5月第2週(5/10〜5/14)の東京株式市場は実に荒っぽい展開となりました。
特に5/11(火)〜5/13(木)の日経平均株価は3日間で計2,070円も下落しました。米国で消費者物価上昇率が予想を上回る大幅上昇となり、長期金利が上昇。ハイテク株を中心に株価が大きく下げた流れが東京株式市場にも波及し、波乱の展開となっています。
そうした中、東京市場では決算発表シーズンがほぼ終了しました。
日経平均採用銘柄の今期業績は大幅増益見通しで、それを織り込むならば、株価は上昇基調となりそうです。
その一方で、注意すべき点とは!?
日経平均株価は、5月第2週(5/10〜5/14)終値が28,084円47銭となり、前週末(5/7)比で1,237円35銭(4.3%)安、週足ベースでは反落となりました。
5/11(火)は節目の29,000円を下回り、4営業日ぶりに大幅反落。米国での長期金利上昇によるハイテク株安が重荷となり、ソフトバンクG(9984)などの値がさ株が指数を押し下げました。
5/12(水)も大幅に続落。一時700円超も下げ、節目の28,000円を下回る場面もありました。新型コロナウイルスの封じ込めに成功してきた台湾でクラスターが発生。台湾株が急落したことなどで、売りが優勢となりました。
5/14(金)は4日ぶりに反発。5/11〜5/13までの3日間で2,000円超も急落した反動から自律反発狙いの買いや、買い戻しなどが優勢となり、一時、上げ幅は700円に迫りました。
5月第2週(5/10〜5/14)のNYダウは前週末比1.1%安、週足ベースで反落となりました。
5/12(水)は3日続落。下げ幅は一時700ドル超となりました。消費者物価指数が市場予想を大幅に上回ったことから、米長期金利が1.69%台まで上昇。マイクロソフトなどハイテク株が下げ、景気敏感株にも売りが広がりました。
5/14(金)は米長期金利の上昇が一服し、続伸。米疾病対策センターが新型コロナウイルス向けワクチンの接種完了者に対し、マスク着用義務の解除を示唆し、経済正常化期待が高まりました。
トヨタが上場来高値を更新
5/12(水)の後場に行われたトヨタ自動車の決算発表では、2022年3月期の純利益予想を2%増とし、過去最高益だった2018年3月期以来の高水準となる見込みです。5/18(火)はおよそ6年2ヵ月ぶりに過去最高値を更新。保守的な業績見通しに対し、業績予想の上方修正を見込む買いが優勢となっている模様です。
なお、5/11(火)付のSBI証券 企業調査部長 遠藤のアナリストレポートによりますと、中国の新車販売台数が昨年4月以降、13ヵ月連続でプラスを維持。2021年4月の中国の自動車販売状況で、トヨタは4月としては過去最高を更新したとしています。
図表1 日経平均株価の値動きとその背景
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
5/11(火) | 28,608.59 | -909.75 | 4日ぶりに反落。下げ幅は2/26以来の大きさに。ソフトバンクGなど、値がさ株を中心に売られる。 |
5/12(水) | 28,147.51 | -461.08 | 大幅続落。終値としてはおよそ3ヵ月ぶりの安値。新型コロナウイルスが要因と見られる台湾株の急落などが売り材料となった模様。 |
5/13(木) | 27,448.01 | -699.50 | 終値で、節目の2万8000円を下回るのは1/29以来。米ハイテク株売りにより、ソフトバンクGや半導体関連が安い。 |
5/14(金) | 28,084.47 | +636.46 | 4日ぶりに反発。前日までの3日間で2,000円超も急落していたため、自立反発狙いの買いが先行。 |
5/17(月) | 27,824.83 | -259.64 | 値上がり銘柄数と値下がり銘柄数が拮抗。東京エレク、ファストリなど値がさ株が安い。先週末に好決算を発表したヤマハ発が高い。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図表2 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/5/18取引時間中。
図表3 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/5/18時点。
図表4 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとに作成。データは2021/5/18時点。
図表5 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | 備考 |
5/19(水) | 香港・韓国 | 休場 | |
アメリカ | FOMC議事録(4月27、28日分) | ||
★決算発表 | ターゲット、ロウズ、シスコシステムズ | ||
5/20(木) | 日本 | 4月貿易統計 | |
★決算発表 | 東京海上HD、SOMPOホールディングス | ||
アメリカ | 5月フィラデルフィア連銀景気指数 | ||
★決算発表 | アプライドマテリアルズ、ロスストアーズ | ||
5/21(金) | 日本 | 4月消費者物価指数 | |
アメリカ | 4月中古住宅販売件数 | ||
★決算発表 | プラグパワー、ディア | ||
5/24(月) | 日本 | 東京・大阪で大規模ワクチン接種センター開設予定 | |
アメリカ | 4月シカゴ連銀全米活動指数 | ||
5/25(火) | ドイツ | 5月IFO景況感指数 | |
アメリカ | 4月新築住宅販売件数 | ||
5月CB消費者信頼感指数 | |||
5/26(水) | 日本 | 4月企業向けサービス価格指数 | |
アメリカ | ★決算発表 | オクタ、エヌビディア | |
5/27(木) | アメリカ | 1-3月期GDP改定値 | |
4月耐久財受注 | |||
4月中古住宅販売仮契約 | |||
★決算発表 | セールスフォースドットコム、コストコホールセール | ||
5/28(金) | 日本 | 4月失業率・有効求人倍率 | |
アメリカ | 4月個人所得・個人支出 |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。
図表6 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2021年 | |
日銀金融政策決定会合 | 6/18(金)、7/16(金)、9/22(水)、10/28(木)、12/17(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/16(水)、7/28(水)、9/22(水)、11/3(水)、12/15(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/22(木)、9/9(木)、10/28(木)、12/16(木) |
- ※日米欧中銀WEBサイトを基にSBI証券が作成。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。 なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しています。日付は日本時間(ただし、ECBの結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
3月決算企業を中心とする決算発表は保険大手等を除き、おおむね終わりました。
決算発表が終了すると、日経平均採用銘柄の83%の企業で、「今期予想純利益」の対象が2021/3期から2022/3期に交替します。なお、2022/3期は業績回復を見込む企業が多く、それを反映した日経平均予想EPS(1株利益)は上昇傾向になっています。
図表7は日経平均株価と、その予想EPSの推移をグラフにしたものです。
予想EPSは2019/7/25(木)に1,795円まで上昇した後、新型コロナウイルスの感染拡大で2020/5/18(月)550円まで下落。2021/5/14(金)に1,950円となり“過去最高”を更新し、失った分を一気に回復しました。
図表にはありませんが、日経平均株価の予想PERも、2020/5/19(火)の36.9倍から、2021/5/14(金)には14.4倍まで低下し、一時の割高感が大幅に解消されています。
ただし、この過去最高記録には“注意が必要”です。
それは、日経平均株価やその予想EPS等の計算に大きな影響を与えることが多い、ソフトバンクグループ(9984)の業績変動が大きいためです。同社の最終損益は2020/3期に9,615億円の赤字に沈んだ後一転、2021/3期は4兆9,879億円となり、日本企業では過去最高の純利益をたたき出しました。
これに対し、会社公表ベースの2022/3期の業績予想は、“未定”となっています。
日経平均株価の予想EPS等に使われる予想数値と、市場のコンセンサスの間には「兆単位」の差があり、どちらの数字を採用するかで割高感・割安感のイメージが大きく異なります。
ご参考までに、ソフトバンク(9984)を除いた224社の合計数値で計算(5/14時点)すると、今期予想純利は会社予想ベース(注1)で36%増、市場コンセンサスベース(注2)で43%増と計算されます。今期予想増益額の大きい順で銘柄を並べれば、JR東日本(9020)、ANAホールディングス(9202)、日産自動車(7201)、住友商事(8053)、三菱自動車工業(7211)、JR東海(9022)と続いています。
前期、新型コロナウイルスの影響により、大敗した銘柄がどこまで業績を回復させるか。
そこが今期業績の最大のポイントとなりそうです。
注1・・・日経平均採用銘柄の今期会社予想純利益(会社予想がなければ市場コンセンサス、それもなければ前期実績)を合計した数値。
注2・・・日経平均採用銘柄の今期市場コンセンサスベースの予想純利益(市場コンセンサスがなければ会社予想、それもなければ前期実績)を合計した数値。
図表7 日経平均株価と、その予想EPSの推移
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。 期間2016/5/17〜2021/5/14