足元の東京株式市場は落ち着きを取り戻しはじめた様に見えます。
日経平均株価は8/20(金)に27,013円25銭の年初来安値を付けましたが、8月第4週(8/23〜8/27)は週足ベースで2.3%反発しました。
では、9月相場はどう予想すべきでしょうか。
9/11(土)はアメリカ同時多発テロ(2001年)から20年。また、9月はリーマンショック(2008年)が起きた月でもあり、波乱のイメージが強くありますが、本年の物色対象はどう考えるべきでしょうか。
日経平均株価は、8月第4週(8/23〜8/27)終値が27,641円14銭、前週末(8/20)比で627円89銭(2.3%)高、週足ベースで反発となりました。
米株高を追い風に上昇した一方、アフガニスタンでの自爆テロによる地政学リスクの高まりなどが重荷に。こうした中、SOX指数が上昇基調となり、東京エレクトロン(8035)など日本の半導体関連銘柄も買われる展開となりました。
この他、海運株も総じて高い状況が続いており、8/31(火)には商船三井(9104)が年初来高値を更新しました。
一方、NYダウは8月第4週(8/23〜8/27)終値が前週末比1.0%高、週足ベースで反発となりました。
8/25(水)はワクチン接種の加速期待や、3.5兆ドルを支出する予算案が下院で可決されたことなどを受けて上昇。S&P500指数は5日続伸となり、連日で過去最高値を更新しました。
8/26(木)はジャクソンホール会合を控えて様子見気分となる中、アフガニスタンで自爆テロが発生し、下げ幅を拡大しました。
8/27(金)はジャクソンホール会合で、パウエルFRB議長がテーパリングの開始時期は年内が妥当とする一方、早期での利上げ観測を否定。安心感が広がり、米10年国債利回りが低下、株価を押し上げました。米主要3指標が揃って上昇し、ナスダックが過去最高値を更新。S&P500指数は初めて節目の4,500を上回りました。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
8/24(火) | 27,732.10 | 237.86 | ファイザーのワクチンが米国で新型コロナウイルスワクチンとして初めて正式承認され、ワクチン接種加速に期待感。景気敏感株が高く、東エレクなど半導体関連株も上昇。 |
8/25(水) | 27,724.80 | -7.30 | 3日ぶりに反落。米株高を追い風に上昇も、前日までに700円超上昇していたため、利益確定売りに押された。 |
8/26(木) | 27,742.29 | 17.49 | 東京エレクトロンなど半導体関連銘柄の一角が上昇。ジャクソンホール会議を控え、様子見の投資家もいて上値は重い。 |
8/27(金) | 27,641.14 | -101.15 | FRBの早期テーパリング観測が高まったことなどから、米株高が一服し、下げ幅は一時260円まで広がった。アフガニスタンで地政学リスクがさらに高まったことも悪材料の1つ。 |
8/30(月) | 27,789.29 | 148.15 | 8/13以来、およそ半月ぶりの高値。米株主要3指数が揃って上昇し、追い風に。一方、米など経済指標の発表を控え、上値は限られた。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/8/31時点。
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/8/31時点。
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/8/31時点。
図表5 当面の主な予定
月日 | 国・地域 | 予定 | 備考 |
8/30(月) | 日本 | 7月商業動態統計 | |
アメリカ | 7月中古住宅販売仮契約 | ||
★決算発表 | ズームビデオコミュニケーションズ | ||
8/31(火) | 日本 | 7月鉱工業生産 | |
7月失業率・有効求人倍率 | |||
中国 | 8月製造業PMI・非製造業PMI | ||
アメリカ | 8月CB消費者信頼感指数 | ||
アフガニスタン米駐留軍撤退期限 | |||
★決算発表 | クラウドストライクホールディングス | ||
9/1(水) | 日本 | 4-6月期法人企業統計 | |
デジタル庁創設 | |||
★決算発表 | 伊藤園 | ||
中国 | 8月Caixin製造業PMI | ||
アメリカ | 8月ISM製造業景況指数 | 米国企業の景況感は? | |
8月ADP雇用統計 | |||
★決算発表 | オクタ、シースリーエーアイ | ||
9/2(木) | 日本 | 8月マネタリーベース | |
ロシア | 東方経済フォーラム(〜4日ウラジオストク) | ||
アメリカ | 7月貿易収支 | ||
7月製造業受注 | |||
★決算発表 | ドキュサイン、ブロードコム | ||
9/3(金) | アメリカ | 8月雇用統計 | 市場コンセンサスは雇用者数+77.5万人 |
8月ISM非製造業景況指数 | |||
9/6(月) | アメリカ | 休場(レーバーデー) | 米国の「夏休みシーズン」が終了 |
失業給付上乗せ、全州で終了 | |||
9/7(火) | 日本 | 7月毎月勤労統計調査 | |
7月家計調査 | |||
7月景気動向指数 | |||
中国 | 8月貿易収支 | ||
ドイツ | 9月ZEW景況感指数 | ||
9/8(水) | 日本 | 4-6月期実質GDP確報値 | |
8月景気ウォッチャー調査 | |||
アメリカ | ベージュブック | ||
JOLT求人件数 | |||
★決算発表 | オラクル | ||
9/9(木) | 日本 | 8月マネーストック | |
★決算発表 | 積水ハウス | ||
中国 | 8月生産者・消費者物価 | ||
資金調達総額(15日までに発表予定) | |||
ヨーロッパ | ECB定例理事会 | ||
アメリカ | 失業保険申請件数 | ||
★決算発表 | Zスケーラー | ||
9/10(金) | 日本 | メジャーSQ算出日 | |
エルニーニョ監視速報 | |||
アメリカ | 8月生産者物価 |
- ※各種報道、WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定
2021年 | 2022年 | |
日銀金融政策決定会合 | 9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) | 1/18(火)、3/18(金)、4/28(木)、6/17(金)、7/21(木)、9/22(木)、10/28(金)、12/20(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) | 1/26(水)、3/16(水)、5/4(水)、6/15(水)、7/27(水)、9/21(水)、11/2(水)、12/14(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) | 1/20(木)、3/10(木)、4/14(木)、6/9(木)、7/21(木)、9/8(木)、10/27(木)、12/15(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は現地時間を基準に記載しています。
9月の日経平均株価は上昇する可能性が大きいと予想します。
その大きな理由は以下の4点です。
(1)米国株の上昇が期待されること
米国の「カネ余り相場」が続くと考えられるためです。
8/28(土)に行われたジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が、テーパリング(量的緩和の縮小)の年内開始を示唆。仮にテーパリングが早期に行われても市場では織り込み済みとなりそうです。ただし、パウエルFRB議長のハト派的発言は覆る可能性もあるため、注意が必要でしょう。
(2)近年の9月相場は上昇する傾向にあること
過去30年の統計で9月の平均騰落率は-0.5%になるため、9月相場の上昇は当てはまらないという反論もできます。
ただ、過去30年の統計は1991〜2020年の平均となり、金融危機(1998年・-5.0%)、同時多発テロ(2001年・-8.8%)、リーマンショック(2008年・-13.9%)等、歴史的な波乱が数多く含まれます。
一方、過去10年の統計では、2011〜2020年の平均となり、+1.4%と堅調です。
特に直近は2017年+3.6%、2018年+5.5%、2019年+5.1%、2020年+0.2%と上昇傾向が続いています。9/6(月)のレーバーデー(休日)を過ぎると、夏休みから戻った外国人投資家が増え、売買代金が膨らむ傾向にあります。米国市場が好調な今年ならば、日本株の出遅れが注目される可能性もありそうです。
(3)テクニカル的に、25日移動平均線に下げ止まりの兆しがみえること
冒頭の図表2を見ても明らかなように、当面の相場の方向感を示唆する25日移動平均線が下げ止まり、上昇の兆しをみせています。今後、株価がさらに上昇してくれば、25日移動平均線の上昇角度がより鋭くなり、さらに同移動平均線よりも上に日々線が動くと、より強い「買いシグナル」になるとみられます。
(4)新型コロナウイルスの感染拡大がピークアウトする可能性
海外を例にみると、新型コロナウイルスの新規感染者数がピークを付けてからピークアウトするまではおよそ2〜3ヵ月程度とみられます。日本の新規感染者数は現時点で8/20(金)前後がピークとなっている模様で、9月下旬にはピークアウトの兆しがみえてくる可能性があります。ただし、依然として医療提供体制はひっ迫しており、油断は禁物です。
リスク要因としては、米インフレ率の高止まり、新型コロナウイルスの感染拡大(新学期の開始等を無事乗り切れるか否かがポイントか)、アフガニスタン情勢の深刻化、トヨタの生産調整の影響等が挙げられます。
物色的には、「リベンジ消費」の期待で陸運、空運、サービス等の押し目買いを考えたいところです。
9月の株主優待や配当を着実に享受して「秋相場」に備える手もありそうです。
なお、米国ではフィンテック関連銘柄が物色されており、日本でも注目テーマの1つとなりそうです。
図表7 日経平均株価の月別平均騰落率
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。過去10年・30年間の騰落率を単純平均した数値をグラフ化。8月は2021/8/30(月)終値を2021年8月の騰落率、9〜12月は2020年までの数値で算出。 ※上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。