7月は底堅く推移しつつも、変動率は低下傾向
日経平均株価は、6月終値が15,162円となっていましたが、7月は、安値15,101円(11日)、高値15,465円(17日)となっており、概ね堅調に推移しています。
国内的には、消費税増税後の景気・企業業績が想定した程悪化しなかったことが、日銀短観で確認された形となり、市場参加者に安心感を与えています。海外市場では、米国株が史上最高値水準で推移しており、日本株にもプラス材料となっています。為替市場は、円高圧力がくすぶり続けているイメージがあるものの、6月末のドル・円相場が101.30円前後であり、7月24日時点の水準と差が少ないことを考えると、実際は横ばいで推移した形で、株式市場への影響は少なかったとみられます。
相場こう着を味方につけるには?
こうした中、日経平均オプション8月限(行使価格15,250円)のプレミアム価格は、6月30日から7月24日(日中取引)にかけ、コール・プレミアムが275円→170円(▲38%)、プット・プレミアムが415円→120円(▲70%)と、ともに下落してしまいました。日経平均は上昇したとはいえ、17日の高値水準でも6月末からの上昇率は2%弱に過ぎません。株価変動率が低いために、時間価値の減少の方が強く影響し、プットのみならず、コールも下がる形になってしまいました。
相場のこう着感は次第に強まっており、7月23日には、日経平均株価の日中変動率(日々の高値が安値の何%上かを示した比率)が0.38%(値幅は58円)まで低下してしまいました。その様子を示したのが、図1です。0.38%という低い日中変動率は2012年11月14日0.31%以来の低さです。なお、2012年11月14日は、野田前首相が解散・総選挙を表明した日であり、アベノミクス相場の起点になった日と言えます。言い方を変えれば、0.38%は、アベノミクス相場で最低の日中変動率となります。
ここで、市場参加者の関心は、そのように日中変動率が低下した後、株価はどう動くかという点に集まるかと思います。次項では、その点にスポットを当て、オプションSQが予定されている8月8日(金)頃までの相場を考察してみたいと思います。
図1:日経平均株価(日足)と日中変動率
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。日中変動率は、日々の高値が安値の何%上かを示した比率(%)。なお、日中変動率の変化を見えやすくするため、6%以上の変動の部分はグラフ上、見えなくなっている。
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日中値幅の縮小はチャンス? |
表:日経平均株価の日中変動率とその後10営業日の変動率(2004年7月以降)
10日後の平均 騰落率 |
10日後の最高 騰落率 |
10日後の最低 騰落率 |
|
---|---|---|---|
0.5%未満 | 0.9% | 9.7% | -10.4% |
0.5%以上1.0%未満 | 0.1% | 10.2% | -20.0% |
1.0%以上1.5%未満 | 0.1% | 20.2% | -25.6% |
1.5%以上2.0%未満 | 0.2% | 11.3% | -24.0% |
2.0%以上 | 0.5% | 23.0% | -30.4% |
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。2004年7月1日〜2014年7月9日までの各営業日について、日経平均株価の日中変動率及びその後10営業日間の騰落率を調べた結果を示している。
上の表は、2004年7月1日〜2014年7月9日までの各営業日について、日経平均株価の日中変動率及びその後10日間の騰落率を調べた結果を示しています。
一般的に、日中変動率が小さくなることは、「煮詰まる」と言う表現もあるように、その後は上昇サイドか下落サイドに大きく放れることが多いとされます。テクニカル分析で言えば「保ち合い放れ」で、確かによくみられる現象です。ただ、日中変動率を基準に考えた場合、それが一定水準まで縮小した後、何日後に放れるというような明確な表現をすることは、なかなか難しいようです。
上記したように、7月23日に日経平均株価の日中変動率が0.38%まで低下しました。日中変動率が0.5%未満まで低下した営業日の10営業日後まで、日経平均株価は平均0.9%上昇する傾向があります。日中変動率がより大きい場合よりも、相対的に10営業日後の上昇率が大きいという「平均像」になっています。無論、これは「平均像」であり、最高で9.7%上昇したケースも、最低で10.4%下落したケースもあります。しかし、その他の日中変動率と比べ、その後の株価のブレはあまり大きくないという結果にもなっています。
株価が上昇するというシナリオは、現在の投資環境を考えてもあまり違和感がないように思われます。決算発表が進捗し、企業業績への不透明感が後退することで、株価は下支えられるとみられるためです。ただ、夏休みで市場に参加しなくなる投資家も増えやすい季節ですので、その分、上値が抑えられる可能性もあります。
ちなみに、「10営業日」を用いたのは、この文章の掲載日である7月25日から10営業日後は8月8日(金)で、オプションSQ算出日に当たるため、投資家の関心が強いとみられるためです。
「緩やかな上昇」がメンイシナリオならば「カバード・コール」が有効か |
図2:カバードコールの想定損益図
- ※日経平均を15,284円(7月24日終値)で買う一方、日経平均コール・オプション(8月限)を170円で売り付けた場合のSQ時点での合成損益図を示している。手数料等、諸コストは勘案していない。
日経平均の日中変動率が0.38%まで縮小したことは逆に、日中変動率がより大きい場合よりも、相対的に10営業日後の上昇率が大きいという「平均像」になっています。この結果をオプション取引に生かすならば、「コールの買い」というのが基本的な戦略ではあります。
仮に日経平均オプション(8月限)・権利行使価格15,250円のコールを7月24日・日中終値170円で買い付け、SQまで保有した時、損益分岐点(諸コストは勘案しない)は15,420円(=15,250+170)となります。24日の日経平均終値は15,284円ですが、これが8月8日に15,420円以上になることにベットすることを意味する取引と言えます。狙い通り15,420円を超え、仮に日経平均がSQ算出日に15,500円ならば80円(=15,500-15,420)、15,750円ならば330円の利益が想定されます。無論、損益分岐点を下回る水準では損失となりますが、この場合、損失はコール・プレミアムの買い付け価格170円に限定されることになります。
ただ、残り10営業日程度となった現状では、それ程、大きな変動を期待すべきではないという考え方もできます。その場合、日経平均の現物株(ETFなど)を保有しつつ、コールの売りを重ね合わせた「カバードコール」も選択肢となります。
図2は、そうしたカバードコールの損益図になります。現物株については、日経平均を7月24日の終値15,284円で買い付け、コール・オプションは7月24日・日中終値170円で売り付けたとします。
カバードコールの魅力は何でしょうか。それは、損益分岐点を考えればわかりやすくなります。即ち、株価が下落する局面では、コールの売りによりプレミアム料が得られるため、その分損失が相殺されます。その損益分岐点は、日経平均買い付け価格15,284円から、コール・プレミアム170円を引いた15,114円になります。単純な現物株の買い付けや、上述したコールの買いに比べ、損益分岐点が低い分、プラス収益を得られる可能性は大きいといえます。
SQまで保有しない場合も、時間的価値の減少でコール価格は下がりやすくなりますので、その面でも利益は上がりやすいと言えます。ただし、株価が大きく上昇しても、利益が一定(ここでは136円)以上にはならないこと、株価が下げた場合は、その分損失は膨らみ、コールの買いのように損失限定とはならない点に注意が必要です。また、現物株とオプション取引の重ね合わせとなる分、実際のコスト計算に注意が必要です。
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