7/29(金)には、いよいよ日銀金融政策決定会合の結果が発表されます。Bloomberg調査では8割弱のエコノミストが追加緩和を予想しています。
同日の日経平均株価は日銀金融政策決定会合の結果発表後に、大きく上下する可能性が高そうです。したがって会合の結果発表前にポジションを軽くしておくことも有効だと思います。しかし、上下のどちらに動くのかについては読み切れなくとも、大きく動く可能性が高いのであれば、取るべき有効な手段が存在すると考えられます。
強弱対立 |
日経平均株価は7/21(木)まで反発基調が続き16,938円の高値を付けましたが、7/22(金)から7/26(火)までは3営業日続落となりました。株価が短期間で上昇してきた後だけに、テクニカル指標等で一部過熱感が台頭し、利益確定売りが出やすくなっていたことが一因です。またFOMC(米連邦公開市場委員会)や日銀金融政策決定会合などの重要日程を控え、ポジション調整の売りも増えたものと考えられます。7/27(水)には一部報道等を手掛かりに、政府や日銀の政策に対して再び期待が高まり、株価も反発に転じましたが、7/28(木)にはまたも売り先行となるなど不安定な状態が続いています。
図1は日経平均株価とその主要移動平均(5日、25日、75日)、乖離率を示したものです。赤線で囲った部分は日経平均・日々線の25日移動平均からの乖離率が5%を超えた箇所です。教科書的には日経平均株価の25日移動平均からの乖離率が±7〜8%を超えると、株価が反転しやすいと考えられています。ただ、日々線からのプラス乖離率について最近は5%を超えると株価が反転しやすいことが、このチャートからも読み取れます。その意味で現状は、要注意のタイミングであることに変わりはないと思います。
図2は日経平均株価の一目均衡表(日足)です。現在、(1)日々線が「クモ」の上に上抜け、(2)転換線が基準線の上に上抜け、(3)遅行スパンが日々線の上に上抜け、という3条件がすべて満たされています。したがって、一目均衡表分析の観点からみた当面の日経平均株価については、堅調相場の持続が期待できると考えられます。
図1:日経平均株価と主要移動平均〜25日移動平均上方乖離が5%超になっており要注意か?
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは2016/7/27現在。
図2:日経平均株価・一目均衡表(日足)〜「3役好転」中であり、形としては悪くない
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは2016/7/27現在。
日銀金融政策決定会合の注目点 |
こうした中、7/29(金)にはいよいよ日銀金融政策決定会合の結果が発表されます。Bloomberg調査では8割弱のエコノミストが追加緩和を予想しています。(1)長期国債の買い入れ額について現状の年間80兆円ペースから上積みするのか、(2)ETFの買い入れ額(年間3兆円)、J-REITの買い入れ額(年間900億円)の増額はあるのか、(3)マイナス金利の拡大はあるのか、等が市場の注目点になると思われます。
日銀金融政策決定会合後の株価の動きとしては、以下にあげる4つのシナリオがご参考になると思います。
(A)日銀が「ゼロ回答」の場合、急速な円高・株安となる可能性
(B)国債買い入れ額を数兆円程度、ETFを1〜2兆円程度増やす場合、円高・株安となる可能性
(C)国債買い入れ額を10〜20兆円程度、ETFを数兆円増やす場合、円安・株高となる可能性
(D)日銀のバランスシートを長期間、減らさないことについてコミットする場合、円安・株高となる可能性
実際に日本銀行から発表される金融政策の内容は、これらの組み合わせになる可能性も大きく、会合後の株価を読むことはなかなか難しいのが現実です。また、市場が感じる「出尽くし感」や、それまでの株価への織り込み具合も、日銀金融政策決定会合後の株価に影響してくるものと考えられます。
なお、黒田氏の総裁就任(2013)以降の日銀金融政策決定会合では、重要な変更がある場合、結果発表が開催最終日の13時台になる傾向が強いようです。ただ、マイナス金利導入を決めた本年1/29のように、12時30分過ぎに発表される場合もあります。また、「現状維持」となる場合、最短では11時30分台の発表もあります。東証の午前の取引が終わるまでに会合が終わる可能性は小さいですが、それ以降の時間帯について市場参加者は「臨戦態勢」を迫られることになりそうです。
図3は前回の日銀金融政策決定会合について結果が発表された6/16(木)の日経平均株価・日中足となっています。市場参加者の28%が事前に追加緩和を予想していましたが、発表当日の午前中は「追加緩和なし」に終わることを警戒するかのように売りが先行しました。そしてこの日の11時45分に「追加緩和なし」が正式に発表されると、日経平均株価は改めて売り直される展開となり、結局前日比485円安と大幅安になっています。
図3:日銀金融政策決定会合の結果が発表された2016/6/16の日経平均・日中足
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
【ココがPOINT!】上下に大きく振れそうな時に取るべき戦略は? |
7/29(金)の日経平均株価は日銀金融政策決定会合の後に、大きく上下する可能性が高そうです。ただし、上下どちらに動くのか高い確度で予想することは相当に困難であると思います。読み切れないリスクがあるにもかかわらず、ポジションをそのままにしておくことは危険かもしれません。したがって結果発表前にポジションを軽くしておくことも有効だと思います。
しかし、上下のどちらかに動くのかについては読み切れなくとも、大きく動く可能性が高いのであれば、オプション取引の利用が有効な手段になり得ると思います。そのうち、もっともオーソドックスな方法が「ストラドルの買い」であると考えられます。グラフに太線で示した線が合成損益図の例ですが、日経平均株価が急騰、または急落すれば利益が出る形になっています。
もっとも、先月の日銀金融政策決定会合の例もあり、日銀金融政策決定会合の後の波乱を予想する向きは意外に多いと思います。このため、コール、プットともにやや割高な水準まで買われているように思われます。図4にもあるように、「保険代」に相当するプレミアム価格のコールとプットの合計は860円に達していますので、損益分岐点も厳しくなっています。すなわち、日経平均株価が上昇した場合は17,360円(=16,500+860)超、逆に下落した場合は15,640円(=16,500-860)未満にならなければ利益にならない計算になっています。これは要注意のポイントだと思います。
図4:「ストラドルの買い」の例(2016/8限・権利行使価格16,500円)
日経平均公表データをもとにSBI証券が作成。日経平均オプション2016/8限について、コール・オプションを415円、プット・オプッションを445円で各々1単位ずつ買い付け、SQまで保有したと仮定した場合の推定合成損益図(諸コストは除く)を示しています。