東京株式市場が下落局面となっています。日経平均株価は「平成」最後の営業日となった4/26(金)から下げ始め、5/14(火)まで7営業日続落となり、「令和」になってからは上昇した日がない状態が続いています。
テクニカル的には日経平均株価の一目均衡表(日足)が「3役逆転」となり、相場の基調は陰転したとみられることから、投資家としても中期的には慎重なスタンスで株式市場に接する必要がありそうです。ただ、ここからさらに下落した場合、短期的には「下げ過ぎ」感が台頭する可能性が強く、下げ止まりの水準になり得る下値支持ラインを意識しておく必要もありそうです。
日経平均株価は「平成」最後の営業日となった4/26(金)から下げ始め、5/14(火)まで7営業日続落となり、「令和」になってからは上昇した日がない状態が続いています。
米中通商交渉が難航し、5/5(日)に米トランプ大統領が、中国からの輸入品2,000億ドルに対し、関税を10%から25%に引き上げると述べたことがキッカケになり、株式市場が世界的に波乱色を強めています。5/10(金)には米国の関税引き上げが実施に移されましたが、これに対して中国が「報復」に転じたこと、米国が残りの中国からの輸入品にも関税賦課(25%)の方針を表明したこと等を背景に、5/13(月)の米国市場では、NYダウが617ドル安となり、終値は3ヵ月ぶりの安値水準まで沈みました。これを受け、東京株式市場では5/14(火)も売りが先行し、結局日経平均株価は7営業日続落となりました。
なお、10連休明け後の5/7(火)〜5/14(火)の日経平均株価の日次の動きは以下のようになっています。
- 5/7(火)335円01銭安・・・米トランプ大統領が中国からの輸入品2,000億ドルの関税を引き上げると表明(5/5)しました。
- 5/8(水)321円13銭安・・・USTR代表も米大統領の方針を「追認」し、5/7のNYダウは473ドル下落。決算発表のトヨタが軟調。
- 5/9(木)200円46銭安・・・関税引き上げと国内決算発表ピークの5/10(金)を控え、投資家のリスク回避姿勢が目立ちました。
- 5/10(金)57円21銭安・・・オプションSQ、米国の対中関税引き上げ後買われましたが、午後は失速しました。
- 5/13(月)153円34銭安・・・中国から米国への残りの輸入品にも関税25%が賦課される方針が嫌気されました。
- 5/14(火)124円05銭安・・・前日のNYダウが617ドル安となりました。中国から米国への携帯・PCの輸入も課税候補です。
なお、投資家は米中貿易摩擦を注視する一方で、佳境を迎える国内上場企業の決算発表にも注意しなければなりませんでした。トヨタ自動車(7203)や本田技研工業(7267)が決算発表を行った5/8(水)や、ソフトバンクグループ(9984)の発表があった5/9(木)は質の面での決算発表ピーク、647社が発表を行った5/10(金)は量の面でのピークと考えられます。厳しい業績見通しを発表し、発表後に株価が下落する銘柄も少なくなく、投資家がリスク回避姿勢を一層強める要因になったと考えられます。
テクニカル的には、図1の日経平均株価・日足チャートから明らかな通り、アイランド・リバーサルが完成したことから、「天井確認」の形になってしまいました。そのことも波乱を助長する要因となっています。
図1 アイランド・リバーサルが完成し、「天井確認」の形となった日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/5/14現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/5/13現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/5/14取引時間中
上場企業の決算発表は決算発表社数ベースでは5/10(金)に647社とピークを付けましたが、5/13(月)に393社、5/14(火)554社、5/15(水)に479社と高水準が続き、ここでほぼ一巡する予定です。10連休をはさんだ影響で、発表シーズンの終了間際まで多くの企業の発表が続きました。前項でも触れたように、厳しい業績見通しを発表し、発表後に株価が下落する銘柄も少なくなく、投資家がリスク回避姿勢を一層強める要因になったと考えられます。
ただ、厳しい決算発表を覚悟していた割に、日経平均株価の予想EPS(一株利益)の動きは穏当なものに感じられました。すなわち、同予想EPSは2018/12/13(木)の1,794円から3/26(火)には1,707円まで低下していましたが、5/13(月)には1,773円まで回復しています。予想EPSの回復と株価下落が同時進行で起こった結果、日経平均株価の予想PERは5/13(月)に11.95倍まで低下し、株価の割安感自体は強まっていると考えられます。
表1 決算発表が一巡へ
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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5/14(火) |
日本 |
★決算発表(554社) |
東レ、三菱ケミHD、武田、資生堂、リクルートHD他 |
5/15(水) |
日本 |
★決算発表(479社)〜最後のヤマ場、この日でほぼ一巡 |
鹿島、日本郵政、三菱UFJ他 |
米国 |
4月小売売上高 |
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米国 |
5月NY連銀製造業景況指数 |
米製造企業のマインドは? |
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5/16(木) |
米国 |
4月住宅着工件数 |
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米国 |
5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
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米国 |
☆決算発表(2〜4月期) |
アプライドマテリアルズ、エヌビディア、ウォルマート |
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5/17(金) |
日本 |
全国百貨店売上高 |
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5/20(月) |
日本 |
1〜3月期GDP |
市場コンセンサスは前期比(年率)で-0.3% |
日本 |
MS&AD、東京海上、SOMPO HD |
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5/21(火) |
日本 |
4月首都圏新規マンション発売 |
|
日本 |
4月訪日外客数 |
1〜3月累計では前年同期比5.7%増 |
|
米国 |
4月中古住宅販売件数 |
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5/22(水) |
日本 |
4月貿易統計 |
前回は輸出が前年同月比-2.4% |
米国 |
FOMC(4/30〜5/1)議事録 |
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5/23(木) |
欧州 |
欧州議会選挙(〜26日) |
|
ドイツ |
5月Ifo景況感指数 |
約7,000社のドイツ企業に景況感をアンケート |
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米国 |
4月新築住宅販売件数 |
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米国 |
☆決算発表(2〜4月期) |
ベストバイ |
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5/24(金) |
日本 |
4月消費者物価指数 |
|
米国 |
4月耐久財受注 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
冒頭でご説明したように、テクニカル的には、日経平均株価・日足チャートでアイランド・リバーサルが完成したことから、「天井確認」の形になってしまいました。さらに、下の図4で明らかな通り、一目均衡表(日足)では「3役逆転」となり、形の上では「強気相場」が終わり「弱気相場」に突入した形になっています。投資家は中期的に、株式市場に対して慎重なスタンスで臨む必要が強まりそうです。
米トランプ大統領の対中政策が単なる駆け引きでないことが次第に明らかになっています。一見、無謀に見える同大統領の対中国政策ですが、同国の軍事的・経済的台頭を許さない米国共和党保守派の意見が反映されていると考えられます。仮に通商交渉で一時的な妥協が成立しても、本質的には対立が続くと考えるのが妥当でしょう。
中国から米国への輸出に関税を賦課することで、中国企業の輸出競争力が削がれることは確かです。しかし、米国人の生活に深く浸透している中国製品の値上がりで米国人の不利益が増幅する可能性や、中国で生産し、米国に輸出を行っている米国企業のコストも増えることになります。特に、中国で生産されて米国に輸出されるアイフォーンの動向や、アップル株の動きには今後も注意が必要であると考えられます。
それでも、米中通商摩擦の先には、世界経済の混乱だけがあるのではなく、世界的なサプライチェーンの再編があり、場合によっては日本企業のチャンスが拡大する可能性があります。その意味で、米中通商摩擦を背景とする株価下落には限界があると考えられます。
短期的にも、ここからさらに下落した場合、短期的には「下げ過ぎ」感が台頭する可能性が強く、以下の下値支持ラインを意識しておく必要もありそうです。
- (1)20,655円・・・・・・・・12月安値から4月高値にかけ上昇した分の「半値押し」水準
- (2)20,637円・・・・・・・・予想PERは2/8に当面の安値11.64倍を付けたが、それを現在の予想EPS(1,733円)をかけた水準
- (3)20,500円・・・・・・・・心理的な節目
- (4)20,329円・・・・・・・・25日移動平均(5/13現在・21,870円)から7%下押した水準
- (5)20,315円・・・・・・・・2/8の安値水準
- (6)20,126円・・・・・・・・年初来高値(4/25)から10%下押した水準
- (7)20,000円・・・・・・・・心理的な節目
図4:日経平均株価・一目均衡表(日足)は「3役逆転」となり、相場陰転を示唆
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/5/14取引時間中