4月相場が終わりました。日経平均株価の月末終値は、前月末比4.7%の上昇となりました。世界的な貿易戦争への懸念が後退する一方、朝鮮半島で緊張緩和が進んだことや、外為市場が円安基調となったことが追い風になりました。
5月相場はどうなるのでしょうか。株式市場には「Sell in May(5月に株を売れ)」という格言がありますが、今年も5月の日経平均株価は下がる可能性が大きいのでしょうか。
<今週のココがPOINT!>
4月の日経平均株価は3ヵ月ぶりに上昇 |
4月相場が終わりました。日経平均株価の月末終値は22,467円87銭となり、前月末比4.7%の上昇となりました。月次ベースとしては3ヵ月ぶりの上昇です。
3/22(木)にトランプ大統領が中国からの輸入へ600億ドルの関税を課す大統領令に署名して以降、米中が歩み寄りの姿勢を見せるなど、世界的な貿易戦争への懸念は後退しつつあります。また、朝鮮半島では、緊張緩和が進み、4/27(金)には南北首脳により、非核化と休戦を目指す「板門店宣言」が署名されました。一方、米長期金利の上昇を受け、外為市場では円安・ドル高が進み、東京株式市場にとって追い風となりました。
図1は過去3ヵ月間の日経平均株価の推移を示したものです。同平均株価はこれまで、100日移動平均線が強い上値抵抗ラインとなり、そこで跳ね返される展開となっていました。足元でも、3月下旬以降は上昇基調に転じた日経平均株価ですが、4月下旬は同移動平均線を抜き切れない日が続いていました。
図2および図3からも明らかなように、3月の米国市場は軟調で、外為市場でも一時、1ドル104円台まで円高・ドル安が進むなど、市場環境は不安定でした。多くの上場企業(3月決算企業)は、この頃に次年度の計画を練り始めるため、不安定な市場環境は、企業の慎重な業績予想につながりやすかったと考えられます。すなわち、株式市場では「2019年3月期の会社計画では、減益または微増益の慎重な予想を公表してくる企業が多いかもしれない」という不安が強く、それが上値を押さえてきた大きな要因であると考えられます。
こうした中、4/27(金)の東京株式市場では300社近い企業が決算を発表し、その多くで2019年3月期の会社予想利益が市場予想を下回りました。しかし、5/1(火)の日経平均株価は総じて堅調で、前営業日に上回った100日移動平均線を維持したのみならず、2/27(火)の取引時間中に付けた高値22,502円05銭を上回ってきました。外為市場で円安・ドル高が進んでいることもあり、企業業績への不安が後退していることが要因とみられます。
図1:日経平均株価は上値抵抗ラインとなってきた100日移動平均線を突破
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/05/01取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/04/30現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/05/01取引時間中
当面のタイムスケジュール〜我が国の連休中に米雇用統計が発表される予定 |
東京市場は5/3(木)〜5/6(日)がゴールデン・ウィークの後半で4連休となります。米国ではこの間の5/4(金)に雇用統計(4月)の発表が予定されています。最近は、非農業部門雇用者数よりも平均時給の増減にスポットが当たる傾向があります。足元、物価関連指標が微妙に強含んでいるだけに、要注意の経済指標と言えそうです。
したがって、5/2(水)までの取引において、東京市場の市場参加者はポジションを調整し、現金比率を高めておくことも、有効であると考えられます。
なお、上場企業の決算発表については、時価総額最大企業のトヨタ(7203)が決算発表を予定している5/9(水)が大きな転換期になりそうです。また、発表社数の面では800社以上の会社が決算発表を予定している5/11(金)が「峠」になると考えられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜日米で決算発表が本格化
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/1(火) | 日本 | ★決算発表 | JT、ヤマトHDなど29社 |
- | ※海外の多くの市場が休場(メーデー) | 上海、香港、台湾、パリなど | |
米国 | 4月ISM製造業景況指数 | 米国の企業マインドを計測 | |
米国 | 4月新車販売台数 | コンセンサスは年換算で1,710万台 | |
米国 | ☆決算発表 | アップル(日本時間では5/2未明) | |
5/2(水) | 日本 | ★決算発表 | 伊藤忠など36社 |
米国 | 4月ADP雇用統計 | コンセンサスは前月比19.8万人増 | |
5/3(木) | 米国 | FOMC結果発表(日本時間午前3時頃) | 今回は現状維持の見通し |
日本 | ◎東京市場は休場〜憲法記念日 | ||
米国 | 4月ISM非製造業景況指数 | 雇用、新規受注などの内訳にも注目 | |
5/4(金) | 日本 | ◎東京市場は休場〜みどりの日 | |
米国 | 4月雇用統計 | 非農業部門雇用者数のコンセンサスは19.0万人増 | |
5/8(火) | 日本 | ★決算発表 | 三菱重、三菱商、三井物など185社 |
中国 | 4月貿易収支 | 3月の輸出は前年比2.7%減 | |
5/9(水) | 日本 | ★決算発表 | トヨタなど239社 |
5/10(木) | 日本 | 4月景気ウォッチャー調査 | いわゆる街角景気 |
日本 | ★決算発表 | 三菱ケミカル、パナソニックなど420社 | |
中国 | 4月新規銀行融資・4月マネーサプライ | おカネの流れは円滑か? | |
米国 | 4月消費者物価指数 | 3月(除食品・エネルギー・前年同月比)は2.1%の上昇 | |
米国 | ☆決算発表(2〜4月期) | エヌビディア(日本時間では11日の午前3時) | |
5/11(金) | 日本 | ★決算発表 | 大成建、三井不、NTTなど838社(社数ベースでは最多) |
米国 | 5月ミシガン大学消費者信頼感指数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 5/2(水)、6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】「Sell in May(5月に株を売れ)」は本当か? |
株式市場では「Sell in May」という格言があります。一般的には「5月に株を売れ」と理解されています。
正確には「Sell in May, and go away; don't come back until St Leger day」という格言です。直訳すれば「5月に(株を)売ってどこかに行っていなさい。そして、セントレジャーの日までは戻ってこないように」となります。ちなみに「セントレジャー」とは9月に英国のアスコット競馬場で開催される3歳馬の大レースで、今年は9/15(土)の予定です。「5月に株を売り、9月に戻ってきた方が良い」という意味に捉えられます。
これは、5月相場が下がりやすいことを意味している訳ではありません。6月から9月にかけて、株価が下がりやすい傾向にあるため、5月が売りタイミングになるという意味です。この格言は正しいのでしょうか。図4は、過去30年間における日経平均株価の月別平均騰落率を示したものです。確かに、6月から9月にかけ、パフォーマンスは悪くなる傾向にあり、この格言は日本市場でも適用できるかもしれません。
この時期は「夏枯れ」の時期を含んでおり、海外投資家の市場参加も減りやすい時期になります。そのため、少しの悪材料でも大きく下げやすい季節と考えられます。
ただ、注意も必要です。図5は日経平均株価について、8月末終値を5月末終値と比較した騰落率を計算し、過去30年間について時系列でグラフ化したものです。この時期の成績の悪さは、平成バブル崩壊後の1990年や1991年、ITバブル崩壊後で持ち合い解消・代行返上売りが増えた2001年・2002年の成績が足を引っ張った結果であるとも言えるのです。逆に商いが薄くなりやすい分、好材料が出た時は大きく動きやすく、1995年や2003年は大幅高となっています。
株式市場に伝えられている格言であり、その教訓は十分に参考にすべきですが、現実の投資環境をみながら、冷静に対応していくべきなのでしょう。今後、為替の安定が続き、日経平均の予想EPS(一株利益)の過去最高更新が続いた場合、仮に、6月から9月にかけて株価が下がった場合も、下げは限定的となり、下げた所が買い場になる可能性も大きそうです。
図4:日経平均株価の月別平均騰落率(過去30年)
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。過去30年間の日経平均株価の月別平均騰落率を単純平均したもの
図5:日経平均株価の5〜8月の騰落率(過去30年)
- 日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。日経平均株価について、8月末終値を5月末終値と比較した騰落率を計算し、過去30年間について時系列でグラフ化したもの
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