株式市場は4月第2週から第3週にかけ、世界的に上昇基調となっています。新型コロナウイルスの新規感染者数がピークアウトしてきた可能性が大きく、米国等では経済活動再開に向けた動きも出始めています。ただ、米国原油先物市場の波乱や、北朝鮮をめぐる報道等を背景に、4月第4週は売り先行の展開となっています。
こうした中、遅ればせながら、我が国の新型コロナウイルスの新規感染者数もピークアウトの様相を呈し始めています。今後、その傾向が次第に明確になってくれば、株価の反発局面は案外長続きするかもしれません。ただ、リスク要因も残っています。
4月第3週(4/13〜4/17)の東京株式市場は反発基調が継続しました。この週の米国株が前週に続き堅調な動きとなり、日本株にも追い風となりました。
新型コロナウイルスの感染が、世界で最も大規模になっている米国では4/17(金)時点の同ウイルス感染者数が70万人弱となり、これによる死者数も3万6千人を超えました。致死率(感染者数に占める死亡者数の比率)もじりじりと上昇を続け、5%を超えてきています。院内感染者や高齢者施設での感染拡大はより深刻な問題となっています。
ただ、新型コロナウイルスの新規感染者数は、4/3(金)〜4/10(金)に約2万2千人増でしたが、4/10(金)〜4/17(金)には約2万人増とようやく減少に転じました。米トランプ大統領は4/15(水)夜に、新型コロナウイルスの感染者数拡大がピークアウトしたと表明し、感染者数の少ない地域から経済活動を再開させる方針を明らかにしました。米国株式市場はこうした流れを好感して上昇しました。
なお、この週に発表された同国の経済指標等は目を覆いたくなるほどひどい数字のものが多く、決算発表が実施された銀行では貸倒引当金の積み増しが目立ちました。前週(4/6〜4/10)にS&P500が1974年以来の大幅高(週足ベース)となった直後で利益確定売りが出やすかったこともあり、その分上昇ピッチはマイルドなものになりました。
堅調な米国市場からの追い風を受け、結局、4月第3週末の日経平均株価は前週末比398円76銭(2.0%)高の「続伸」となりました。4/14(火)終値時点で3/25(水)に付けた小天井である19,564円(取引時間中高値)を上回り、チャートでは底値が確認されました。一目均衡表的にも形状の改善がみられ、下値不安が後退した形になっています。
なお、4月第4週は売りが先行する展開になっています。第2〜第3週の上昇で利益確定売りが増えてきたことや、4/20(月)の米国市場でWTI先物価格がマイナスとなる異常な取引が成立したこと(この点についてはマーケットフラッシュをご参考ください)、複数の報道で北朝鮮の金正恩委員長の重病説が流布(真偽は不明)されたこと等が影響していると考えられます。
表1 日経平均株価の値動きとその背景(2020/4/13〜2020/4/21)
日経平均株価 | 日米株式市場等の動き | ||
終値 | 前日比 | ||
4/13(月) | 19,043.40 | -455.10 | 新型コロナウイルスの国内感染拡大が加速。中国でも再び3桁の増加。 |
4/14(火) | 19,638.81 | +595.41 | 米半導体株高が追い風。業績悪化のソフトバンクが売り先行後切り返す。 |
4/15(水) | 19,550.09 | -88.72 | 米銀の貸倒引当金増加を受け銀行株が下落。5G関連銘柄が逆行高。 |
4/16(木) | 19,290.20 | -259.89 | 小売売上高、鉱工業生産等が歴史的な悪化となり米国株が下げた流れ。 |
4/17(金) | 19,897.26 | +607.06 | 米大統領が感染少ない地域から経済活動を再開する意向。 |
4/20(月) | 19,669.12 | -228.14 | 先週末に大幅高した反動。米株先物が下落。 |
4/21(火) | 19,280.78 | -388.34 | WTI原油先物市場で「マイナス」の取引が成立。北朝鮮金委員長が重病との報道も。 |
- ※日経平均株価データ、各種資料をもとにSBI証券が作成。
図1 日経平均株価(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2020/4/21取引時間中。
図2 NYダウ(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2020/4/20現在。
図3 ドル・円相場(日足)と主要移動平均線・おもな出来事
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2020/4/20現在。
表2 当面の重要スケジュール
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
4/20(月) | 日本 | 3月貿易統計 | |
米国 | ☆決算発表〜IBM | ||
4/21(火) | 米国 | 3月中古住宅販売件数 | 米住宅市場の趨勢は? |
米国 | ☆決算発表〜ネットフリックス、TI | ||
4/23(木) | 日本 | ★決算発表〜中外薬、ディスコ、キヤノン | |
- | ラマダン | イスラム世界「断食月」に | |
米国 | ☆決算発表〜インテル | ||
4/24(金) | 日本 | ★決算発表〜アドバンテスト、ファナック | |
ドイツ | 4月Ifo景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に景況感をアンケート | |
米国 | 3月耐久財受注 | 米設備投資の先行指標 | |
米国 | ☆決算発表〜アマゾン、アメックス、ボーイング、FB | ||
4/26(日) | 日本 | 衆議院静岡4区補欠選挙 | |
4/27(月) | 日本 | ★決算発表〜花王、第一三共、日東電、JR東海 | |
4/28(火) | 日本 | 日銀金融政策決定会合議事結果発表/展望レポート | |
日本 | 3月失業率・有効求人倍率 | 日本の労働市場も正念場に? | |
日本 | ★決算発表〜信越化、NEC、富士通、JR東、ヤマトHD、NTTドコモ | 半導体、5Gの先行きは? | |
米国 | ☆決算発表〜キャタピラー、フォード、スターバックス | ||
4/29(水) | 日本 | ◎東京市場は休場(昭和の日) | |
米国 | 1〜3月期GDP(速報) | 市場コンセンサスは−8%前後か? | |
米国 | ☆決算発表〜GE、マイクロソフト、クアルコム | ||
米国 | FOMC結果発表(日本時間30日未明) | ||
4/30(木) | 日本 | 3月鉱工業生産 | |
日本 | ★決算発表〜日電産、デンソー、村田製、東エレク | ||
中国 | 4月製造業PMI | ||
欧州 | ECB理事会 | ||
米国 | ☆決算発表〜アップル、マクドナルド | ||
5/1(金) | 米国 | 4月ISM製造業景況指数 |
表3 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2020年 | |
日銀金融政策決定会合 | 4/28(火)、6/16(火)、7/22(水)、9/17(木)、10/29(木)、12/18(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 4/29(水)、6/10(水)、7/29(水)、9/16(水)、11/5(木)、12/16(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 4/30(木)、6/4(木)、7/16(木)、9/10(木)、10/29(木)、12/10(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合があります。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表3の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
図4は、前回もご紹介した世界の新型コロナウイルス新規感染者数および感染者増加率を日次で追ったものです。一般的に、感染者増加率がピークアウトしてくれば、その後に新規感染者数のピークアウトも期待できると考えられます。
事実、新型コロナウイルス感染者の増加率はすでに3/21(土)にピークを打っており、続いて新規感染者数は4/10(金)にピークアウトとなったようです。最も感染者数の多い米国でも新規感染者数がピークアウトした模様(4/15に米トランプ大統領が記者会見で表明)で、世界的にもピークアウトの様相が強まっています。
なお、米国では感染者の増加率がピークアウトしたことを確認するかのように、NYダウは3/23(月)を安値に反発局面になっています。我が国はこれに若干先行する3/19(木)が日経平均株価の当面の安値になっています。日本株は世界の感染者動向を意識して動いてきたと考えられます。
ちなみに、直近安値からの上昇率は最大で、日経平均株価が約21%、NYダウが約33%となっています。日経平均株価の戻りの方が鈍い理由は、本年高値から直近安値までの下落率について、日経平均株価の方が小さかったこと(日経平均株価が約32%、NYダウは約38%)に加え、日本の新型コロナウイルス感染者の増加率がなかなかピークアウトしなかったことが影響していると考えられます。
図5は、日本における新型コロナウイルスの新規感染者数および感染者増加率の推移をみたものです。しばしば我が国では、3/20(金)〜3/22(日)の3連休に「自粛のゆるみ」があったと指摘されますが、事実、その1〜3週間後に相当する3/29(日)〜4/12(日)には、1日当たり平均10.6%も新型コロナウイルス感染者数が増え、その結果としての新規感染者数も増加傾向となりました。この間、政府の対策や国民の自粛をめぐる意見の対立が数多くみられ、国内のニュースフロー的には、暗いものが多かったとの印象です。ただ、それに反して株価は、世界の新型コロナウイルス感染動向を横目に見ながら、落ち着きを取り戻し始めたという経緯があります。
しかし、4月以降の自粛ムードの復活もあり、図5でも明らかなように、我が国における新型コロナウイルスの感染者増加率は1ケタ台に低下し、新規感染者数も減少傾向になっています。治療薬の治験も進展している模様で、先行きは新型コロナウイルスの感染を封じ込めることができる可能性も強まっており、真っ暗だったトンネルの先に薄明かりが見えるようになってきたように感じられます。
今の所、各種メディアからは日本の新規感染者数がピークアウトした可能性についての報道はあまりみられせんが、実際の新規感染者はピークアウトしたとみられ、我が国の株式相場は案外、今後も堅調に推移する可能性がありそうです。チャート形状の改善等も加味すれば、日経平均株価が2万円を回復しても不思議ではないと思います。
意外に、株価がいったん戻り一巡となるのは、メディア等が新規感染者数のピークアウトについて報道を始めた頃かもしれません。また、米国で一部経済活動再開の計画があるようですが、一歩タイミングを誤ると、新型コロナウイルスの感染が再び加速するリスクもあり、油断は禁物であるとみられます。また、3/20(月)にWTI先物価格がマイナスになったように、我々が予期していなかったような悪材料が出てくる可能性も、指摘されます。
図4 新型コロナウイルスの新規感染者数および感染者増加率の推移(日次・世界)
- ※報道等をもとにSBI証券が作成。数字はしばしば過去にさかのぼって変更されることがあります。
図5 新型コロナウイルスの新規感染者数および感染者増加率(日次・日本)
- ※報道等をもとにSBI証券が作成。数字はしばしば過去にさかのぼって変更されることがあります。