10連休が終わり、新しい元号である「令和」の下での株式相場がスタートしました。日本が連休中の期間、米国株の変動は結果的には小幅なものにとどまりましたが、終盤になり、「米トランプ大統領が中国からの輸入品2,000億ドルの関税を10%から25%に引き上げることを表明」とのニュースが伝わりました。
こうした米中対立の再燃と国内決算発表の佳境接近等を背景に、5/7(火)の東京株式市場では日経平均株価が連休前比で335円01銭の大幅安となる波乱のスタートとなりました。今後はどうなるのでしょうか。
日経平均株価は4月、第1週(4/1〜4/5)に前週比601円69銭(2.8%)高、第2週(4/8〜4/12)に同63円06銭(0.3%)高、第3週(4/15〜4/19)に同330円00銭(1.5%)高、第4週(4/22〜4/26)に同58円17銭(0.3%)高となり、週足ベースでは4週連続の上昇を記録しました。結局、月終値(平成時代の終値)は22,258円73銭となり、前月末比1,052円92銭(5.0%高)となりました。
4月はNYダウが月間で2.6%上昇したほか、外為相場も緩やかな円安・ドル高基調で推移するなど、おおむね良好な投資環境となりました。10連休を控えたポジション調整が懸念されましたが、むしろ日経平均株価の変動に大きく影響する値がさ(株価水準が高位)の日経平均採用銘柄が上昇するなどの追い風が吹き、日経平均を持ち上げました。
米国株が上昇した理由としては、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策へのスタンスが中立方向に緩和されたことを背景に、市場心理が好転したこと、米中問題での妥協成立に対する期待が持続したこと等があげられます。円安・ドル高基調については、FRBの金融政策へのスタンスはドル安要因とみられますが、英国のEU離脱期限が10月末に再延期されたことや、米国株高により、リスク回避の円買い需要が後退した分、相殺されたものと考えられます。
ご参考までに、第4週(4/22〜4/26)の日次の動きは以下の通りとなっています。東証1部の売買代金は、受け渡しベースで4月営業となる4/22(月)に1.63兆円、4/23(火)に1.94兆となり、2兆円割れが続きましたが、実質5月営業入りとなった4/24(水)以降は2兆円を超える水準まで持ち直しています。
- 4/22(月)17円34銭高・・・海外が休場だったこともあり、東証1部売買代金が年内最低水準まで減るなど様子見モードでした。
- 4/23(火)41円84銭高・・・引き続き連休を控えた持ち高調整の売買が中心でした。
- 4/24(水)59円74銭安・・・米国株高を受けて買い先行となったものの、決算発表が意識され次第に売り優勢になりました。
- 4/25(木)107円58銭高・・・日銀が2020年春まで緩和スタンスを継続すると表明したことが下支え要因になりました。
- 4/26(金)48円85銭安・・・米株安が嫌気されたほか、連休接近、決算発表接近等が様子見材料となりました。
図1 日経平均株価は4/25(木)の22,307円58銭が当面の年初来高値(終値ベース)に
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/5/7現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/5/6現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/5/7取引時間中
当面は佳境を迎える上場企業の決算発表から目を離せない展開が続きます。5/8(水)取引時間中にはトヨタ(7203)、5/9(木)の大引け直後にはソフトバンクグループ(9984)の発表が予定され、質的な面ではこの辺が決算発表のピークになりそうです。また、発表社数ベースでは665社が発表予定の5/10(金)がピークになる予定ですが、5/13(月)〜5/15(水)も多数の上場企業が決算発表を予定しています。
その他では、米中通商協議の成り行きも注目されます。本来的には、5/8(水)の閣僚級会議が注目される所ですが、そもそも予定通り開催されるのか、中国が派遣する交渉チームの規模はどうなるのか等についても、関心を集めそうです。
表1 決算発表のピークは社数ベースで5/10(金)に
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
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5/6(月) |
- |
この前後からイスラム圏でラマダン(断食月)開始 |
〜6/4(火)頃(外務省の見方) |
5/8(水) |
日本 |
★決算発表(173社) |
トヨタ、ホンダ、ソフトバンク |
中国 |
4月貿易収支 |
前回は輸出(前年同月比)が14.2%増 |
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米国/中国 |
閣僚級通商協議(予定) |
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米国 |
☆決算発表 |
ザ・ウォルト・ディズニー他 |
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5/9(木) |
日本 |
★決算発表(284社) |
日本製鉄、パナソニック、ソフトバンクグループ他 |
米国 |
3月貿易収支 |
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5/10(金) |
日本 |
★決算発表(665社)〜発表社数ベースで決算発表がピーク |
大成建、清水建、ダイフク、NTT他 |
米国 |
4月消費者物価 |
前回(食品・エネルギーを除く・前年同月比)は+2.0% |
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5/13(月) |
日本 |
★決算発表(372社) |
大林組、王子HD、ブリヂストン他 |
5/14(火) |
日本 |
★決算発表(550社) |
東レ、三菱ケミHD、武田、資生堂、リクルートHD他 |
5/15(水) |
日本 |
★決算発表(475社)〜最後のヤマ場、この日でほぼ一巡 |
鹿島、日本郵政、三菱UFJ他 |
米国 |
4月小売売上高 |
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米国 |
5月NY連銀製造業景況指数 |
米製造企業のマインドは? |
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5/16(木) |
米国 |
4月住宅着工件数 |
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米国 |
5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 |
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米国 |
☆決算発表(2〜4月期) |
アプライドマテリアルズ、エヌビディア、ウォルマート |
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5/17(金) |
日本 |
全国百貨店売上高 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
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日銀金融政策決定会合 | 6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
10連休明け後で、「令和」初の取引となった5/7(火)の東京株式市場では、日経平均株価が4/26(金)終値比74円安の水準で寄り付きました。寄り付き自体は比較的平穏なスタートになったと見受けられます。連休中の米国株式市場が結果的にあまり大きな動きにならなかったことで、落ち着いた取引再開につながったと考えられます。
すなわち、4/29(月)〜5/3(金)の米国株式市場では、NYダウが累計で38ドル安という小動きで終了。FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が利下げに否定的な見解を示したことが嫌気された反面、雇用統計は強いながらもインフレ懸念にはつながりにくいという市場に好ましい数値となるなど、強弱材料が対立する形となりました。
そうした中、5/5(日)に米トランプ大統領が、米中通商協議で知財問題が合意に至っていないことを背景に、中国からの輸入品2,000億ドルに対する関税を引き上げる(10%→25%)と表明し、5/6(月)の米国市場ではNYダウが一時470ドル超下げる売り先行の展開となりました。ただ、市場では、最終的には合意するとの期待も根強く、後半は下げ渋る展開となりました。結局、この日のNYダウの下落も66.47ドル安と穏当なものにとどまり、東京市場の落ち着いた取引再開につながりました。
ただ、5/7(火)の東京株式市場では取引が進むにつれ、日経平均株価の下げは拡大し、22,000円を割り込む展開になりました。米国による対中関税引き上げが実行される可能性が残る上、仮にそうなった場合は実施までの期間が短く、貿易現場での大きな混乱も心配されるためです。午後には21,875円まで下げる場面がありましたが、この水準は200日移動平均線に近く、そこが下値抵抗線として機能したとみられます。
今週は国内で決算発表が佳境を迎えるはこびですが、厳しい見通しを発表する企業も多く、買いポシジョンを増やしにくい状態も続きそうです。当面は、波乱含みの展開に注意が必要となりそうです。ただ、米中協議の方向感が明らかになるまでは、上記の200日移動平均線を大きく割り込む展開は想定しにくいと考えられます。