日本時間の12/17(木)早朝まで開催されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利が9年半ぶりに引き上げられました。市場は今回の利上げを時期の面でも、利上げ幅の面でも織り込み済みで、その面でのサプライズは、ほぼありませんでした。
FOMC後に株価が上昇しているのは、市場の過度のリスク回避姿勢が後退していることが主因と考えられ、新たなトレンドが出てきた訳ではないようにみられます。日経平均は当面、反発局面入りが想定されますが、上値での波乱の可能性は残っていると考えられ、注意が必要です。
FOMCの結果として市場に新たなトレンドが出てきた訳ではない |
12/17(日本時間・早朝)、米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、政策金利(FF金利の誘導目標)について、現在の0.00〜0.25%から0.25〜0.50%に引き上げることが決定されました。政策金利の引き上げは2006/9/29以来9年半ぶりのことになります。市場は今回の利上げについては、ほぼ織り込み済みで、「サプライズ」はほぼありませんでした。
2016年の利上げペースについては、四半期に0.25%ずつ年4回程度の引き上げ(従来見通し通り)が改めて示唆されました。引き続き利上げペースとしては緩やかなものと理解され、これが確認されたことはプラス材料とみられます。ただ、今後雇用を中心に、景気拡大・物価上昇ペースの加速が予想されるようになった場合は、考え方が変更される可能性もあります。FRBが変えたくないのは「景気認識」というより、「経済指標の変化に対する柔軟性の確保」であると考えられます。
NY株は続伸となり、株式市場はFOMCの結果を歓迎した形になりました。外為市場ではドル高・円安となりました。しかし、株式市場・ドル相場ともに新しいトレンドが出てきた訳ではなく、「下落後のリバウンド局面」の範囲内にとどまっています。原油相場は依然軟調で、水準的にはいまだ「底割れ」も懸念される状態が続いています。
すなわち、FOMCを経過し、市場の過度なリスク回避姿勢が後退したことが、株価反発の主因とみられます。18日の米先物・オプション最終売買日が過ぎ、さらにリスク選好姿勢が強まるとみられ、株価は当面、反発力を試す展開になりそうです。日経平均株価についても、短期的には25日移動平均の回復がメドとみられます。ただし、何か新しいトレンドが出た訳ではないことに注意が必要です。今後の為替市場や原油価格の動きには、引き続き「注視すること」が必要とみられます。
図1:米政策金利の動き
- ※FRB、BloombergデータをもとにSBI証券が作成。2015/12/16(米国時間)現在。
図2:NYダウ(日足)一目均衡表
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。2015/12/16終値(米国時間)現在。
【ココがPOINT!】株価上昇でも残る「波乱の芽」に注意したい! |
一般的に、金利が高い国の通貨は買われやすいと考えられるので、政策金利が引き上げ局面になった米国の通貨であるドルは買われやすくなったと考えられがちです。確かに、今後政策金利の引き上げの際に、ドルが買われる場面は出てくると考えられます。しかし、2013/5の「バーナンキ・ショック」以来、2年半も要して米国の「出口戦略」は市場に織り込まれてきました。ドルは多くの通貨に対し既に上昇してきましたので、今後も大きく上がるとは限らないのが現実です。
短期的には、FOMCが終了し、18日の米先物・オプション(2015年12限月)売買最終日通過で投資家のリスク回避姿勢がさらに後退するとみられ、日経平均が戻りを試す展開はもう少し続くと考えられます。しかし、株価上昇の伏兵としては「為替」をマークしておいた方がよいように思われます。
直近では、日経平均株価の取引時間中の安値は11/15に付けた18,562円ですので、仮に日経平均株価が19,562円を超えてくると、値上がり幅が1,000円を超えてくることになります。また、同平均株価の25日移動平均(11/16時点)は19,576円です。日経平均株価がこれらの水準前後に到達し、外為相場で円安が進んでいないようですと、短期的に波乱となる可能性が残ります。下の図3は、日経平均株価プット・オプションの推移・理論損益図ですが、目先的には「プット」に買いチャンスが出てくる可能性があります。
ただ、外為相場では、投資家のリスク選好姿勢が当面は強まる可能性があり、年内程度は円高・ドル安への動きも限定的かもしれません。その意味では年が変わり、1月になった時の方が気を引き締める時期なのかもしれません。
図3:日経平均プット・オプション(2016/1限月・権利行使価格19,375円)のプレミアム価格(左)と理論損益図(右)
- ※日経平均オプション・データをもとにSBI証券が作成。2015/12/17は取引時間中の水準が反映されています。
- ※日経平均プット・オプション(2016/1限月・権利行使価格19,375円)を12/17の始値(375円)で買った時、SQまで保有したと仮定した場合の理論損益図。ただし、手数料・税金等の諸コストは除きます。