10月の株式市場は急変!〜下落局面に入るのか?底値は近いのか?
9月に8%上昇した後、10月は調整ムードが台頭、そのわけは?
9月の東京株式市場は予想外に堅調でした。日経平均の月間上昇率は8%に達しました。1年の月の中で過去30年間の平均騰落率が▲1.4%と「最低」の9月でしたが、東京五輪招致成功の朗報なども味方し、ジンクス破りの1ヵ月となりました。
しかし一転、9月30日に始まる週から、東京株式市場は明らかに変調をきたしています。10月7日の日経平均株価終値は9月27日(金)終値比で6.0%の下落と、9月の上昇分に迫る下落率となりました。9月が予想外の急上昇となり、その反動が表れた可能性があります。そしてそれ以上に、以下の2つの理由が、株価を下げる要因になっているとみられます。
(1)米国が9月末までに暫定予算を成立させることが出来なかったため、政府機関が一時閉鎖されることになり、経済への悪影響が懸念されるため。また、17日までに連邦債務上限が引き上げられなければ、米国がデフォルト(債務不履行)に陥る可能性があるため。
(2)10月1日に安倍首相が消費税率の予定通りの引き上げを決定するとともに、5兆円の経済対策実施で経済を下支えすることが決まったが、それで材料出尽くしになったため。
10月はじめの株式相場急変を受け、今後、相場をどう読むべきかは、まさに、これらの重要な2つの問題をどう読むべきかにかかっていると考えられます。
図1:日経平均株価(日足)の推移
弊社HPのチャートツールをもとにSBI証券投資調査部が作成
米国が「デフォルト」に陥る可能性は極めて低い〜典型的な「テールリスク」
前項でご説明しましたように、米政府機関閉鎖の長期化や、米財政の「デフォルト」が懸念されています。米国のデフォルトは、世界経済に重大な影響を与えますので、それをヘッジする場合は、先物売りやプットの買いが有効ということになります。しかし、結論から先に申し上げますと、「デフォルト」の可能性は極めて低いと考えられます。
連邦債務残高の上限をその都度、議会で決議するというのは、米財政上の構造的問題と言えるかもしれません。図2にもある通り、米国の債務上限は過去何回と引き上げられてきました。即ち、今回のようなケースは決して珍しいケースではないのです。また、リーマンショック後の景気回復と、減税打ち止め等により、米国の財政赤字は縮小傾向(図3)にあります。また、今後も、シェール革命の影響等で米国に製造業が回帰すれば、一層の財政改善が期待されます。即ち、米国の財政破綻を意味するデフォルトを考えることは、現実的とは言えなくなりつつあります。
そもそも、仮に10月17日が到来しても、それが即デフォルトを意味する訳ではありません。米財政当局のやりくりにより、当面をしのぐことは十分可能です。むしろ、警戒されるのは、それ故に、共和党と民主党の対立が17日までずれこみ、市場に不必要な狼狽が生じることかもしれません。その場合は、仮に一時的にせよ、株価が大きく動き、日経平均が200日移動平均を意識する水準まで突っ込む可能性も残ります。
図2:米国法定連邦債務上限(月次・兆ドル) 図3:米国月次財政収支(6ヶ月移動・10億ドル)
BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
米債務問題通過後は一転大幅高も〜10月中・下旬は意外に重要な転換点か
米国政府をデフォルトに追い込むようなことは、世界経済に悪影響を及ぼし、共和党・民主党議員にとってもメリットはないと考えられます。従って、10月17日よりも前に、連邦債務は引き上げられるというのがメインシナリオになりましょう。連邦債務が引き上げられるか、それに近い対策が取られれば、内外で株価は大幅反発する可能性があります。日経平均は目先調整傾向ですが、13,200円前後(または25日移動平均からのマイナス乖離が7%程度の株価水準)をメドに下げ止まり、反発するという展開をメインシナリオに考えたいと思います。なお、連邦債務上限引き上げと暫定予算の成立がずれる可能性もあり、この場合は、反発力が削られることになりましょう。
なお冒頭の(2)については、もともと消費税率引き上げについて、財政再建上不可欠という見方が中心であるものの、別の見方もあることが影響しています。即ち、アベノミクスの効果が不十分なうちに、消費税率を引き上げることは誤りとする意見があります。ただ、経済の悪化が短期間で金融危機につながりやすかった97年と比べれば、明らかに現在の方が、経済への悪影響が少なくてすむと考えられます。
表1は当面のタイムスケジュールです。米政務問題が未解決のタイミングで、SQを迎える可能性があるため、先物・オプションの投資家は十分な注意が必要です。即ち、何か突発的なニュースで株価が大きく動くケースもありますが、SQ接近の分、オプション・プレミアムは動きにくくなりますので、投資タイミングに非常に注意を要することになります。
15日からは日本の臨時国会が召集される予定です。そして17日は米債務上限引き上げの期限となります。この頃、米国の7〜9月、決算発表はピークを迎え、国内も企業業績に関心が向かう季節になります。日銀短観からも企業業績は改善が見込まれる状況です。即ち、10月中旬にかけ、仮に日経平均が下落基調を続けていれば、そこが当面の転換点になる可能性も大きそうです。
表1:2013年10月の主要タイムスケジュール
各種報道・BloombergデータをもとにSBI証券が作成。年月日は現地時間。各種予定は予告なしに変更される場合があるので注意。