日経平均は8月後半以降、急変する可能性も
「日経平均」が居心地の良い水準
日経平均株価は8月19日現在、13,758円になっています。また、本年4月以降、月足終値は、13,668〜13,860円と上下200円弱のレンジ内に収れんしています。さらに、各月の先物・オプションSQ値(特別清算値)を表に示しましたが、この5ヶ月のSQ値の単純平均は13,786円となっています。日経平均株価の現状の水準前後は、どうやら、「居心地の良い水準」となっているようです。
図は、この約1年間の日経平均株価の推移を日足で示したものです。野田前首相が解散・総選挙を表明した日の前日(2012年11月13日)に付けた安値8,619円45銭から、本年5月23日の取引時間中に付けた高値15,942円60銭まで85%上昇した後、6月13日に安値12,415円85銭を付けました。下落率は22%にも達しました。
ちなみに、この間の日経平均下落幅は3,526円75銭で、そこに「黄金分割」(本来あるべき美しい姿を作るとされる)比0.618をかけた2,179円53銭を、5月23日高値から引くと、13,763円31銭と計算できます。どうも、テクニカル的にみても、この水準は、日経平均が居心地の良さを感じる水準になっているようです。
また、8月相場は、2日に米雇用統計が発表された後、材料的にやや「夏枯れ」の様相を呈しています。8月中旬は、「お盆休み」がピークとなり、市場参加者も減少傾向となり、東証一部の売買代金は2兆円を切る日が続きました。このため、日経平均は一層「居心地の良い水準」前後での推移を余儀なくされたと捉えることができます。
(表)日経平均・月足と先物・オプションSQ値
日経平均公表データよりSBI証券が作成。8月は19日現在。
(図)日経平均株価(日足)
当社HPより、SBI証券投資調査部が作成。データは2013年8月19日現在。
8月下旬の大きな鍵は安倍政権の成長戦略か
株価が一見、居心地の良い水準での一進一退商状に転じたとき、投資家はどう考えるべきでしょうか。相場の空気からだけ判断するならば「当面は横ばい状態が続く」と考えてしまいがちです。しかし、相場のこう着状態が強まってきたことを「煮詰まってきた」と表現することがあります。相場の空気とは裏腹に、上下に急展開することも多いのが、相場の本質と言えます。
事実、8月後半には、市場に大きく影響を与え得る出来事も増えてきます。安倍政権は、アベノミクス「第3の矢」としての成長戦略の一環として「国家戦略特区」を設定する方針ですが、早ければ8月後半にも、対象としている都市(場所)が指定される可能性が出てきましたが、東京圏、大阪圏、愛知圏の3大都市圏(またはその一部)が有力視されています。
「国家戦略特区」では、容積率・用途規制の緩和や、外国人医師の診察解禁、雇用制度の柔軟化、公立学校運営の民間開放、空港発着枠の拡大等の規制緩和、成長戦略が実施されることになります。限られた地域とは言え、日本経済の屋台骨を背負うような地域が候補になっている訳で、方向性が明らかになれば、株式市場の期待は一気に高まる可能性があります。9月5日に、G20首脳会議が予定されていますので、安倍政権としても、「異次元の金融緩和」でもたらされた円安に理解を得る意味もあり、その取りまとめ・推進は重要であるとみられます。
ちなみに、9月7日にはIOC(国際オリンピック委員会)により、2020年の五輪開催地が決定される予定になっています。あまり、期待しすぎると反動がこわい所ですが、仮に決定されれば、東京には強い追い風が2種類吹くことになります。
これらから、8月後半以降の日経平均は、「国家戦略特区」構想を含む成長戦略の進展がみられた場合は、現在の「保ち合い」を上放れ14,500円〜15,000円に達する可能性も十分あると考えられます。半面、成長戦略に進展がなく、欧米・中国の経済指標で下振れがあれば、下値への波乱が生じる可能性も残ります。そろそろ、変動への「備え」を頭の片隅に置くべきタイミングと言えるかもしれません。
今後注目のイベント
・8月21日(水)この日まで安倍首相が夏休みの予定
→材料出にくく、小動きの可能性。
→逆に、休み明けから「成長戦略」論議が動く可能性。
・8月22日(木)(1)第19回TPP 交渉会合(ブルネイ 〜30 日)
→アベノミクス成長戦略への思惑で上昇の可能性も。
(2)中国・欧州でPMI(購買担当者指数)発表
※中国・欧州とも景気回復の兆しが表れており注目。
→中国については「48.2」を上回るか否かがポイント
・8月29日(木)米国GDP(4〜6月期)改定値。9月17〜18日のFOMCを控え重要。
速報値+1.7%から+2.2%へ「修正」がコンセンサス。