日経平均は年末に18,000円以上の「高値引け」も!?その訳は?
株式相場はなぜ反発に転じたのか? |
日経平均株価は12月8日に18,030円83銭まで上昇した後は急落。12月17日には一時16,672円94銭まで下落しました。しかし、その後は急反発に転じ、前週末の12月19日には、17,621円40銭と、10日の始値水準をほぼ回復しました。(図1参照)
急反発をもたらした最大の要因は、米国の金融政策を決定するFOMC(米連邦公開市場委員会)開催を受けて発表された18日のイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長による声明が、景気に配慮した内容になったからです。その中で、同議長は、FRBによる利上げは、「少なくとも今後数回の会合」ではないことを示唆しました。
市場では、今回のFOMCでは、好調な米国経済を反映し、「相当な期間低金利が維持される」という文言から「相当な期間」という表現(いわゆるフォワードガイダンス)が外され、市場で利上げタイミングの前倒しが意識され始めると、予想する市場参加者も少なくありませんでした。しかし、イエレン議長の声明を受け、市場では今後も当面は緩和的金融政策が続くとの安心感が強まり、NYダウが上昇し日本株もそれを受けて上昇しました。
ちなみに米国のNYダウは、12月5日に史上初の18,000ドル大台まであと9ドルの水準まで上昇していましたが、16日は17,067ドル59セントまで下落し、その後19日には、17,804ドル80セントまで反発する展開となりました。5日から16日までは、原油価格の急落を受け、エネルギー株への先行き不透明感や世界経済の減速懸念から株価も下げてきたと、考えられています。しかし、16日までの下げで、原油安はいったん織り込まれた形になりました。市場の落ち着きとともに、原油安は先進国経済にプラスの面も大きいことが認識され始め、そのことが米国、そして日本の株価反発に寄与しました。
図1:12月5日から17日まで下落した日経平均
- ※BloombergデータをもとにSBI証券から作成。
相場を左右するふたつのポイントについて考える。 |
日経平均は、戻り一巡後再び下落するでしょうか、それとも上昇基調をそのまま続けるでしょうか。
それを考える時に大きなポイントとなるのが、次の2点だと考えられます。
○12月16日〜17日のFRBでは何が変わったのか?
○今後も原油安は続くのか、その影響は再び出てくるのではないか?
FRBの金融政策について、「大きな変化は、実はなかった」と考える方が実態に近いように思われます。市場はこれまで、政策金利の引き上げは2015年半ば以降とみてきましたし、現在もそれは変わっていないように見受けられます。今回のFOMCが景気に配慮していたことは確かですが、2015年半ば以降の利上げを否定した訳ではないことも確かです。そもそも、原油価格の急落や世界株式の不安定化という環境下、FRBがそれらを無視したかのような態度をとること自体、もともと難しかったとみられ、FRBは市場の混乱期にふさわしい対応をしたということなのではないでしょうか。
一方、原油相場(WTI先物)は、週末の12月19日に反発したもの、依然50ドル台半ばで低迷しています。米シェール・オイルやサウジアラビア、ロシアといった、原油市場の主要プレーヤーの間で需給調整が進む兆しは見えていません。原油価格下落の背景に、原油市場におけるシェア争いが存在していることを考えると、原油価格下落のリスクは、今も残っていると考えられます。
ただ、図2をご覧いただければお分かり頂けるように、原油価格が下落すると、NY株(しいては日本株)が下落する傾向が強いという訳ではありません。原油価格が下がっていても、NY株が上昇していた期間も長くありました。むしろ、足元の相場では両者が連動する期間の方が短かったとみられます。原油価格の下落は、米国や日本にとり、プラス面とマイナス面があります。12月5日〜16日の期間は、FOMC接近でポジションを取りにくかったタイミングが重なり、マイナス面が織り込まれることになったと考えられます。そして、そのマイナス面の織り込みはいったん、一巡した可能性もありそうです。この章の冒頭の二点については、以下のようにまとめられそうです。
○引き続き市場は、米国の経済指標をひとつひとつチェックしながら、米金融政策の方向性を見極めてゆく
○原油安は続く可能性があるが、そのマイナス面は織り込みが進捗し、今後はプラス面が評価される可能性も大きい
図2:NYダウと原油先物相場(WTI)〜必ずしも連動している訳ではない
- ※BloombergデータをもとにSBI証券から作成。
日経平均は年末に18,000円以上の「高値引け」も!?その訳は? |
「サキモノのココがPOINT!」では、日経平均が今年の年末・大納会に再度18,000円台を回復し、いわゆる「高値引け」になる可能性も十分にあると考えています。理由は以下の3点です。
○原油安、消費税増税延期をテコに2015年の内需は回復が顕著となる可能性。
○企業業績は2014年度・15年度ともに2桁前後の増益を、市場は予想。
○長期安定政権への可能性が強まったことを過小評価すべきではない。
原油価格の下落は、産油国から原油消費国への所得移転を意味します。特に、原油や天然ガスのほぼ全量を輸入している日本にとってはメリットが目立ちます。価格高騰と円安による原油などの鉱物資源の輸入増分だけで、我が国の貿易収支は、2010年度から2013年度にかけ、10兆円も悪化しました。貿易・経常収支の悪化は国富の流出ですが、今それに歯止めがかかろうとしています。原油価格の値下がりは、輸入国にとり、減税と同様の効果を及ぼすと言われます。2015年の日本経済は、消費増税延期と原油安による効果で、消費や投資など内需が本格的に回復してくる可能性があります。年末にかけ、株式市場がそれを織り込んでゆく可能性は十分あるとみられます。
さらに、秋以降の円安の効果もあり、2014年度・15年度ともに、上場企業は増益が続きそうです。政府が検討を進めている法人税減税や、上記の原油安も多くの企業にとって追い風になります。大手調査機関の見方を総合すると、企業業績は10%前後の増益が続きそうです。
そして、過小評価できないのが、今回の2014年12月総選挙で、与党である自民・公明の議席が合計で3分の2を超え、政権の安定度が増したことです。2015年には4月に統一地方選挙がありますが、国政選挙は2016年7月頃の参議院選挙まで(再び解散・総選挙がない限り)ありません。この26日にちょうど2年を迎える「今回の」安倍内閣ですが、長期政権になる可能性が出てきました。政治の安定は、株式市場にとっては好材料となることが多く、特に長期資金の流入を促す材料となりそうです。
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