日経平均株価はいったん大きく下げた後に、「三角保ち合い」を形成した動きになっています。このような非常に重要なタイミングで、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表(米国時間17日・日本時間18日未明)という重要日程を迎えたことになります。9/18以降の日経平均は、大きく上昇するのか、または大きく下落するのか、いずれかのトレンドが明確に表れてくる可能性が大きいと考えられます。
今回の「オプションの『ココがPOINT!』」では、FOMCの結果をいくつかのパターンに分け、それにより相場にどのような影響が出てくるかを考察してみました。また、予想通り相場が大きく変動した場合の参考となる、おもな上値抵抗ラインや下値支持ラインはどこに位置しているかもチェックしてみました。
このような中で、現在の日経平均オプション取引の特徴はどうなっているのか、現在の株価水準から大きく離れた権利行使価格をもつオプションについてもチェックしてみました。
「大変動」も想定されるタイミングでFOMCの結果発表 |
日経平均株価は8/11に一時20,946円の高値を付けた後は下げに転じ、9/8には17,415円の安値を付けました。人民元切り下げ等を契機に中国経済への不透明感が強まったこと、米国で利上げの可能性が強まってきたことを警戒する動き等が背景になっています。その後、9/9に21年7ヵ月ぶりの大幅高(前日比1,343円高)となりましたが、さらに上値を追う動きは限定的で、18,000円前後の水準を安値とする揉み合いへと転じました。
図1は、そうした日経平均の動き(〜9/17)を日足チャートとして示したものです。日経平均株価はいったん大きく下げた後に、「三角保ち合い」を形成した動きになっています。「三角保ち合い」は、株価が上下を繰り返しながら次第に振幅を狭めていく値動きを指しますが、最後は上下どちらかに大きく放れるケースが多いのが特徴です。図1では、9/17の上昇で「上放れ」の「兆し」を示した形になります。
このような非常に重要なタイミングで、株式市場は米金融政策の変更や現状維持を決めるFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表(米国時間17日・日本時間18日未明)という重要日程を迎えたことになります。これを契機に、(途中シルバーウィークを挟む形にはなるものの)9/18以降の日経平均は、大きく上昇するのか、または大きく下落するのか、いずれかのトレンドが明確に表れてくる可能性が大きいと考えられます。
図1:「米FOMC」結果発表直前の日経平均は上下に振れやすい形状に
- ※当社チャートツールをもとに、SBI証券が作成。2015/9/17現在。
「金融政策決定後の相場」はこう考えよう |
米金融政策が決定されるFOMCの結果発表は、日経平均株価が上下に放れやすいタイミングと一致していることがお分かりいただけたかと思います。
そのFOMCですが、結果発表予定は日本時間9/18の未明(午前3時前後)となっています。すなわち、9/18午前3時以前なら「発表前」であり、同午前3時以降ならば「発表後」となります。いずれにせよ、FOMCの結果発表以前に投資行動を取れる機会は限定的です。日経平均先物・オプション取引をされる方であれば、夜間取引という手段が残されていますが、それ以外の多くの投資家にとっては、9/18以降の日本株取引等でどう考えるかが重要です。
すなわち、FOMCの結果を予想することが重要なのではなく、出てきた結果をどう分析するか、それにより株価はどう動くかを見極めることが重要ということになります。
表1は、FOMCで想定される結果をおもに「利上げの有無」「年内に予定される残りのFOMCでの利上げの可能性」に分けて整理し、想定される株価の「メインシナリオ」を予想したものです。また、それぞれのパターンについて、エコノミストの何%が予想しているのかも示しておきました。なお、「利上げ」シナリオの中には、0.125%の利上げという小刻みな予想もありましたので、参考意見としてそれも表に入れてみました。この表のポイントは以下の3点にまとめられると思います。
(1)「利上げ」を予想するエコノミストの数と「利上げ見送り」を予想するエコノミストの数は拮抗していること。
(2)市場は「急速な引き締め」同様、「利上げ見送りとなり、利上げのタイミングも不明」という結果も嫌う可能性があること。
(3)各シナリオの実現で予想される中期的な株価の方向性(中期的影響)と9/18の株価の方向性は異なる可能性もあること。
一般的に、市場参加者の関心は「利上げをするのかしないのか」という点に集まっているように思われます。そして多くの投資家は「利上げ=売り」、「見送り=買い」と考えているかもしれません。しかし、意外に多くのエコノミストや海外中央銀行関係者が重視している点に、FRBによる利上げのタイミングやペースが指摘されています。「FRBがいつ金融政策を変更するのか不透明で対応しにくい」という声もあるようです。仮に今回の決定で「利上げ見送り」となっても、「年内利上げ」がメインシナリオになるのであれば、「利上げするが年内は打ち止め」という決定と大差はないのではないでしょうか。
無論、株価に影響する要因は「FOMC」だけにとどまりません。また、「FOMC」の与える影響が日米市場で異なる可能性があります。例えば、「利上げ見送り」で米国株は上昇したものの、それにより円高となり、日本株は下げるというケースもあります。また、9/19〜9/23の東京株式市場が休場(シルバーウィーク)となる点も注意が必要です。
表1:「ココがポイント」で想定するFOMCの結果別中期的影響度
FOMCの結果(事前想定) | ||||
---|---|---|---|---|
利上げの有無 | 予想比率 | 利上げ幅 | 10/28または12/16のFOMC | 中期的影響 |
利上げを決定 | 45.0 | 利上げ幅が0.25% | 追加利上げの可能性大 | × |
追加利上げの可能性小 | ◯ | |||
3.6 | 利上げ幅が0.125% | 追加利上げの可能性大 | ◯ | |
追加利上げの可能性小 | ◎ | |||
利上げ見送り | 51.4 | - | 利上げの可能性大 | ◯ |
利上げの可能性小 | × |
- 米国の金融政策を決定するFOMC(9/16〜9/17)で想定される金融政策とその後に想定されるメインシナリオをSBI証券がまとめたもの。
- 「予想比率」は、想定される金融政策を予想するエコノミストの比率(Bloomberg集計)。中期的影響は、◎⇒株価大幅上昇要因、◯⇒株価上昇要因、×⇒株価下落要因を意味しているが、あくまでも「ひとつの見方」であり、記号が示唆した方向に株価が変化するとは限らない。
【ココがポイント】相場急変をイメージし「備えあれば憂いなし」!? |
前項で一部触れたように、先物・オプション取引をできる投資家の方であれば、夜間取引を使いFOMC前に対応することは可能です。しかしエコノミストの間でも、その結果については意見が分かれていますので、FOMC前にポジションを極端に傾けることは、コインを投げて裏表を当てるようなものです。通常であれば、ポジションは落としておきたいところです。
さて、FOMCの結果が発表され、株式相場が大きく動いたらどうでしょうか。冒頭でご説明したように、日経平均は上下どちらかに大きく動く可能性があります。そこで、おもな上値抵抗ラインと下値支持ラインを図2の中に示しておきました。
上値抵抗ライン | 1 | 18,592円 | 8/11から9/8の下落幅に対する3分の1戻し |
---|---|---|---|
2 | 18,770円 | 日経平均が1,343円高した9/9の高値 | |
3 | 19,181円 | 8/11から9/8の下落幅に対する半値戻し | |
4 | 19,435円 | 8/21安値と8/24高値の間の窓埋め | |
下値抵抗ライン | 1 | 17,617円 | 日経平均の予想PER14倍水準(9/16の予想EPSで計算) |
2 | 17,415円 | 9/8に付けた当面の安値 | |
3 | 16,993円 | 8/11から9/8の下げと同額を9/9高値から下げた場合 |
仮に、日経平均が大きく上放れ、上昇トレンドが明確になった場合、8/11から9/8までの下げが大きかった分、その何分の1かを戻すリバウンド相場になっただけでも、19,000円以上の水準を回復してくるケースは十分ある訳です。日経平均オプション取引の場合、権利行使価格19,000円以上のコール・オプション(10月限)はプレミアム水準が、まだまだ低位であるため、投資チャンスは十分あるかもしれません。
なお、9/17のオプション市場では、もっとも出来高を集めていた(14時頃)のは、権利行使価格20,000円のコール・オプションでした。19,000円のコール・オプションはその次になっています。逆に権利行使価格16,000円のプット・オプションも出来高を集めています。もちろん、現在の株価から遠い分、プレミアム水準が低いので人気を集めやすいという側面もあります。
予想通り、FOMC結果発表後に「大変動」となった場合には十分注意して対応していただきたいと思います。
図2:日経平均のおもな上値抵抗ラインおよび下値支持ライン
- ※当社チャートツールをもとに、SBI証券が作成。2015/9/16現在。
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