策を推し進め、衰退ぎみだった米国企業の再生に乗り出した。政権発足当時のドル・円は123円付近だったが、その年の8月には100円台まで急激な円高が進んだ。そして、1年後の1994年1月、ドルはいったん112円台まで戻ったが、阪神大震災が発生した1995年、4月には79.75円の記録的な円高に振れた。
しかし、ビル・クリントン氏は、1995年後半以降、ドル高(円安)政策にスイッチを切り替え、資本を集めIT産業を強化した。約3年後の1998年7月にドルは146円付近まで上昇している。つまり、ドル・円はビル・クリントン政権発足から2年あまりで4割円高に振れた後、今度は3年あまりで8割円安となった。
では、2017年からの「クリントン政権」はどうなるだろうか。ヒラリー氏は今年2月にメイン州の地方紙に寄稿し「日本は輸出を増やすために円安に誘導している」として、大統領に当選した場合には対抗措置を取る方針を示している。これは日本の円安政策への単なる批判にとどまらず、ビル・クリントン時代同様、通貨政策で主導権を強める宣言と理解できる。まずはドル安(円高)にして米国企業を再生させ、その後体力がついたらドル高にするというビル・クリントン氏と同じパターンかもしれない。90年半ばほどではないが、円高推移は日本株にとってマイナス面が大きい。ヒラリー大統領誕生の際は、短期的には「世界的な株高、ドル高」、中期的には「日本株売り、ドル安円高」、長期的(任期8年ならば)には、「日本株買い、ドル高円安」という流れとなるだろう。年内など短期的には「買い」の姿勢でいけると考える。外国人投資家が日本株買いに動いたならば、年内18,000円手前の水準までの上昇は期待できよう。
図1:直近1年のドル/円(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図2:直近1年の日経平均株価(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
今年最大のテール・リスクと言われるトランプ大統領就任は株安に |
さて、トランプ氏が大統領となった場合だが、今年最大の「テール・リスク」が炸裂することとなろう。
すなわち「株売り、円買い」だ。ヒラリー氏と異なり、短期的など期間を分ける必要はないだろう。世界最大のGDPを誇る米国をコントロールする大統領に、トランプ氏が就任することのネガティブインパクトはかなり大きい。
何がネガティブ視されるか?それは、「何をするか読めない」という点だ。市場では、先行き不透明感が高まり、日米欧の恐怖指数(米VI指数、日経VI、欧州VSTOXX)つまりボラティリティは急騰するだろう。ボラティリティ急騰によって、リスクコントロールの観点から、機関投資家の多くは株式や原油などリスク商品への投資を取りやめざるをえなくなる。絵に描いた「リスク・オン」相場がスタートすることだろう。6月24日に見られた英国EU離脱ショックに似た動きを想定しておいた方が良さそうだ。
ドル・円は100円割れ、株安を見越した先物売りが加速し日銀によるETF買入れも焼け石に水となろう。足元のボックス圏下限16,000円割れは必至で、年初来安値に迫る場面も見られるかもしれない。短期的なインパクトが一巡した後も不透明感は市場に残ることから、「リスク・オフ」に転換するのは難しいだろう。大統領就任後、3ヶ月ほどは「ハネムーン」と称してメディアは目立った批判をしないと言われているが、大手メディアをこぞって敵に回したトランプ大統領に限っては「ハネムーン」は適用されないのかもしれない。
図3:直近1年の日経平均VI(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図4:直近半年の日経平均(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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