連休明け後の東京株式市場は、円安の一服や佳境を迎える決算発表を控え、小動きとなっているように見受けられます。ただ、決算発表は今週がピークで、次第に買い持ち高を増やしやすくなると考えられます。
しかし、日経平均株価がさらに上昇するためには、市場心理が上向き、予想PERが上昇することが必要かもしれません。その意味で、円安・ドル高基調が強まってきたことは強い追い風になるとみられます。
<今週のココがPOINT!>
日経平均株価が上値抵抗線の100日移動平均を上抜け |
4月の東京株式市場では、日経平均株価の月末終値が22,467円87銭となり、前月末比4.7%の上昇となりました。世界的な貿易戦争への懸念が後退したことや、円安・ドル高が進み、企業業績の先行きに対する不安が後退したことが追い風になりました。テクニカル的には、上値抵抗ラインとなっていた100日移動平均線を上回った所で月末を迎える形になりました。
月が替わり、5/1(火)の日経平均株価は前営業日比40円16銭高と3日続伸し、前営業日に上回った100日移動平均線を維持したのみならず、2/27(火)の取引時間中に付けた高値22,502円05銭を上回って取引を終えました。外為市場で円安・ドル高が進んだことに加え、決算発表の最初のヤマ場となった前週末を総じて無難に通過し、企業業績への不安が後退したことが要因とみられます。ただ、連休後半を控えた5/2(水)の日経平均株価は持ち高調整も手伝い、35円25銭安と反落しました。
東京市場が連休後半で休場となっていた間、米国市場ではダウ平均が累計で163.46ドル高となりました。
5/2(水)はドル高が嫌気され、NYダウは4日続落となる174.07ドル安。5/3(木)も米中交渉の難航を警戒し、一時393ドル安となりましたが、200日移動平均を維持して上昇に転換しました。5/4(金)は好業績に自社株買い、バフェット氏による買い増しなど、好材料の相次いだアップルが上昇して上場来高値を更新し、市場心理が好転してNYダウは332.36ドルの大幅高になりました。雇用統計(4月)で賃金が伸び悩み、利上げ加速の材料にならなかったこともプラス材料になりました。
なお、3月末に1ドル106円台前半となっていたドル・円相場は、4月末には109円台前半まで円安・ドル高が進み、株高をもたらしました。5/2(水)まで開催されていたFOMC(米連邦公開市場委員会)後のパウエルFRB議長による記者会見は、物価見通しを引き上げ「さらなる利上げ」を正当化する内容と理解され、ドル・円相場はこの日、一時1ドル110円台に乗せる場面がみられました。
しかし、目標達成感に加え、上述したように、米雇用統計(4月)で賃金が伸び悩み、利上げ加速の材料にならなかったことから、ドル・円相場は1ドル108円台後半まで押し戻され「円安・ドル高一服」となりました。これを受け、連休明け後の5/7(月)の東京株式市場では、日経平均株価が5円62銭安と小幅続落になりました。ただ、円高・ドル安が加速する兆しをみせなかったこともあり、5/8(火)の日経平均株価は41円53銭高と反発し、22,500円台を回復しました。
図1:日経平均株価が上値抵抗線の100日移動平均を上抜け
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/5/8現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/5/7現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/5/8取引時間中
当面のタイムスケジュール〜決算発表がいよいよ佳境に |
5月に入り、東京株式市場では3月決算企業の決算発表が佳境を迎えます。発表社数ベースでは852社の発表が予定されている5/11(金)が最大のヤマ場になります。ただ、5/9(水)にはトヨタ(7203)やソフトバンクグループ(9984)の発表が予定されており、質的な面ではここがヤマ場になりそうです。
3月まで続いた円高や、トランプ政権の通商政策に対する警戒感等を背景に、2019年3月期の会社発表ベースの業績予想は市場予想を下回るケースが多くなっています。このため、個別銘柄レベルで決算発表後の株価下落リスクがくすぶり、それが日経平均株価のリスク要因になっていると考えられます。
ただ、逆に考えれば、決算発表が質的な面でも、量的な面でも、今週がピークとなり、来週以降は買い持ち高を増やしやすい状況になると考えられます。したがって、今週はむしろ「買い場」になる可能性もありそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜質的な面では5/9(水)が決算発表のピークに
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/8(火) | 日本 | ★決算発表 | 三菱重、三菱商、三井物など179社 |
中国 | 4月貿易収支 | 3月の輸出は前年比2.7%減 | |
5/9(水) | 日本 | ★決算発表 | トヨタ、ソフトバンクGなど235社 |
- | 日中韓首脳会議 | ||
5/10(木) | 日本 | 4月景気ウォッチャー調査 | いわゆる街角景気 |
日本 | ★決算発表 | 三菱ケミカル、パナソニックなど420社 | |
中国 | 4月新規銀行融資・4月マネーサプライ | おカネの流れは円滑か? | |
米国 | 4月消費者物価指数 | 3月(除食品・エネルギー・前年同月比)は2.1%の上昇 | |
米国 | ☆決算発表(2〜4月期) | エヌビディア(日本時間では11日の午前3時) | |
5/11(金) | 日本 | ★決算発表 | 大成建、三井不、NTTなど852社(社数ベースでは最多) |
米国 | 5月ミシガン大学消費者信頼感指数 | ||
5/14(月) | 日本 | ★決算発表 | 武田薬、三菱地所他など358社 |
5/15(火) | 中国 | 4月の主要経済指標 | 鉱工業生産、小売売上高、固定資産投資など |
日本 | ★決算発表 | ルクルートHD、日本郵政、住友化学他など380社 | |
米国 | 4月小売売上高 | ||
5/16(水) | 日本 | 1〜3月期GDP | 10〜12月期は1.6%成長。9四半期ぶりマイナス成長の観測 |
米国 | 4月住宅着工件数 | 住宅価格上昇や金利上昇が逆風 | |
米国 | 4月鉱工業生産 | ||
5/17(木) | 米国 | 5月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | |
5/18(金) | 日本 | 4月全国消費者物価指数 | 3月(生鮮食品を除く・前年同月比)は0.9%の上昇 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】円安・ドル高が予想PERの上昇につながる可能性 |
日経平均株価は、その予想EPS(一株利益)と予想PER(株価収益率)を掛け合わせた結果として求められます。
(日経平均株価)=(予想EPS)×(予想PER)
予想EPSは日経平均採用銘柄(上場企業)の業績(純利益)を反映し、予想PERは株式市場の心理を表しています。したがって、単純化すれば
(株価)=(企業業績)×(市場心理)
と表現することができます。
日経平均株価の予想PERは、過去200日の平均では14.1倍(5/7現在)と計算されています。大雑把に考えれば、日経平均株価の予想PERは約14倍を平均として上下に動いていると考えることができます。図4をみればおわかり頂けるように、日経平均株価は予想PER12.5倍から15.5倍に相当する株価の間で行ったり来たりしていると考えることができます。ただ、2016年6月を底に、日経平均の予想EPSが上昇トレンドに転じており、株価のトレンドもおおむね上向きとなっています。
5/7(月)現在、日経平均株価の予想EPSは1,717円67銭と計算されます。4/27(金)に付けた1,719円04銭より下回っていますが、おおむね過去最高水準となっています。5/7(月)の予想PERは13.08倍であり、それと予想EPSを掛け合わせると、下のように、日経平均株価の5/7(月)終値(四捨五入の関係で若干誤差が出ます)になります。
22,467円16銭(日経平均)=1,717円67銭(予想EPS)×13.08倍(予想PER)
しかし、もし予想PERが14倍とか15.5倍であれば、
・1,717円67銭×14倍=24,047円38銭
・1,717円67銭×15.5倍=26,623円89銭
となり、日経平均株価の水準がもっと高くなっていることは図4からも視覚的にご理解頂けると思います。このように、予想PERが今より高くなるためには、言い換えれば、市場心理が上向くためにはどうなればよいのでしょうか。
図5をみる限り、日経平均株価の予想EPSは外為相場の影響をある程度、強めに受けていると考えられます。外為市場で円安・ドル高が進めば、企業業績に対する楽観的な見方が広がり、予想PERは上昇しやすいことになります。
一時に比べ、円安・ドル高の勢いは一服したとはいえ、米金利の先高観は根強いとみられます。今後も、円安・ドル高が市場心理を上向かせ、予想PERの上昇を経て、日経平均株価を上昇させる可能性がありそうです。
もっとも、図5の赤線で囲んだ部分では、円高・ドル安の勢い以上に株価が下落しているように見受けられます。この辺は、国内政治不安や世界的な通商問題が影響している可能性があります。逆に言えば、国内政治不安や通商問題が鎮静化し、外為市場で円安・ドル高が続くなど、好材料が重なった場合、上の方でご説明した予想PER15.5倍に相当する水準まで、日経平均株価が上昇しても不思議ではないと思います。
図4:日経平均株価と予想PER12.5、14、15.5倍相当ライン
図5:日経平均株価の予想PERとドル・円相場
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。ドル・円相場は三菱UFJ銀行対顧客相場の公表データ。
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