日経平均株価は10/2(火)に年初来高値を付け、約27年ぶりの高値水準となりました。しかしその後は下落局面に転じ、10/11(木)には前日比915円超下げる波乱となりました。その後も、不安定な状態が続いており、市場では総じて先行きに対する警戒感が強まっているように思われます。
トランプ大統領の「米国第一主義」的政策は、世界経済の不透明感を強め、外為市場では円高が進み、日本株の下落リスクも強まっているという見方が増えつつあるように見受けられます。しかし、市場のそういった漠然とした懸念は杞憂に終わり、次第に「円安・株高」への風が吹き始めるかもしれません。
日経平均株価(図1)は10/2(火)に24,270円62銭の年初来高値(終値ベース)を付け、1991年11月以来、約27年ぶりの高値水準を回復してきました。しかしその後は下落局面に転じ、10/11(木)には前日比915円超下げる波乱となりました。
米国株式市場(図2)では、NYダウが10/3(水)に史上最高値を更新しましたが、その後は下落に転じ、特に10/10(水)は831ドル安、10/11(木)は545ドル安と大きく下落しました。同様に、外為市場(図3)でも10/3(水)を転機に、円高・ドル安が進む展開となりました。このように、米国株安・円高が進んだことが、日経平均株価下落の主因であると考えられます。
米トランプ大統領は、中国からの輸入に米国が関税を賦課することに対し、仮に今後も中国が報復を試みるなら、中国からの全輸入製品に対して関税を賦課する方針であるとみられます。米中貿易摩擦はさらに激化してきたと考えられます。IMF(国際通貨基金)も危惧するように、貿易摩擦の深刻化で世界経済は減速する可能性が大きく、それを嫌気して株式市場ではリスク回避の「円安・株高」が進む懸念が強まっています。
結局、日経平均株価は10月第1週に1.4%下落、第2週に4.6%下落となり、10月は「波乱」状態のまま、前半の折り返し地点を迎えました。第3週も10/15(月)423円36銭安の後、10/16(火)は反発しましたが、依然不安定な状態が続いています。
図1 日経平均株価が波乱の展開
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/10/16現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/10/16現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/10/16取引時間中
米国では10/12(金)に大手金融機関の一角で決算発表が実施されました。今後は日を追って、決算発表の企業が増えてくるはこびとなっています。
S&P500に採用される主要企業について、純利益は前年同期比19%程度増える見通しですが、最終的には増益率がさらに増える可能性が指摘されています。ただ、中国との貿易摩擦等を背景に、慎重な業績見通しを公表してくる企業も出てきそうで、個別企業レベルでは注意が必要とみられます。
我が国では、10/22(月)以降、徐々に2018年7〜9月期の決算発表が進捗していくとみられます。発表社数ベースでは11/9(金)にピークを迎えることになりそうです。ただ、ソフトバンク(9984)の発表予定は11/5(月)、トヨタ(7203)は11/6(火)であり、質的な意味ではこの辺が「ピーク」になりそうです。
表1 日米ともに決算発表シーズンへ
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
10/16(火) | 日本 | 9月訪日外客数 | 地震や台風の影響はどの程度か |
中国 | 9月消費者物価 | 前回(前年同月比)は2.3%上昇。9月は同2.5%上昇(発表済み) | |
ドイツ | 10月ZEW景況感指数 | 350人のアナリストやエコノミスト等に景況感をアンケート | |
米国 | 9月鉱工業生産 | 前回は前月比0.4%増 | |
米国 | NAHB住宅市場指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | GS、J&J、モルガンS、ネットフリックス | |
10/17(水) | 欧州 | EU首脳会議 | |
米国 | 9月住宅着工件数 | 前回は前月比9.2%増 | |
米国 | FOMC(9/26発表分)議事録 | ||
10/18(木) | 日本 | 9月貿易統計 | 前回の輸出は前年同月比6.6%増 |
米国 | 10月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | アメックス、イーベイ、インテュイティブサージカル他 | |
10/19(金) | 日本 | 9月消費者物価 | 前回(生鮮食品を除く・前年同月比)は0.9%上昇 |
中国 | 7〜9月GDP | 前回GDPは前年同月比6.8% | |
中国 | 9月小売売上高 | 前回は前年同月比9.0%増 | |
中国 | 9月鉱工業生産 | 前回は前年同月比6.1%増 | |
中国 | 1〜9月都市部固定資産投資 | 前回(1月〜8月)は前年同期比5.3%増 | |
米国 | 9月中古住宅販売件数 | 市場コンセンサス(前月比)は0.6%減 | |
米国 | ☆決算発表 | P&G他 | |
10/22(月) | 日本 | ★決算発表〜3月決算企業の発表シーズンが事実上開始 | 日立化成、日証金他 |
10/23(火) | 日本 | ★決算発表 | 日本電産、シマノ他 |
米国 | ☆決算発表 | キャタピラー、コーニング、マクドナルド、TI | |
10/24(水) | 日本 | ★決算発表 | 花王、中外薬他 |
米国 | 8月FHFA住宅価格指数 | ||
米国 | ☆決算発表 | ボーイング、フォード、ビザ、AMD、マイクロソフト | |
10/25(木) | 日本 | ★決算発表(61社) | サイバー、日立建機、キヤノン他 |
日本 | 安倍首相訪中(予定) | ||
欧州 | ECB理事会/ドラギ総裁会見 | ||
ドイツ | 10月Ifo景況感指数 | 約7千社のドイツ企業に景気の現状と半年後をアンケート調査 | |
米国 | 9月耐久財受注 | 米民間設備投資の先行指標 | |
米国 | 9月中古住宅販売仮契約 | 米中古住宅販売件数の先行指標 | |
米国 | ☆決算発表 | アルファベット、インテル、ツイッター | |
10/26(金) | 日本 | ★決算発表(99社) | 信越化学、日立、リコー他 |
米国 | 7〜9月GDP(前期比・年率) | 4〜6月は+4.2%、7〜9月(市場コンセンサス)は+3.2%の予想 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 10/31(水)、12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/8(木)、12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/25(木)、12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
図4は日経平均株価の過去10年間の動きを月足チャートでみたものです。時には月足チャートで大局的な見方を検討してみることも重要かと思います。
日経平均株価は9月、安値22,172円、高値24,286円となりました。10月は現状では10/2(火)の高値24,448円が高値であり、仮に9月安値22,172円を下回って月末を迎えると、9月の大きな陽線を包み込む陰線が形成されることになり、非常に天井色の強い形になると思います。仮に、慎重に相場を判断したいのであれば、10月終値が9月安値を大きく上回り、できれば22,600円以上となれば、12ヵ月移動平均キープが見えてきます。この場合、上昇トレンド維持との見方ができそうです。
定性的にはどう考えるべきでしょうか。米中貿易摩擦を、2大経済大国による「新冷戦」とみる向きが増えているようで、それが市場の懸念につながり、円高・株安の不安を助長しているように思われます。ただ、冷静に考えれば、日本経済はその昔「米ソ冷戦」の中で独自のポジションを固め、高成長を実現してきたと考えることができます。
米国の多くの企業も、単純に中国からの製品供給に支障が出ている状態では、サプライチェーンが傷ついたままになるとみられ、その修復を試みてくると考えられます。その過程で、日本企業の中には新たなポジションを構築し、国際競争力を高めてくる企業も出てくる可能性があります。「新冷戦」が日本企業にとり、不利な面ばかりとは限らないように思われます。
そもそも、米国の金融政策面での「出口戦略」は、2013年5月の「バーナンキ・ショック」以来続いてきたもので、今に始まったものではないと思います。新興国からの資金流出はすでに起きているのであり、今後問題視されるものではなく、今ここで懸念すべきことではないように思われます。これらから、リスク回避の円買いポジションを取る必要性は低いと考えられます。
図5のドル・円相場・月足チャートは円高を示唆しているのではなくむしろ、「三角保ち合い」から円安・ドル高方向に放れつつあるように見えます。米国は「完全雇用」状態の下で内需促進策を行なった結果、当面は内需加熱や物価抑制が必要になってくるように思われます。「為替条項」の取扱いには注意を要するものの、少なくとも中期的には円安・ドル高方向に為替相場は動きやすく、それが日本株の上昇につながる可能性があると「225の『ココがPOINT!』」では考えています。
図4 日経平均株価(月足)
図5 ドル・円相場(月足)
- ※図4・図5ともに、弊社チャートツールを用いてSBI証券が作成