米国株の連日の急落を受け、日経平均株価も連日で大きく下落しています。2/6(火)の日経平均株価は一時21,000円近辺まで下落しました。「適温相場」は終了した可能性が出てきたと考えられます。
しかし、日経平均株価の下げはすでに「行き過ぎ」の領域に入っていると考えられます。それはなぜでしょうか。
「適温相場」は終了? |
株式市場が世界的に波乱となっています。2/2(金)の米国株式市場では、NYダウが前日比665.75ドル安と急落。2/5(月)も波乱は続き、NYダウは1,175.21ドル安という過去最大の下げを演じました。1/26(金)に付けた過去最高値からの下落率は8.5%に達しました。
2/2(金)に発表された雇用統計で賃金上昇圧力の強まりが明らかになり、米長期金利が上昇したことから「適温相場」が転機を迎えたと捉えられたことが主因と考えられます。1月の平均時給は前年同期比で2.9%増となり、市場予想(2.6%増)を大幅に上回り、金融危機(2008年)以前の3%台に接近してきました。景気が力強く拡大する中、トランプ政権による法人減税の後押しを受け、賃金の上昇が加速してきたことが鮮明となりました。
雇用統計で賃金上昇圧力の強まりが明らかになったことを受け、米長期金利(10年国債利回り)は2/2(金)に2.84%まで上昇。米株式相場については「景気・企業業績は拡大しているものの、物価上昇圧力は鈍いため、FRBによる金利引き上げ速度は緩慢なものにとどまり、息の長い上昇相場が続く」という「適温相場」持続への期待が相場を支えてきたと考えられます。今回の平均時給の伸びにより、そうした期待が崩れる可能性が強まってきました。
こうしたNY株の波乱を受け、日本株も連日で大幅安になっています。日経平均株価は1/23(火)に24,124円15銭の昨年来高値を付けた後は上値の重い展開でしたが、米国株急落のあおりを受け、2/5(月)は前週末比592円45銭安、さらに2/6(火)は前日比1,071円84銭安と2営業日連続の急落となりました。
ただ、後述するように、日本株の下げはすでに「行き過ぎ」の領域に到達していると考えられます。
図1:日経平均株価(日足)〜一時21,000円近辺まで下げ
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/02/06取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/02/05現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/02/06取引時間中
当面のタイムスケジュール〜決算発表は一巡へ |
当面は決算発表が最重要イベントとみられます。2/6(火)にトヨタ(7203)、2/7(水)にソフトバンクグループ(9984)の決算発表が終了する予定であり、質の面では決算発表のピークアウトはこのあたりであると考えられます。量の面では、2/9(金)に500数十社の発表が予定されており、名実ともに決算発表はピークアウトを迎える形になります。
世界的な株価波乱を受けて、東京株式市場も連日「全面安」に近い取引になりましたが、決算発表後は業績の良し悪しにより、株価の反発力に違いが出てくることもあります。また、日本企業の業績拡大が再確認され、日本株の反発を促される可能性も十分ありそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜重要な経済指標、重要な企業の決算発表が目白押し
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
2/6(火) | 米国 | 1月ISM非製造業景況指数(総合) | 内訳としての雇用指数等にも注目 |
日本 | ★決算発表178社 | トヨタ、三菱ケミカル、古河電工他 | |
2/7(水) | 日本 | ★決算発表211社 | ソフトバンク、三菱地所他 |
2/8(木) | 中国 | 1月貿易統計 | 輸出・輸入ともに拡大していることが望ましい |
日本 | 1月東京オフイス空室率 | 12月は3.12% | |
日本 | ★決算発表268社 | 日産、ニコン他 | |
2/9(金) | 中国 | 1月消費者物価指数 | 12月は前年同期比+1.8% |
韓国 | 平昌冬季五輪開幕 | ||
日本 | ★決算発表530社(最大のヤマ場) | NTT、三井不動産他 | |
2/12(月) | 日本 | ◎東京市場は休場(振替休日) | |
2/13(火) | 日本 | ★決算発表348社 | 電通、住友不動産他 |
2/14(水) | 日本 | 10〜12月期GDP | コンセンサス(前期比・年率)は+0.9% |
日本 | ★決算発表333社 | リクルートHD、郵政3社、第一生命、東京海上他 | |
米国 | 1月消費者物価指数 | コンセンサス(食品・エネルギーを除く)は前年同月比+1.7% | |
米国 | 1月小売売上高 | 米個人消費の勢いは? | |
2/15(木) | 日本 | 12月機械受注 | 民間設備投資を占う |
中国 | 春節の大型連休(〜21日) | インバウンド消費の動向を左右 | |
米国 | 1月鉱工業生産 | ||
米国 | 2月フィラデルフィア製造業景況指数 | 企業マインドは? | |
2/16(金) | 北朝鮮 | 故金正日総書記生誕75日 | |
米国 | 2月ミシガン大学消費マインド指数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】すでに「買い場」に到達!?〜予想PERが「アベノミクス相場」スタート時の水準に |
今回の株価下落の「震源地」は米国であると見受けられます。したがって、米国株が下げ止まれば日本株も反発に転じる可能性が大きいと考えられます。NY株が過去最高値から1割下げると24,000ドル近辺であり、その水準が接近してきたことで、NY株の反転は近いと予想されます。
2/5(月)の米国市場では、株価急落の引き金を引いた米長期金利自体は逆に低下し、2.71%(-0.14%)となっています。長期金利の上昇がいったん落ち着けば、株価も当面の落ち着きを取り戻すと考えられます。減税やインフラ投資の拡大をテコに、米国経済の拡大は続くとみられ、過度の懸念は不要とみられます。
こうした中、2/6(火)の東京株式市場では、取引時間中の日経平均株価は一時21,078円まで下落しました。この水準の日経平均株価はすでに当面のボトム圏に入っている可能性が大きそうです。予想PERがボトム圏とみられる水準まで低下したためです。
2/5(月)時点の日経平均株価予想EPS(一株利益)は1,567円52銭と計算されます。
21,078円(2/6の安値)÷1,567.52(予想EPS)=13.4倍(予想PER・試算値)
ちなみに、「アベノミクス相場」がスタートしたと考えられる2012/11/14時点での予想PERは13.6倍でした。予想PERが市場心理を反映するものであると考えるならば、予想PERは一時、「アベノミクス相場」スタート時点の水準まで低下してしまったと考えられます。また、この数年、日経平均株価の予想PERはおおむね13.5〜16.5倍近辺で推移してきました。予想PERはその下限近辺まで低下したと考えることもできます。
さらに、テクニカル的には日経平均株価が25日移動平均から大きくかい離すると、株価が逆方向に反転しやすくなると考えられます。最近の株式相場では25日移動平均線±5%程度が目安と考えられますが、まれに世界的な株価波乱を伴うようなケースでは、同かい離率は±7〜8%が目安になると考えられます。2/6(火)の日経平均株価終値は25日移動平均線からのかい離率が-7.98%に達しています。したがってテクニカル的にも、日経平均株価は「下げ過ぎ」であると考えられます。
これらから、日経平均株価はすでに「売られ過ぎ」の水準に達している可能性が大きく、反転は近いように思われます。
図4:日経平均株価と予想PER13.5倍、15.0倍、16.5倍相当水準
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/02/06現在
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