上場企業による2016/3期の決算発表が相次いで実施され、日経平均の予想EPS(一株利益)が底入れ・上昇となりました。日経平均株価の予想EPSは2015/11頃から下落傾向となり、そのことが日経平均株価の下落につながってきましたが、予想EPSの上昇を受け、日経平均株価も堅調となっています。
今後の日経平均株価はどう動くでしょうか。また、オプション取引ではどのような戦略をとるべきでしょうか。今回の「オプションの『ココがPOINT!』」では、その点を吟味してみたいと思います。そして「バーティカル・ブル・コール・スプレッド」という戦略をご紹介したいと思います。
今後の日経平均は?予想PERをベースに「徹底解析」! |
5/17(火)付の「225の『ココがPOINT!』」でご説明したように、2013年半ば以降、日経平均株価はおおむね予想PER(株価収益率)13.5倍相当ラインと同16.5倍相当ラインの間(予想PER15倍±10%の範囲内)で推移してきました。そこでは予想PER13.5倍が重要な下値支持ラインに、同16.5倍が上値抵抗ラインになっています。なおこれらのラインは、日経平均株価の予想EPS(一株利益)が変化する方に動いているのが特徴です。企業業績が拡大傾向ならば、予想PER13.5倍相当の「下値支持ライン」や、同16.5倍相当の「上値抵抗ライン」も上昇し、逆に企業業績が縮小傾向ならばこれらのラインも低下することになります。
そして足元では、上場企業による2016/3期の決算発表が相次いで実施され、「予想」の対象が2016/3期から2017/3期に替わるというプロセスを経て、予想EPSも底入れ・上昇となりました。日経平均株価の予想EPSは2015/11頃から下落傾向となり、そのことが日経平均株価の下落につながってきましたが、予想EPSの上昇を受け、日経平均株価も堅調となっています。
今後の日経平均株価はどう動くでしょうか。また、オプション取引ではどのような戦略をとるべきでしょうか。今回の「オプションの『ココがPOINT!』」では、その点を吟味してみたいと思います。
図1にて四角で囲んでいるように、3月決算銘柄の決算発表時期である4月中旬頃から5月中旬頃にかけ、予想EPSは上昇する傾向があります。安倍政権の活動が本格化した2013年以降、企業業績がおおむね良好なことが要因です。決算発表時期には業績予想の対象が、替わりますので、増益局面ならば予想EPSも上昇することになります。しかし、決算発表の時期が終わると例年、予想EPSは動きにくくなります。例えば現在であれば、2017/3期という会計年度がスタートした直後であり、会社が公表している業績予想が達成できるのか否か、いまだシロクロは付きにくい時期になります。
図1の右端には、今後想定される日経平均株価の方向を(1)〜(5)として矢印に示しています。ここで方向性に影響を与える日経平均予想PER13.5倍、15倍、16.5倍相当ラインについては、決算発表の時期が一巡したため、向こう数ヵ月は「横ばい」という前提条件をおきます。5/18(水)現在では、予想EPSが1,191円ですので、予想PER13.5倍相当で16,084円、15倍相当で17,871円、16.5倍相当で19,659円と計算されます。
矢印が示す方向別に妥当性を吟味してみます。下記の箇条書きの番号は矢印の番号と同じです。
(1)日経平均株価が予想PER16.5倍の上限を超える可能性は相当小さいとみられます。企業業績への不透明感が根強いためです。この前提が崩れる時は1ドル115〜120円程度の円安・ドル高が必要だと思われます。
(2)予想EPSの低下局面での日経平均は、予想PERでみると13.5倍〜15.0倍の範囲内の推移が中心でした。同15倍を超え16.5倍に相当する19,659円を目指すには、円安・ドル高等の「援軍」が必要でしょう。このシナリオも可能性として小さめです。
(3)予想PER15倍程度(17,871円)の実現は十分可能であり、中心的シナリオのひとつだとみられます。
(4)予想PER13.5倍に向けて動くシナリオもある程度ありそうです。外為市場で円高・ドル安が続く場合がそうです。
(5)1ドル105円を割るような円高では、企業業績の方向感に不透明感が強まりますので、日経平均株価が予想PER13.5倍の下値支持ライン(16,084円)を割り込む可能性も少ないながら残ると考えられます。
以上から、「メインシナリオ」としては、日経平均株価は向こう1〜2ヵ月以内に、18,000円近辺まで上昇しても不思議ではないと考えられます。
図1:日経平均株価と予想PER13.5倍、15倍、16.5倍相当水準
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/5/18現在。
【ココがPOINT!】「強気だけど、一定以上に株価は上昇しない」と考える時は? |
今後の日経平均株価について基本的に「強気」と考えるのであれば、株式を買い建ててホールドする戦略が有効です。「日経平均株価」自体を買うことはできませんが、それに準じた先物ポジションやインデックス・ファンドで買い建てることができます。また、オプション取引を利用し、単純に「コール」の買いで対応する手もあります。今回の「オプションの『ココがPOINT!』」では、日経平均株価が18,000円程度までは上昇する可能性があると予想しており、現状でも上値余地は十分あるケースで、上記の戦略でも大きな利益を狙うことは可能です。
ちなみに、日経平均株価が18,000円前後まで上昇するというシナリオは、「18,000円以上に上がる可能性は小さい」と考えることと同じです。したがって、仮に日経平均株価が18,500円まで上昇すると、予想としては「外れ」ですが、例えば買い持ちを続ける戦略の場合、損益的にはより多くの利益を得ることができます。ただ、これは「偶然の産物」にすぎません。
そこで、日経平均は上記の予想よりもやや控えめの水準となる17,500円前後まで上昇することをメインシナリオに考え、投資戦略を立てることとします。
図2は、日経平均オプション取引で、権利行使価格16,750円のコールを買い、同17,500円のコールを売った場合の損益図です。日経平均株価が17,500円程度までであれば、上昇した場合の利益は単純なコールの買いよりも大きく、損失が出る場合も、プレミアム料を受け取っている分があるため限定的という結果です。ただ、日経平均が17,500円を超えて上昇すると、むしろ単純なコールの買いの方が良かったという結果になりますが、相場観としてはあっていた訳で、致し方のないところです。
このように、投資家の相場観の細かいところまでを損益の差として実現できることが、オプション取引を利用するメリットだと思います。ただし、ここでは手数料や証拠金等諸コストの計算は考慮していませんので、ご注意ください。
同一限月の安い方の権利行使価格のコール・オプションを買い、高い方のコール・オプションを同一売買単位だけ売るというオプション戦略を「バーティカル・ブル・コール・スプレッド」といいます。「日経平均は上昇すると予想する。ただし、××円が上限」と予想するような時、シナリオ通りであれば、単なる「コールの買い」よりも多額の利益をあげることが可能です。予想に反し、一定以上に株価が上昇しても利益は一定以上に増えないのが特徴です。
実際には、相場を監視しつつ、コールの買いをなるべく安価で実施し、コールの売りを高価で実施するよう心がけることも重要になると考えられます。
なお、コールの買いと売りの売買枚数を異なるようにする戦略もあります。コールの売りの枚数を1単位を超えて増やすと、合成損益の右端の部分が横ばいでなく下落に転じますので一層の注意が必要ですが、「目標株価」以内での上昇であれば、一層利益を増やすことが期待できます。
図2:一定の目標株価まで上昇するとのシナリオを活かす「バーティカル・ブル・コール・スプレッド」
- ※日経平均オプション・データをもとにSBI証券が作成。2016/5/18の日中終値データを用いて作成した。日経平均コール・オプション(2016/6限月・権利行使価格16,750円)を315円で1単位買うとともに、同コール・オプション(2016/6限月・権利行使価格17,500円)を95円で1単位売ると仮定した。