日経平均株価は3月に入り、一進一退の展開になっています。新興国経済への不安が後退し、海外株式市場や商品相場が概ね堅調に推移する一方、外為市場では円高・ドル安圧力がくすぶり続け、強弱材料が拮抗しているためです。
そうした中、日程的には間もなく3月期末となり、4/1(金)からは新年度相場になります。株式相場はどのような感じでスタートを切るのでしょうか。この時期は、4月下旬以降に予定されている3月本決算企業等の決算発表本格化を控え、「企業業績」にスポットが当たってきます。来年度の企業業績は「要警戒」と予想する市場参加者も多そうですが、そうした空気は市場にどのような影響を与えるでしょうか。
今回の「オプションの『ココがPOINT!』」では、そんな新年度相場のスタートを予想するとともに、それに対応した投資戦略を検討してみたいと思います。
「企業業績は要警戒だから弱気」は本当に正しいのか? |
日経平均株価は一進一退の展開になっています。2/12(金)の安値14,865円から、3/14(月)には17,291円の高値を付けましたが、その後は17,000円をはさんで上下しています。新興国経済への不安が後退し、海外株式市場や商品相場が概ね堅調に推移する一方、外為市場では円高・ドル安圧力がくすぶり続け、強弱材料が拮抗しているためです。
そうした中、日程的には間もなく3月期末となり、4/1(金)からは新年度相場になります。この時期は、4月下旬以降に予定されている3月本決算企業等の決算発表本格化を控え、「企業業績」にスポットが当たってきます。
来年度の企業業績については、「要警戒」と予想する市場参加者が多そうです。「円安」の恩恵がなくなってくること、中国など新興国経済の減速、スマートフォンの普及一巡に伴う関連企業の業績悪化等が背景とみられます。大手経済研究所等の予想では来年度数%程度の経常増益が予想されていますが、下方修正含みであると考えられています。来年度の業績見通しについて企業発表ベースでの大勢が明らかになってくるのは5月中旬頃になるとみられますが、それまでは市場の「要警戒ムード」が解けない可能性がありそうです。
実態面では、企業業績の先行きに対する市場の懸念は行き過ぎのように思われます。原油や商品市況の下落について、マイナス面が先に織り込まれ、プラス面があまり考慮されていないようにみられるためです。3/24(木)の取引では減損計上が報じられた商社株が改めて売り込まれましたが、減損計上なら来期については業績回復の期待が高まりそうです。
為替についても、新興国通貨に対する「円高」は2015年から続いており、むしろ最近は一巡しつつあります。ここにきて急速な「円高」になっているように見えるのは、対ドルでの円高が進んだからで、その背景には米利上げペースの鈍化(期待)があります。しかし最近は米景気の底堅さを示す材料が増えており、その意味で、極端な円高・ドル安には進みにくいように思われます。新興国通貨の反発は、市場のリスク許容度回復を示しており、「リスク回避の円買い」も減るかもしれません。
ただ、このように実態面で過度の懸念が不要にせよ、そうした見方が市場に浸透してくるには時間を要しそうです。加えて、3/21(月)以降、米国では、1〜3月期決算を発表予定の多くの企業が自社株買いを禁止される「ブラックアウト期間」に入ったため、その分株価が上がりにくくなります。このため、「米国株高」という追い風は期待しにくいかもしれません。
株式市場について、「企業業績は要警戒だから弱気」と考える必要は乏しいと思いますが、新年度相場のスタート地点は短期的には、波乱含みであると予想されます。
図1:日経平均株価(日足)・一目均衡表 クモの上に抜けられれば「三役好転」だが・・・
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/3/24現在。
【ココがPOINT!】ここは着実に利益を狙う戦略で |
日経平均のオプション取引がSQを迎える4/8(金)にかけては支援材料が少なく、上値は限定的とみられます。ただ、新興国経済や原油価格等の波乱も一巡した感があり、下値不安もそれ程強くありません。日経平均株価は水準的にも、相場下落直前の2015/12/30高値19,113円とその後の安値である2/12の14,865円の中値が16,989円と計算され、強弱が対立しやすいと考えられます。3/23(水)には東証一部の売買代金が本年最低記録を更新しましたが、その背景には、市場参加者が方向感をなくしていることがあげられます。
図1にもあるように、日経平均株価(日足)の一目均衡表は(1)遅行スパンが日々線を上抜け、(2)転換線が基準線を上抜けという2点について「強気転換」していますが、日々線はクモの中に入って抜け切っていないため、揉み合いに転じる可能性が膨らんでいます。やはり、4/8(金)までは慎重な対応が必要かもしれません。
このような投資環境下でのオプション取引では、コールまたはプットを買い持ちする戦略を取った場合、「時間的価値」がじわじわと減少するため、利益をあげることは困難になります。逆にオプションの売り建ては利益を上げられるチャンスが大きいと考えられます。図2の(2)で示した「コールの売り」もそのひとつです。
しかし、「オプションの売り」は上級者向けの戦略です。利益計上の回数は多く期待できる反面、少ない回数の損失でもその金額が多額に膨らむリスクがあるためです。そこで「オプションの売り」のメリットを活かししつつ、リスクをコントロールできる戦略が「カバードコール」であると考えられます。
「カバードコール」は現物株の買いとコール・オプションの売りを組み合わせたもので、その想定合成損益図は、図2の赤線で示されています。なお、正確には「日経平均の現物」という存在はないので、インデックスファンドなどで考えるとわかりやすいと思われます。
(1)で示されているように、日経平均が17,000円を割ると、現物株の損失が出ますが、コールを売っている分、損失が少なくなる計算です。逆に17,000円超に上昇した部分では本来、株価が上がれば上がるほど現物株の利益が膨らみますが、コールの売りで制限してしまっているため、利益は一定額(ここでは200円)以上膨らまない計算です。一見、利益機会を制限しているだけに過ぎないようですが、オプション取引では相場観や戦略を明確にすることが重要です。既述したように、4/8(金)までの日経平均があまり上昇するとは期待していない相場観が前提条件になっているので、この戦略が妥当ということになりそうです。
図2:カバードコール戦略
- ※日経平均オプション・データをもとにSBI証券が作成。2016/3/23の終値で日経平均株価(現物)を買い、同時に2016/4限の日経平均コール・オプション(権利行使価格)を200円で買ったと仮定した場合の4/8(金)SQ時における想定損益図。手数料・税金等の諸コストは考慮していません。