9月相場が終了しました。日経平均株価の月末終値は24,120円04銭となり、前月末比1,254円89銭(5.5%)高と月足ベースでは4ヵ月連続の上昇となりました。10月の東京株式市場も好調なスタートとなっています。
今後はどう考えるべきでしょうか。中期的には、企業の業績見通しの引き上げや、予想PERの上昇を通じ、現在の株価水準から更なる高値へ、日経平均株価が動き出すシナリオを考えるべきかもしれません。
9月相場が終了しました。日経平均株価の月末終値は24,120円04銭となり、前月末比1,254円89銭(5.5%)高と月足ベースでは4ヵ月連続の上昇となりました。
9月第1週(9/3〜9/7)の日経平均株価は前週に続いて下落し、前週末比558円09銭(2.4%)の下落となりました。米国とカナダがNAFTA(北米自由貿易協定)見直しで合意できなかったことで、世界的な貿易摩擦問題が改めて深刻視される形になりました。トランプ大統領が貿易赤字削減交渉について次の対象に日本を考えていると報じられたことも不安視されました。日経平均株価は9/7(金)に22,172円90銭まで下落する場面があり、そこが結果的には月間ベースでの安値になりました。
しかし、第2週(9/10〜9/14)は反発に転じ、9/14(金)の終値は23,094円67銭と、2/2(金)以来の高値水準を回復し、前週末比3.5%の上昇となりました。9/7(金)に発表された米雇用統計(8月)で時間当たり賃金が予想以上に伸び、米国の利上げが継続されるとの見方から円安・ドル高が進んだことを好感しました。トルコの想定以上の利上げで新興国通貨への不安が後退したこともプラス材料になりました。
第3週(9/18〜9/21)も前週末比775円26銭(3.4%)高と、前週並みの大幅高となりました。同じ週、米国ではNYダウが前週末比2.3%高と10週間ぶりの2%を超える大幅高となり、過去最高値を更新したことで、投資家のリスク許容度が高まる方向となりました。米景気・企業業績への楽観的な見方が持続し、同国10年国債利回りが3%台を回復し、それを受けて円安・ドル高が進んだことも日本株にとって追い風になりました。米国のトランプ大統領は米国時間9/17(月)に、中国からの輸入2,000億ドルに10%の関税を賦課することを決定しましたが、税率については一時25%の可能性も指摘されていたため、10%という税率はむしろ穏当に感じられた可能性があります。株式市場は日米ともに、この日以降に上昇が加速する形になりました。
日経平均株価はさらに、9月第4週(9/25〜9/28)も前週末比250円11銭(1.0%)高と上昇を維持しました。9/24(月)から、米国による中国からの輸入2,000億ドルを対象とした関税賦課が始まりましたが、市場の反応は限定的でした。9/26(水)に日米が物品貿易協定の交渉に入ることで合意し、当面は自動車関税が回避されたことも追い風になりました。結局、月末の日経平均株価は冒頭にご説明したように、4ヵ月連続の上昇となりました。
10月の東京株式市場も好調なスタートとなっています。米国とカナダがNAFTA見直しで合意したこともあり、10/1(月)の日経平均株価は前週末比125円72銭高となり、終値は24,245円76銭と、1/23(火)終値を上回り、年初来高値更新となりました。この日発表された日銀短観(9月調査)では大企業・製造業の業況判断指数が3期連続で悪化しましたが、株価への影響は限定的でした。逆に、続く10/2(火)も買い先行となり、日経平均株価は一時24,448円07銭(前日比202円31銭高)まで上昇しましたが、上昇ピッチの速さに対する警戒感も手伝い、終値では伸び悩んでいます。
図1 日経平均株価が年初来高値を更新
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/10/2現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/10/1現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/10/2取引時間中
スウェーデンのカロリンスカ研究所は10/1(月)、2018年のノーベル生理学・医学賞を京都大学の本庶佑特別教授らに授与すると発表しました。これを受けて、がん免疫療法に関連する小野薬品(4528)の他、日経平均採用銘柄ではエーザイ(4523)や第一三共(4568)も物色されました。ノーベル賞については、その他分野の発表も続き、日本人の受賞が期待されています。
こうした中、10/5(金)には米国で雇用統計(9月)の発表が予定されています。市場コンセンサス(10/2現在)は、非農業部門雇用者数で前月比18.4万人増、失業率は3.8%、時間当たり賃金は前年同月比2.8%増加等が予想されています。雇用統計が強い数字を示した場合、外為市場で円安・ドル高が進み、株価が上昇する要因につながる可能性があります。ただ、時間当たり賃金の増加が「強過ぎる」とみられた場合、インフレ懸念の高まりで米国株が下げるケースも警戒されますので、注意が必要です。
表1 米雇用統計の発表(10/5)に注意
月日(曜日) | 国・地域 | 予定内容 | ポイント |
---|---|---|---|
10/2(火) | 日本 | ★決算発表 | キューピー他 |
- | ノーベル物理学賞発表 | ||
10/3(水) | 日本 | ★決算発表 | 良品計画他 |
- | ノーベル化学賞発表 | ||
米国 | 9月ADP雇用統計 | 市場コンセンサス(雇用者数増減)は前月比18.4万人増 | |
米国 | 9月ISM非製造業景況指数 | 雇用等の個別指標にも注目 | |
10/4(木) | 日本 | 証券投資の日 | |
10/5(金) | 米国 | 9月雇用統計 | 市場コンセンサス(非農業部門雇用者数)は前月比18.4万人増 |
10/8(月) | 日本 | ◎東京市場は休場 | 体育の日 |
- | IMF・世銀年次総会(〜10/14) | ||
10/9(火) | 日本 | ★決算発表 | Jフロント他 |
10/10(水) | 日本 | 8月機械受注 | 設備投資の先行指標 |
日本 | ★決算発表 | イオン他 | |
米国 | 9月生産者物価(食品・エネルギーを除く) | 8月は前年同月比2.3%上昇 | |
10/11(木) | 日本 | 9月都心オフォス空室率 | |
日本 | ★決算発表 | ビックカメラ、7&I HD、ユニー・ファミマ、ファーストリテ他 | |
- | G20財務相・中銀総裁会議(〜10/12) | ||
米国 | 9月消費者物価(食品・エネルギーを除く) | 市場コンサンサス(前年同月比)は2.2%上昇 | |
10/12(金) | 日本 | ★決算発表 | 高島屋、東宝他 |
中国 | 9月貿易収支 | 8月の輸出(ドル建て)は前年同月比9.8%増 | |
米国 | ☆決算発表(7〜9月期決算の企業が発表本格化) | シティ、JPMチェース他 |
表2 日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | 2019年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 10/31(水)、12/20(木) | 1/23(水)、3/15(金)、4/25(木)、6/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 11/8(木)、12/19(水) | 1/30(水)、3/20(水)、5/1(水)、6/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 10/25(木)、12/13(木) | 1/24(木)、3/7(木)、4/10(水)、6/6(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀WEBサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
日経平均株価(図4)は9/14(金)に23,000円を上回り、徐々に上値を切り上げる展開となりました。23,000円を完全に上抜け、さらに5月の高値水準を抜けたことで三角保ち合いを上放れたことがチャート上明確になりました。さらに、10/1(月)には終値で1月の年初来高値を上回り、年初来高値を更新しました。日経平均株価は新しい上昇波動に入った可能性がありそうです。
気になるのは短期的な株価過熱感です。日経平均株価の25日移動平均線からのかい離率は10/2(火)で+4.7%であり、これが+5%を超えると過熱感から売られやすくなると考えられます。しかし、25日移動平均線自体は上昇傾向を辿っていますので、中期的な上昇トレンドは崩れていないと考えられます。
図5は日経平均株価の「妥当水準」を探るマトリックスになっています。現在の日経平均株価は、現在の予想EPS(一株利益)が増加しない上に、予想PERも上昇しないと仮定した場合の保守的な水準(黄色い色付きの近辺)であると考えられます。
確かに、日米貿易協議がまとまらず、自動車関税も考慮しなければならない状態では、そうした「保守的な水準」に日経平均株価がとどまっても不思議ではないと考えられます。しかし、9/26(水)に日米首脳会議で物品貿易協定の交渉に入ることが合意され、当面は自動車関税が回避されることになりました。これにより、市場や企業の心理に微妙な変化が出てくる可能性もありそうです。
今後、企業の業績見通しの引き上げや、予想PERの上昇を通じ、現在の黄色い色付きの水準から、赤い色付きの水準に向けて日経平均株価が動き出すシナリオを考えるべきかもしれません。
図4 「保ち合い」を上放れた日経平均株価
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成
図5 日経平均株価の「妥当水準」を探る
近い将来(例えば1年後程度に)、日経平均のEPS(一株利益)が、-10%、-5%、±0%、+5%、+10%増え、予想PERが12.0倍、13.0倍、14.0倍、15.0倍、16.0倍になったと仮定し、日経平均株価がいくらと計算されるかを示したもの。現実には増益率や予想PERがこれ以外の数字になる場合もあります。なお、過去1年間の予想PERの平均は13.83倍です。10/2(火)現在の株価水準は色付きの水準に近いとみられます。