日経平均株価は3月第5週(3/28〜4/1)、前週末比488円86銭(1.7%)安と反落しました。3月第3〜4週である程度上昇した後となっている上、ウクライナから非常に惨い戦況が伝わり、足元は様子見気分の強い展開になっています。
そうした中、東京株式市場は新年度入りしました。再編された東京株式市場もスタートです。改めて、日経平均株価はいくらまで上昇する可能性があるのか、考えてみました。
日経平均株価は3月第4週(3/22〜3/25)に前週比1,322円41銭(4.9%)高と続伸した後、3月第5週(3/28〜4/1)は同488円86銭(1.7%)安と反落しました。
日経平均株価は3/9(水)の取引時間中安値24,681円74銭から、3/25(金)に取引時間中高値28,338円81銭まで急騰しました。
理由は、
(1)ウクライナとロシアの間で停戦交渉の動き
(2)米国株をはじめ海外株が堅調
(3)円安・ドル高が加速し、景気・企業業績の底割れ懸念が後退
(4)3/11(金)メジャーSQ、3/16(水)米FOMC、3/18(金)米トリプル・ウィッチング等の重要日程の進捗
(5)3月末が接近し、配当取りや、配当の再投資に絡む先物買い観測、「大学ファンド」買い観測等で需給が好転
等であると考えられます。
しかし、日経平均株価は3/25(金)に200日移動平均線を回復して目標達成感が台頭したことに加え、テクニカル的に過熱感が強まり、それ以降は伸び悩む展開になりました。それでも、配当取りの買い等が入る3/29(火)まではしっかりしていましたが、3/30(水)の「権利落ち日」以降は、買い一巡感が強まる展開になりました。
ドル・円相場についても、3月は米10年国債利回りの上昇を背景に、円安・ドル高基調となりましたが、市場が円安・ドル高が進む当面の限度のひとつと考えた「黒田ライン」に相当する1ドル125円まで進み、その後は一服となりました。このため、円安・ドル高を好感した買いも一巡しやすくなり、株価の頭を抑えました。
こうした中、4/1(金)からは「新年度相場」入りとなり、4/4(月)からは再編された東京株式市場での取引が開始となりました。非常に大きな節目が立て続けに訪れた形ですが、日経平均株価がある程度上昇した後となっている上、ウクライナから非常に惨い戦況が伝わり、足元はやや様子見気分の強い展開になっています。
図表1 日経平均株価およびNYダウの値動きとその背景
日経平均株価(終値) | 前日比 | NYダウ(終値) | 前日比 | 国内株式市場の動き | 米国株式市場の動き | |
3/28(月) | 27,943.89 | -205.95 | 34,955.89 | +94.65 | 反落。(10営業日ぶり) ・円が全面安となり、ドル・円相場は1ドル123円台に。 ・上海のロックダウンが嫌気され、外需関連株の売り材料に。 ・日銀が連続指値オペを初めて発動。金融緩和姿勢を改めて顕わにする形に。円安が加速し、相場を下支えした。 |
3営業日続伸。 ・上海ロックダウンによる需要悪化懸念で、原油価格が下落。一般消費財が買い戻される。 ・テスラが株式分割の承認要請意向を表明。8.3%高。 ・G7、ロシアからの要求である天然ガスのルーブル決済を拒否。 |
3/29(火) | 28,252.42 | +308.53 | 35,294.19 | +338.30 | 反発。 ・権利付き最終日で、配当取りの買いが入る。 ・前日のNASDAQの上昇を受け、グロース株が選好される。東証マザーズ指数は約3%高。 ・原油価格下落を受け、石油関連株が売られる。 |
4営業日続伸。 ・米2-10年債利回りが逆転し、逆イールド(短期金利>長期金利)現象が一時発生。 ・ロシアとウクライナの和平交渉に進捗がみられたとの報道があり、原油価格が下落。エネルギー株も連れ安。 ・リスクセンチメントの改善から全面高商状。(エネルギーは除く) |
3/30(水) | 28,027.25 | -225.17 | 35,228.81 | -65.38 | 反落。 ・3月期末の配当落ちで約236円の下げ。高配当銘柄と称される海運や金融が売られる。 ・日銀総裁と首相の会談が伝わり、一時1ドル121.3ドルまで円高に回復。 ・商品市場の一服とリスクセンチメント改善で、資源株全般が下落。 |
5営業日ぶりの反落。 ・ロシア大統領府からウクライナとの和平交渉に対し特段進展がなかった旨の発言があり、市場心理が悪化。 ・連騰の反動や、四半期末を控え手控え気味。 ・前週の原油在庫が大幅減少と発表。原油価格が上昇。 |
3/31(木) | 27,821.43 | -205.82 | 34,678.35 | -550.46 | 続落。 ・前日配当落ちで大きく下げていた、海運が買い戻され5.4%上昇。一方、金融は金利上昇加速観測の停滞感も加わり、依然売られる。 ・中国の3月PMIが市場予想が下回る等で経済指標が不芳。アジア株式市場の株安も重荷に。 |
大きく続落。 ・過去最大規模の石油備蓄の放出をバイデン大統領が発表。原油価格が大幅下落。 ・SEC委員長、中国ADR上場廃止回避のための合意が間近であるという観測を否定。中国ADRは全面安。 ・四半期末と翌1日には雇用統計の発表を控え、様子見姿勢に。 |
4/1(金) | 27,665.98 | -155.45 | 34,818.27 | +139.92 | 3営業日続落。 ・原油価格の下落で、資源株が総じて下落。 ・日銀短観は7期ぶりに製造業・非製造業共に悪化。売り材料に。 ・夜の米雇用統計の発表を控え、様子見気分が強まる。 |
反発。 ・3月雇用統計は堅調で、失業率も改善。利上げ観測が加速し、先物市場では5月FOMCでの50bpt幅の利上げが73%越え。 ・3月ISM製造業指数と2月建築支出が予想値下回り、嫌気。公益、不動産等のディフェンシブ株が買われる。 ・中国ADR全面高。上場維持に関して、中国当局の前向きな姿勢が報じられた。 |
4/4(月) | 27,736.47 | +70.49 | 34,921.88 | +103.61 | 反発。東証マザーズ指数が大幅高。 ・東証新市場区分での取引がスタート。 ・売買代金は約2兆1,870億円と手控え気味。 ・米SOX指数が続落し、半導体が売られる。 ・金利上昇一服で、マザーズ銘柄が買われる。 |
続騰。 ・VIX(恐怖)指数が約3ヶ月ぶりに18台まで低下。 ・原油価格が上昇。ロシアへ追加制裁の可能性が浮上した上、サウジアラビアが5月のアジア向け原油販売価格を引き上げた。 ・Twitterが27.1%高。テスラCEOによる9.2%の株式取得が伝わる。 |
- ※日経平均株価・NYダウ等各種株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年4月5日10:00 時点。
図表3 NYダウ
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年4月5日10:00 時点。
図表4 ドル・円相場
- ※当社チャートツールを用いて作成。データは2022年4月5日10:30 時点。
図表5 主な予定
月日 | 国・地域 | 予定 | 備考 |
4(月) | 日本 | 東証 新市場区分へ移行 | |
3月マネタリーベース | |||
米国 | 2月製造業受注 | ||
5(火) | 米国 | 2月貿易収支 | |
3月ISM非製造業景況指数 | 新規受注、雇用にも注意 | ||
6(水) | 米国 | FOMC議事録要旨(3/15-16) | |
7(木) | 日本 | ★決算発表 | イオン、7&iHD |
2月景気動向指数 | |||
8(金) | 日本 | 3月景気ウォッチャー調査 | 決算:安川電機(6506) |
10(日) | フランス | 大統領選挙第1回投票 | |
11(月) | 日本 | ★決算発表 | ローソン、高島屋 |
中国 | 3月生産者物価/消費者物価 | ||
12(火) | 日本 | ★決算発表 | ビックカメラ、Jフロント、東宝 |
ドイツ | 4月ZEW景況感指数 | ||
米国 | 3月消費者物価指数 | 前回は前年比+7.9% | |
13(水) | 日本 | 2月機械受注 | 民間設備投資の先行指標 |
★決算発表 | サイゼリヤ、吉野家HD | ||
中国 | 3月貿易収支 | ||
3月生産者物価指数 | |||
14(木) | 日本 | ★決算発表 | 良品計画、ファーストリテイリング |
欧州 | ECB定例理事会 | ||
米国 | 4月ミシガン大学消費マインド指数 | ||
☆決算発表 | シティG、GS、モルガン・スタンレー | ||
15(金) | 北朝鮮 | 故金日成主席の生誕記念 | |
米国 | 4月NY連銀製造業景況指数 | ||
3月鉱工業生産・設備稼働率 |
- ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
2022年 | ||
日銀金融政策決定会合 | 4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火) | |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) | |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
- なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。
図表7 日経平均株価採用銘柄の上昇率上位(3/28〜4/4)
コード | 銘柄 | 業種 | 株価(4/4) | 株価(3/28) | 騰落率(3/28〜4/4) |
9984 | ソフトバンクグループ | 情報・通信業 | 5,785 | 5,504 | 5.1% |
5541 | 大平洋金属 | 鉄鋼 | 4,375 | 4,190 | 4.4% |
2413 | エムスリー | サービス業 | 4,652 | 4,458 | 4.4% |
9107 | 川崎汽船 | 海運業 | 7,910 | 7,600 | 4.1% |
7733 | オリンパス | 精密機器 | 2,420.5 | 2,327.5 | 4.0% |
5101 | 横浜ゴム | ゴム製品 | 1,740 | 1,694 | 2.7% |
4911 | 資生堂 | 化学 | 6,299 | 6,134 | 2.7% |
6702 | 富士通 | 電気機器 | 18,810 | 18,405 | 2.2% |
6861 | キーエンス | 電気機器 | 58,170 | 56,990 | 2.1% |
6701 | 日本電気 | 電気機器 | 5,260 | 5,160 | 1.9% |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※3/28終値を4/4終値と比較し、値上がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。
図表8 日経平均株価採用銘柄の下落率上位(3/28〜4/4)
コード | 銘柄 | 業種 | 株価(4/4) | 株価(3/28) | 騰落率(3/28〜4/4) |
5411 | ジェイ エフ イー ホールディングス | 鉄鋼 | 1,658 | 1,843 | -10.0% |
8309 | 三井住友トラスト・ホールディングス | 銀行業 | 3,939 | 4,300 | -8.4% |
5401 | 日本製鉄 | 鉄鋼 | 2,107 | 2,276.5 | -7.4% |
9101 | 日本郵船 | 海運業 | 10,300 | 11,110 | -7.3% |
9147 | NXホールディングス | 陸運業 | 8,150 | 8,770 | -7.1% |
8053 | 住友商事 | 卸売業 | 2,074.5 | 2,221.5 | -6.6% |
5019 | 出光興産 | 石油・石炭製品 | 3,295 | 3,510 | -6.1% |
7270 | SUBARU | 輸送用機器 | 1,898 | 2,017.5 | -5.9% |
4005 | 住友化学 | 化学 | 551 | 585 | -5.8% |
9531 | 東京瓦斯 | 電気・ガス業 | 2,227 | 2,359 | -5.6% |
※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。
※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。
※3/28終値を4/4終値と比較し、値下がり率の大きい日経平均採用10銘柄を掲載。
東京株式市場は新年度入りしました。改めて、日経平均株価はいくらまで上昇する可能性があるのか、考えてみました。
そもそも、株価は予想EPS(1株利益)と予想PERの掛け算であると考えられます。したがって、日経平均株価の計算式は以下のようになります。
(日経平均株価)=(日経平均予想EPS)×(同予想PER)
図表1にもあるように、4/1(金)の場合は以下のようになっています。
(日経平均株価)27,665円98銭=(予想EPS)2,083円28銭×(予想PER)13.28倍
ここで、「予想EPS」の増減は、日経平均採用企業(≒日本を代表する企業群)の業績の方向感を示すと考えられます。図表9において、水色・青色・紫色の線が2020年6月頃に下がっているのは、業績の方向感が、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に急速に悪化したことを示しています。そして、2022年6月以降は、これらの線がほぼ横ばいになっています。これは、企業業績の方向感について強弱感が対立していることを示しています。
ちなみに、同じ予想EPSでも、予想PERが異なれば日経平均株価も異なります。4/1(金)の予想EPSは2,083円28銭ですが、仮に株式市場が日経平均株価を予想PER14.5倍で評価された場合、
(予想EPS)2,083円28銭×(予想PER)14.5倍=(日経平均株価)30,207円56銭・・・(A)
となり、予想PER12.5倍で評価された場合、同様の計算式で日経平均株価は以下の通りになります。
(予想EPS)2,083円28銭×(予想PER)12.5倍=(日経平均株価)26,041円00銭・・・(B)
同じ利益に対し、(A)の方が高い倍率になっているということは、それだけ、市場の心理状態が「強気」であると考えてよいでしょう。そうした市場の心理状態に作用するのが、日経平均採用銘柄を取り巻く景況感であると言えます。
すなわち、図表9において、水色・青色・紫色の線が上に行くのか、下にいくのか、その方向感は非常に重要であると考えられます。ちなみに、日経平均採用銘柄の予想純利益(※注1)は今期152%増の後、来期8.4%増の見通しです。また、4/1(金)に発表された日銀短観では、大企業・製造業の業況判断指数が、12月調査の+17から、3月は+14と減速し、さらに先行きは+9になる見通しです。
企業業績を取り巻く環境は不透明感が強まっており、予想EPSは横ばい、または減少に陥る可能性もありそうです。このため、予想EPSは現状(4/1現在 2,083円28銭)から大きく増えない可能性もあり、仮に予想PERが昨年5/15(3月決算企業の業績予想がおおむねすべて2022/3期を対象に更新されるタイミング)以降の最高水準である14.95倍で評価されても、
(予想EPS)2,083円28銭×(予想PER)14.95倍=(日経平均株価)31,145円03銭
を上限に、日経平均株価は推移する可能性が大きそうです。
※注1 日経平均の予想純利益とその増減率は、再来期までの市場コンセンサスが公表されている222社の予想純利益(市場コンセンサス)をベースに計算されています。
図表9 日経平均株価(日足)と予想PER10.5倍、12.5倍、14.5倍相当ライン
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。たとえば、「PER10.5倍」の線は、「仮にその日に、日経平均株価が、当日の予想EPSを10.5倍した水準まで買われた場合、日経平均がいくらかを示しています。「PER12.5倍」、「PER14.5倍」についても、同様です。