日経平均株価は6月、週足で4週連続の上昇となり、月末終値は前月末比674円73銭(3.3%)の上昇となりました。これに続く7月第1週は前週比470円46銭(2.2%)高となり、週足の上昇はこれで5週連続となりました。
ただ、7月第2週は上昇一服の兆しも出ています。また、米国株の主要指数が史上最高値を更新しているのに対し、日本株は出遅れているとの指摘があります。では、なぜそう感じるのでしょうか。米国株の上昇の背景には金融緩和期待がある訳ですが、金融緩和期待が強まると外為市場で円高・ドル安が進みやすくなり、日本株にとって逆風となるためです。
ただしテクニカル的には、外為相場がいったん円安・ドル高方向へ修正される可能性が大きくなってきています。仮に円安・ドル高方向への動きが強まれば、日経平均株価の出遅れ修正が本格化するシナリオが台頭することになります。
日経平均株価(図1)は6月、週足で4週連続の上昇となり、月末終値は前月末比674円73銭(3.3%)の上昇となりました。これに続く7月第1週は前週比470円46銭(2.2%)高となり、週足の上昇はこれで5週連続となりました。
6/29(土)まで開催されていたG20と並行して行われていた米中通商会議で、両国の貿易戦争が「一時停戦」となり、中国から米国への輸入品に対する関税の追加が見送られたことが好感されました。米国が金融緩和へ舵を切ったことで、世界的に金融緩和期待が強まったことも追い風になりました。ただ、7/5(金)に発表された米雇用統計(6月)が強い内容となり、金融緩和期待が後退し、週明けの7/8(月)は利益確定売りから世界的に大きく下がる展開になりました。
ちなみに、7/1(月)〜7/9(火)の日経平均株価の日次の動きは以下のようになっています。
- 7/1(月)454円05銭高・・・米中首脳会談は「一時停戦」となり、ハイテク株中心に全面高。「短観」は材料視されませんでした。
- 7/2(火)24円30銭高・・・G20後のNYダウ(7/1)は買い先行後に伸び悩みましたが、それを引き継いだかのような動きでした。
- 7/3(水)116円11銭安・・・円高で輸出株を中心に利益確定売りが目立ちました。
- 7/4(木)64円29銭高・・・米主要株価指数の最高値更新を好感しましたが、米独立記念日を控え、様子見となりました。
- 7/5(金)43円93銭高・・・米雇用統計の発表を控え、様子見気分が強まりました。小売株の一部が買われました。
- 7/8(月)212円03銭安・・・米雇用統計の好調で金融緩和期待が後退し、海外株式市場が下落しました。
- 7/9(火)30円80銭高・・・円安を好感して買い先行となりましたが、200日移動平均線が上値抵抗線となり伸び悩みました。
7/5(金)に発表された米雇用統計(6月)では、非農業部門雇用者数が前月比22.4万人増となり、事前予想(16万人増)や前月実績値(7.2万人増)を上回りました。失業率が前月比0.1%悪化の3.7%、平均時給(前年同月比増減)が同0.1%低下の3.1%増にとどまるなど、弱い数字もありましたが、労働参加率の上昇等もあり、全体では強い内容と認識されました。これを受けたこの日の米国市場では、金融緩和への期待が後退し、NYダウが5営業日ぶりに反落となり、週明けの株式市場は日本を含むアジア市場が全面安となりました。
図1 日経平均株価は基本的に戻り歩調が継続
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/7/9取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/7/8現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/7/9取引時間中
パウエルFRB議長は、7/10(水)に下院で、7/11(木)には上院で半年に一度の議会証言を行う予定です。この場の証言を通じ、市場の利下げに対する思惑がどう変化するか注目されることになります。市場は7/31(水)のFOMCで0.25%の利下げに踏み切ると予想しています。さらに、9/18(水)には0.25%の追加利下げが実施されるというのが多数派の意見になっています。利下げの確率が強まるほど、市場ではドル安が進み、米株式市場等に追い風が吹くと予想されます。
なお7/11(木)には、ローソン(2651)、ビックカメラ(3048)、安川電機(6506)、ファーストリテイリング(9983)等の決算発表は予定されています。このうち、安川電機については、2018年以降決算が2月に変更されましたが、それよりも前は3月決算でした。安川電機はその事業内容から、決算発表が民間設備投資や、電子部品・半導体産業の先行指標と捉えられています。また、ファーストリテイリングは日経平均株価の変動にもっとも影響しやすい銘柄として知られており、同様に、日経平均株価の予想EPS(1株利益)にもっとも影響を与える銘柄と考えられています。すなわち、ファーストリテイリング(9983)の通期業績見通しに修正があった場合、日経平均株価が変動する可能性がありますので、注意が必要です。
表1 今後約2週間の重要スケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
7/9(火) | 日本 | 6月工作機械受注 | |
7/10(水) | 日本 | ★決算発表 | 良品計画、サイゼリヤ他 |
中国 | 6月消費者物価 | 市場コンセンサス・前回ともに前年同月比2.7%増 | |
米国 | パウエルFRB議長が議会証言 | ||
7/11(木) | 日本 | 6月都心オフィス空室率 | 前回は1.64% |
日本 | ★決算発表 | ローソン、安川電機、ファーストリテイリング他 | |
米国 | 6月消費者物価指数(食品・エネルギーを除く) | 前回は+2.0% | |
7/12(金) | 日本 | オプションSQ | |
中国 | 6月貿易収支 | 前回(輸出)は前年同月比2.0%減 | |
米国 | 6月生産者物価指数(食品・エネルギーを除く) | 前回は+2.3% | |
7/15(月) | 日本 | ◎東京市場は休場 | 海の日 |
中国 | 4〜6月期GDP | 前回は前年同期比6.4%。今回の市場コンセンサスは同6.2%増 | |
中国 | 6月工業生産 | 市場コンセンサスは前年同月比5.3%増 | |
中国 | 6月都市部固定資産投資(年初来) | 市場コンセンサスは前年同期比5.6%増 | |
中国 | 6月小売売上高 | 市場コンセンサスは前年同月比8.5%増 | |
米国 | ☆決算発表 | シティG | |
7/16(火) | 日本 | 株式等の受け渡し日がこれまでの3日後から2日後に | |
ドイツ | 7月ZEW景況感指数 | アナリストなど350人の市場関係者に半年後の景況感をアンケート | |
米国 | 6月小売売上高 | 米国の個人消費の現状を示す | |
米国 | 6月鉱工業生産・設備稼働率 | ||
米国 | 7月NAHB住宅市場指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | J&J、JPM他 | |
7/17(水) | 日本 | 6月訪日外客数 | |
- | G7財務大臣・中銀総裁会議 | ||
米国 | 6月住宅着工件数 | ||
米国 | ☆決算発表 | IBM、ネットフリックス他 | |
7/18(木) | 日本 | 6月貿易収支 | 前回の輸出は前年同月比7.8%減 |
米国 | 7月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | マイクロソフト、モルガン・スタンレー他 | |
7/19(金) | 日本 | 6月消費者物価指数 | |
米国 | 7月ミシガン大学消費者マインド指数 | ||
7/21(日) | 日本 | 参議院議員選挙投開票 | 改選124議席で過半数は63議席 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 |
2020年 |
|
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 |
7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
未定 |
FOMC(米連邦公開市場委員会) |
7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
1/29(水)、3/18(水)、4/29(水)、6/10(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 |
7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
1/23(木)、3/12(木)、4/3(金)、6/4(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
米国株の主要指数が史上最高値を更新しているのに対し、日本株は出遅れているとの指摘があります。では、なぜそう感じるのでしょうか。米国株の上昇の背景には金融緩和期待がある訳ですが、金融緩和期待が強まると外為市場で円高・ドル安が進みやすくなり、日本株にとって逆風となるためです。
ただ、ものは考え様です。仮に円高・ドル安が一服したり、反転して円安・ドル高になった場合、日本株の戻りに勢いがつく可能性もありそうです。図4はドル・円相場(日足)の一目均衡表ですが、
- (1)遅行スパンが日々線を下から上に突き抜け
- (2)転換線が上向きに転じ、基準線を下から上に突き抜け
等、円安・ドル高方向への追い風を強める「形状の改善」が表面化しています。ドル・円相場は1/3(木)の1ドル104円96銭に対し、6/25(火)の同106円77銭がダブル・ボトムの「二番底」になっているようにも見受けられます。
前項でも触れたように、当面は米政策金利の引き下げモードが続き、年内は0.25%ずつあと2回の利下げがあるというのがメインシナリオになっています。しかし、米雇用統計(6月)発表前には、7月の利下げは0.5%になるとの確率が金利先物市場で40%まで上昇し、やや金融緩和期待が前のめりの状態になっていました。
米雇用統計(6月)発表後、さすがに「7月の利下げは0.5%」というシナリオの実現確率はゼロ近くまで低下しています。ただ、年内の利下げは2回がメインシナリオとはいえ、その確率は51%程度にとどまり、12月にさらに利下げがあるとの見方も49%に達しています。
仮にこの「49%」が「市場の金融緩和期待がいまだ前のめりの状態」であることを示し、修正の余地があるのであれば、外為市場で円安・ドル高方向への修正余地が広がり、株価が戻りを継続する可能性も大きいと考えられます。
図4 ドル・円相場(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/7/9取引時間中