1月末の日経平均株価は前月末比758円72銭(3.8%)高となりました。上昇した理由は、FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策に対する姿勢が「ハト派的」に変ったことが大きいと考えられます。日本株は2月も、現状では堅調に推移しています。
今後はどうなるのでしょうか。日経平均株価の上昇は止まるのでしょうか、それとも上昇が持続するのでしょうか。そして、相場に対する基本的な見方として、何に気を付けておくべきでしょうか。
東京株式市場では、日経平均株価(図1)が1月第1週(1/4)に前週末比452円81銭(2.3%)安、第2週(1/7〜1/11)に797円74銭(4.1%)高、第3週(1/15〜1/18)に同306円37銭(1.5%)高、第4週(1/21〜1/25)に107円49銭(0.5%)高、そして2月第1週(1/28〜2/1)に14円83銭(0.2%)高となりました。また、1月末終値は20,773円49銭となり、前月末比758円72銭(3.8%)高となりました。なお、TOPIX(東証株価指数)の1月・月間の上昇率は4.9%でした。
1月の日経平均株価が上昇した理由は、FRBの金融政策に対する姿勢が「ハト派的」に変ったことが大きいと考えられます。当面、FRBは政策金利の引き上げを見送るのみならず、今後は資産縮小についても停止する可能性が大きいと考えられるようになりました。こうした姿勢の変化を好感し、1月のNYダウは7.2%上昇し、日経平均株価にも追い風になりました。
なお、2月第1週(1/28〜2/1)およびその週明けの日次ベースの動きは以下のようになっています。
- 1/28(月)124円56銭安・・・「FRBが資産縮小を停止する可能性」と伝わり、円高・ドル安が懸念されました。
- 1/29(火)15円64銭高・・・NYダウ下落(キャタピラー、エヌビディアの業績悪が影響)で売り先行も、買い直されました。
- 1/30(水)108円10銭安・・・前日の米国株市場でIT株が売られたことを嫌気して売り優位となりました。
- 1/31(木)216円95銭高・・・FOMC後の会見でハト派的なFRBの姿勢が確認され、米国株が上昇したことを好感しました。
- 2/1(金)14円90銭高・・・ナスダックが続伸したことを好感し、買いが先行しましたが、後半は伸び悩みました。
- 2/4(月)95円38銭高・・・強い雇用統計とそれを好感した米国株高(ともに2/1の動き)を好感しました。
- 2/5(火)39円32銭安・・・NYダウ上昇を好感して買いが先行しましたが、連日で21,000円が上値抵抗ラインになっています。
2/1(金)に発表された米雇用統計(1月)では、非農業部門雇用者数が前月比30.4万人増となり、市場予想(16.5万人増)を上回りました。前月分の下方修正など割り引かなければならない要素もありますが、総じて米雇用は強い状態が続いているとみられます。ただ、FRBが金融政策への姿勢を変えた直後だけに、再びFRBが引き締め強化の姿勢を取る可能性は少なさそうです。経済の実態とFRBの姿勢は株式市場にとり、理想的な組み合わせになったのかもしれません。
図1 2万1千円トライの展開が続く日経平均株価
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2019/2/5現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2019/2/4現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。。データは2019/2/5取引時間中
日米で決算発表が進捗しています。2018年10〜12月決算について、米国では2/1(金)までに半分弱の企業が発表を終えました。ただ、日本の投資家にもその名を知られるような主力企業の発表は峠を越えたとみられます。日本でも2/1(金)までに第1のヤマ場を越えた格好です。トヨタ(7203)とソフトバンクG(9984)の発表が重なる2/6(水)、542社の発表が予定されている2/8(金)などが残されたヤマ場となりそうです。
体感的にも理解されるように、上場企業の業績は見通しの下方修正等が増えており、株式市場にとっては悪材料になっていると考えられます。日経平均株価の予想EPS(一株利益)は昨年末に1,784円でしたが、2/4(月)段階では1,735円まで低下しています。ただ、この予想EPSは1月下旬以降は下げ渋っているように見受けられます。その意味で、2018年7〜9月から10〜12月にかけての業績悪化は、織り込みが進んでいるように思われます。
表1 当面の主要タイムスケジュール〜日米で主力企業が決算発表
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
2/5(火) |
日本 |
★決算発表(162社) |
スズキ、三菱商事、ソフトバンク他 |
米国 |
1月ISM非製造業景況指数 |
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米国 |
☆決算発表 |
ウォルト・ディズニー、エレクトロニック・アーツ他 |
|
2/6(水) |
日本 |
★決算発表(167社) |
三菱ケミ、新日鉄住金、トヨタ、ソフトバンクG他 |
米国 |
☆決算発表 |
GM他 |
|
2/7(木) |
日本 |
1月都心オフィス空室率 |
|
日本 |
★決算発表(261社) |
大成建、JT、旭化成他 |
|
米国 |
☆決算発表 |
ツイッター |
|
2/8(金) |
日本 |
★決算発表(542社) |
資生堂、三井不動産、三菱地所他 |
2/11(月) |
日本 |
◎東京市場は休場 |
建国記念の日 |
2/12(火) |
日本 |
★決算発表(250社) |
|
2/13(水) |
日本 |
★決算発表(344社) |
楽天、日産自他 |
米国 |
1月消費者物価 |
||
2/14(木) |
日本 |
10〜12月期GDP |
市場コンセンサスは前期比(年率)+1.4 |
日本 |
★決算発表(344社) |
電通、日本郵政、キリンHD他 |
|
中国 |
1月貿易収支 |
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米国 |
☆決算発表 |
エヌビディア他 |
|
2/15(金) |
日本 |
★決算発表 |
ブリヂストン他 |
中国 |
1月消費者物価 |
||
米国 |
1月小売売上高 |
||
米国 |
1月鉱工業生産 |
||
米国 |
2月ミシガン大学消費マインド指数 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2019年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 |
3/15(金)、4/25(木)、6/20(木)、7/30(火)、9/19(木)、10/31(木)、12/19(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) |
3/20(水)、5/1(水)、6/19(水)、7/31(水)、9/18(水)、10/30(水)、12/11(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 |
3/7(木)、4/10(水)、6/6(木)、7/25(木)、9/12(木)、10/24(木)、12/12(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
表3 決算発表スケジュール(社数)
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
---|---|---|---|---|
02/04 |
02/05 |
02/06 |
02/07 |
02/08 |
02/11 |
02/12 |
02/13 |
02/14 |
02/15 |
表4 東証時価総額上位銘柄の決算発表予定日
コード |
銘柄名 |
発表予定日 |
---|---|---|
7203 |
トヨタ |
02/06 |
9432 |
NTT |
02/07 |
9984 |
ソフトバンクG |
02/06 |
9434 |
ソフトバンク |
02/05 |
- ※弊社WEBサイト「決算発表スケジュール」(国内株式)より、SBI証券が作成。決算発表スケジュールは予告なく変更される場合があり、上記の決算発表スケジュールも日々変化する可能性があります。
一目均衡表を利用したテクニカル分析では、以下のように「3役好転」になると「強い上昇トレンドに入った可能性が大きい」と考えられるようになります。
- (1)遅行スパンが日々線を下から上に上抜ける
- (2)転換線が基準線を下から上に上抜ける
- (3)日々線が「クモ」を下から上に上抜ける
2/5(火)現在、日経平均株価は上記の(1)と(2)(図4では赤丸で示した部分)については成立しているものの、(3)(図4では青丸で示した部分)については成立していません。しかし、日経平均株価が21,000円を超えてくると、(3)が成立し、チャート上の強気転換となる訳です。ちなみに、図1の通常の日足チャートでは、重要な移動平均線である25日移動の下落が止まり、上昇に転じていることが見て取れます。株式相場は当面、堅調に推移する可能性が大きくなっています。
同じ一目均衡表(日足)において、NYダウはすでに「3役好転」の形になっています。FRBの金融政策に対する姿勢がハト派的な方向に転換されたことで、米国株の上昇相場が「延命」され、それが日本株の追い風になるのかもしれません。なお、外為相場についても1ドル109円台後半の動きがもう少し続けば「3役好転」になる可能性があります。前項で述べた決算発表の次のヤマ場を越えることができれば、日本株に対する追い風はさらに強くなる可能性もありそうです。
ただ、世界的に景気はピークアウトの方に向かっていると考えられます。米国経済が「完全雇用」の状態下で、政策金利の引き上げや資産縮小を止めることが正しいのか否か、現状では判断に難しい所です。トランプ大統領が、FRBに「口先」とはいえ、圧力をかけるという「禁じ手」を取った後のFRBの姿勢変化だけに、将来その悪影響が表面化する可能性はゼロではありません。
一目均衡表は当面、相場好転の勢いが持続することを予想していると考えられます。しかし、それはあくまで「下落相場の中の中間反騰局面」の範囲にとどまるのではないでしょうか。
図4 日経平均株価(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2019/2/5現在