7月29日の日銀金融政策決定会合(日銀会合)で、ETF買入枠の倍増が発表されて以降、東京株式市場は出来高が減少し、閑散とした相場展開が続いている。9月に入ってもこの流れは変わっておらず、東証一部の売買代金が2兆円を超えたのは9営業日中僅か3日(9月9日のメジャーSQ日を含む)だ。先物・オプション市場も売買、建玉ともに盛り上がりに欠ける展開が続いており、裁定取引に絡んだ売買はネットベースで2660億円(9/2時点)に留まっている。日銀会合後、日経VI(ボラティリティ・インデックス)が今年最低水準(18.45p、8月12日)まで低下するなど下値不安が後退。一方、投資部門別の売買動向では、海外投資家は、先物、現物を合算すると8月だけで9000億円ほど日本株を売り越している。日本株は下値警戒が乏しくなったものの上値も重い。つまり狭いレンジで手掛けにくさが強く意識される格好となった。
ただ、商い閑散を払拭する可能性があるイベントが間近に迫っている。20-21日に開催される日銀会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)だ。今回は、今後の株価に大きく影響する両イベントについて、どういった決定がされるのか現時点の想定を確認しながら、株価への影響を考えてみたい。
FOMCは「利上げ」見送りがコンセンサス |
12日まで、FRBや連銀関係者のコメントに市場は一喜一憂してきた。9月のFOMCでの利上げの有無を巡って様々な思惑が交錯する格好となったが、13日から金融政策の情報発信を控える「ブラックアウト期間」に入ったことで、これ以上、関係者の発言が出ることはない。
2016年のFOMCメンバーは10名で、FRB理事や各地域の連銀総裁が名を連ねている。これまでの発言(特にここ1ヶ月間の発言)から、現時点の立ち位置をまとめてみた。
<ややタカ派からタカ派>
○ジャネット・イエレン(FRB議長)
○スタンレー・フィッシャー(FRB副議長)
○ウィリアム・ダドリー(ニューヨーク連邦準備銀行総裁)
○エスター・ジョージ(カンザスシティ連邦準備銀行総裁)
○ロレッタ・メスター(クリーブランド連邦準備銀行総裁)
○エリック・ローゼングレン(ボストン連邦準備銀行総裁)
<中立>
○ダニエル・タルーロ(FRB理事)
<ややハト派からハト派>
○ラエル・ブレイナード(FRB理事)
○ジェームズ・B・ブラード(セントルイス連邦準備銀行総裁)
○ジェローム・パウエル(FRB理事)
ひとまず上記のようにまとめてみた。数字で見ると、利上げに積極的なタカ派が6名、利上げに慎重なハト派が3名、中立が1名となっている。この構図を見る限りでは、利上げの可能性は非常に高いと言えよう。ただ、ダドリー氏、ジョージ氏、メスター氏、イエレン氏、フィッシャー氏は、8月の米雇用統計発表前の発言をもとにしている。つまり6日のISM非製造業景況指数の悪化などは織り込んでいないことから、上記の構図は参考程度に留めておいたほうがよさそうだ。CMEが算出する足元のFF金利先物を確認すると、9月利上げの確率は僅か15%に留まっている。昨年12月の利上げ時、FF金利先物は7割超まで高まっていたことを考慮すると9月の利上げ実施は見送りとなろう。仮に利上げを実施した際、市場は利上げ実施を織り込んでいないことから、強烈な株安、ドル買い円安が進行すると見る。ボラティリティが急騰し、リスク回避の流れが強まることが想定される。
図1:直近1年のドル/円(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
日銀会合は「マイナス金利」深掘りが軸となる見通し |
一方、同日ながら時差の関係で一足先に開催される日銀会合においては、マイナス金利の深掘りが金融政策の軸となる見通しだ。マイナス金利の深掘りとなれば、為替市場では円安ドル高が進みやすくなる一方、株式市場では、メガバンクを筆頭に銀行株が売られる可能性が高い。マイナス金利深掘りをけん制する発言が金融業界などから出るかもしれないが、日銀会合の1週間前から市場に観測報道が伝わっていることを考慮すると、それなりに現実味は高いと思われる。
現在の日銀会合のメンバーは下記の通り。
<安倍政権時に任命>
○黒田 東彦(日銀総裁)・・・・・アジア開発銀行総裁、財務官
○中曽 宏(日銀副総裁)・・・・・日銀プロパーの国際派
○岩田 規久男(日銀副総裁)・・・リフレ派学習院教授
○原田 泰(審議委員)・・・・・・早稲田リフレ派エコノミスト
○布野 幸利(審議委員)・・・・・トヨタ副社長
○櫻井 眞(審議委員)・・・・・・シンクタンク
○政井 貴子(審議委員)・・・・・新生銀行
<野田政権時に任命>
○木内 登英(審議委員)・・・・・野村證券金融経済研究所
○佐藤 健裕(審議委員)・・・・・モルガン・スタンレーMUFG証券
政井氏から上の審議委員及び日銀総裁、副総裁は安倍政権の際に任命されている。一方、木内審議委員と佐藤審議委員は野田政権の際に任命されている。時の政権によって主義主張が異なるわけではないが、木内審議委員と佐藤審議委員は、追加の金融緩和に否定的な立場を貫いている。今年に入って退任された白井早由里元審議委員と石田浩二元審議委員は、マイナス金利に反対の立場をとっていた一方、新しく就任した櫻井審議委員、政井審議委員はともにマイナス金利に賛成派と見られている。パワーバランスなどを考慮すると、FOMCよりは日銀会合のほうが流れは固まっているような状況だ。
FOMC「利上げ」見送りと日銀「マイナス金利」深掘りで株価はどうなる? |
上記の流れから
米FOMC・・・金利引き上げを見送り
日銀会合 ・・・マイナス金利幅の拡大
という内容が市場コンセンサスとなりそうだ。では、上記の決定となった場合、市場はどのような反応を示すだろうか?日銀会合の結果の方が早く発表されることから、マイナス金利幅の拡大となれば、為替市場では円安ドル高で反応しそうだ。一方、株式市場では、マイナス金利幅の拡大=株売りの構図となっていることから銀行株を中心に日本株は売りとなろう。円安ドル高も銀行株下落の流れにのまれる可能性はある。日銀によるETF買入実施への思惑は高まっても、一度売りで動き出すといったんは下に走りそうだ。売り仕掛けなどが入り瞬間的には225先物が16000円を割り込む場面もあろう。ただ、その晩、米FOMCで利上げ見送りが発表されれば、為替市場では円安ドル高の流れは一巡するだろう。ただ、米国株上昇の流れを受けて225先物は買戻し優勢の展開が想定される。結論として、日銀会合後は「株売り、円売り」。米FOMC後は「売られた分の巻き戻し」という相場展開を想定する。
図2:直近1年の日経平均株価(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
図3:直近1年のNYダウ(日足チャート)
- ※当社WEBサイトを通じて、SBI証券が作成
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