日経平均株価は1/23(火)に26年2ヵ月振りに2万4千円の大台を回復しましたが、その後は5営業日続落となっています。特に1/30(火)は下げ幅が一時400円近くに達する波乱となっています。
この動きは、株価上昇局面での一時的な「調整」に過ぎないのでしょうか。それとも「下落」相場の始まりなのでしょうか。投資家はどう考えるべきなのでしょうか。
東京株式市場が波乱の展開 |
日経平均株価は1/23(火)に26年2ヵ月振りに2万4千円の大台を回復しましたが、その後は5営業日続落となっています。特に1/30(火)は下げ幅が一時400円近くに達する波乱となっています。
(1)日経平均株価が一時2万4千円を回復したことで、好調な企業業績が株価に相当織り込まれたと考えられること
(2)国内上場企業の決算発表(10〜12月期)で市場予想を下回り、株価が下がる銘柄も散見されたこと
(3)年明け直後の1ドル113円台から、1/26(金)には同108円台前半まで円高・ドル安が進んだこと
(4)米10年国債利回りが約3年ぶりに2.7%近くまで上昇してきたこと
(5)米株式市場で時価総額トップのアップルが「iPhoneX」の減産観測を背景に、株価が年初来でマイナスに転じたこと
(6)1/31(水)〜2/2(金)に重要日程が目白押しになっており、ポジション調整の売りが出やすかったこと
等が株価波乱の要因になっていると考えられます。1/30(火)はアジア市場の株式市場も売りが先行したこと、日経平均株価が25日移動平均線(1/29現在では23,483円)を下回ってきたことで、株価下落が加速する展開になりました。
もっとも、株式市場では上記に箇条書きした要因が明確に下落要因と捉えられていないように思われます。現状では「状況証拠」を集めてみたという色彩が強いのが現実です。
NYダウは1/26(金)に26,616ドルと過去最高値を更新し、その後1/29(月)に反落したに過ぎません。米国株をけん引役とする上昇相場が依然として続いている可能性もありそうです。
図1:日経平均株価(日足)〜1/23(火)に2万4千円を付けた後は5営業日続落
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2018/01/30現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/01/29現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2018/01/30取引時間中
当面のタイムスケジュール〜重要な経済指標、重要な企業の決算発表が目白押し |
1月下旬から2月・月替わりにかけては、重要な経済指標、重要な企業の決算発表等が目白押しとなっています。
経済指標についてはISM製造業指数(1月)、米雇用統計(1月)の発表に注目です。このうち、後者については非農業部門雇用者数の市場コンセンサスが前月比18万人増、平均時給が前年同月比2.6%増と予想されています。
決算発表については、米国では日本時間1/31(水)に重要企業の発表が多くなっています。また、日本に取引先が多いアップルについては2/1(木)の発表が予定されています。
一方、日本企業の決算発表も佳境を迎えることになります。発表社数ベースで第1のヤマ場は1/31(水)で378社の発表が予定され、任天堂や三井住友FGなど重要企業の決算発表が相次いで行われます。さらに最大のヤマ場は2/9(金)で544社の企業で決算発表が予定されています。なお、時価総額で最大企業のトヨタは2/6(火)に決算発表の予定です。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜重要な経済指標、重要な企業の決算発表が目白押し
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
1/30(火) | 日本 | 12月の失業率/有効求人倍率 | 11月の有効求人倍率は1.56倍 |
日本 | ★決算発表194社 | 村田製、キヤノン、東エレク、ドコモ他 | |
ドイツ | 10〜12月期GDP | 前年同期比+2.6% | |
1/31(水) | 米国 | 1月コンファレンスボード消費者信頼感指数 | |
日本 | 12月鉱工業生産 | ||
日本 | ★決算発表378社(第1のヤマ場) | コマツ、任天堂、三井住友FG、みずほFG他 | |
米国 | 1月ADP雇用統計 | 12月は25万人増 | |
米国 | ☆決算発表 | FB、マイクロソフト、クアルコム、ボーイング他 | |
2/1(木) | 米国 | FOMC結果発表(午前4時頃) | 米国時間で31日(水)発表。コンセンサスでは政策変更なし。 |
米国 | ★決算発表92社花王、武田薬、新日鉄他 | 花王、武田薬、新日鉄他 | |
中国 | 1月Caixin中国製造業PMI | ||
米国 | ☆決算発表 | アップル他 | |
2/2(金) | 米国 | 1月ISM製造業景況指数(午前0時) | 米国の企業マインドは? |
日本 | ★決算発表189社 | ソニー、デンソー、ホンダ、三菱電他 | |
米国 | 1月雇用統計 | 最近は平均時給に市場の関心 | |
米国 | ☆決算発表 | アルファベット、エクソンモービル | |
2/3(土) | 米国 | ミシガン大学消費者マインド指数(確報値) | 米国家計の消費マインドは? |
2/5(月) | 日本 | ★決算発表160社 | 住友電工、三菱商事他 |
2/6(火) | 米国 | 1月ISM非製造業景況指数(総合) | 内訳としての雇用指数等にも注目 |
日本 | ★決算発表183社 | トヨタ、三菱ケミカル、古河電工他 | |
2/7(水) | 日本 | ★決算発表208社 | ソフトバンク、三菱地所他 |
2/8(木) | 中国 | 1月貿易統計 | 輸出・輸入ともに拡大していることが望ましい |
日本 | 1月東京オフイス空室率 | 12月は3.12% | |
日本 | ★決算発表264社 | 日産、ニコン他 | |
2/9(金) | 中国 | 1月消費者物価指数 | 12月は前年同期比+1.8% |
日本 | ★決算発表544社(最大のヤマ場) | NTT、三井不動産他 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日(月日は現地時間)
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は日本時間(ただし、表2の中央銀行会議の結果発表日程は現地時間)を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】押し目買いタイミングが接近か? |
日経平均株価の現在の予想EPSに7%上乗せし、それを予想PER15倍まで買った場合に、日経平均株価は24,000円を少し超えた水準になるという計算が成り立ちます。すなわち、市場参加者の中に「日経平均株価は来期7%程度の増益については織り込み済みになった」と考える向きが出てきても不思議ではありません。
そうした中、外為市場で円高・ドル安が進んだことで、来期の増益率が7%よりも大きくなるという期待が後退し、それが株価の下げにつながっている可能性がありそうです。また、海外に比べ割安で、かつ拡大が続く企業業績は日本株の魅力であると考えられます。しかし、米税制改革法案の成立で、少なくとも短期的には、米国企業の利益の伸び率が魅力的に映ることになりそうです。米国株が好調な割には、日本株の動きが冴えなくなっている理由は、その辺に求められるかもしれません。
しかし、その米国株にも不安要素が出てきました。図4は米10年国債利回りの動きですが、2.5〜2.6%近辺が抵抗ライン的な存在になってきましたが、ここにきてそこを突破してきたために、3%も意識されるようになってきました。
長期金利の上昇は一般的に、好調な景気・企業業績を反映していると考えられ、その面では株式市場のプラス要因になると考えられます。しかし、長期金利がある程度の水準まで上昇してきてしまうと、金融引き締め効果が強まり、株価に悪影響が出てくると考えられます。米証券会社の間にはその水準を米10年国債利回りで2.75%前後としている所が多いようです。1/29(月)の米国株の下げはそうした長期金利の動きが影響している新しい動きであるとも捉えられ、今後も要注意であると考えられます。
また、米株式市場で時価総額が最大のアップル株が「iPhoneX」の減産観測を背景に、株価が年初来でマイナスに転じたことも注意すべきポイントになっているとみられます。同社株はこれまで、米国株の上昇をけん引してきた銘柄のひとつであり、その株価が下落に転じた場合、市場に与える影響も大きいと予想されるためです。
もっとも、円高についてはやや行き過ぎとみられ、再び円安・ドル高に転換する可能性もありそうです。安倍政権の最重要課題が憲法改正であるならば、さらに2019年10月に消費税引き上げを実施しなければならないのであれば、今、金融政策の転換というリスクを取る必要は乏しいと思われます。マイナスの物価がゼロになった程度で「脱デフレ」と認識し、量的緩和を終わらしたものの失敗に終わった2006年の例があります。すなわち、「日銀が国債金利の誘導目標を引き上げる」との市場の期待は早急過ぎ、円高がさらに加速する可能性は小さいと考えられます。
月末が接近していることに加え、1/31(水)〜2/2(金)に重要日程が目白押しになっており、ポジション調整の売りが出やすかったことで、不安要因が増幅され、株価の下げが加速した可能性が大きそうです。「225の『ココがPOINT!』」では、今回の株価波乱は一時的な「調整」に過ぎず、再び株価は上昇に転じると考えられます。
(1)株価は企業業績の今期上振れ分については十分織り込んでいないと考えられること
(2)欧米と比較し、日本の緩和的金融政策は長期化するとみられること
(3)米長期金利の上昇や原油価格の上昇が円安・ドル高要因になり、株高につながる可能性があること
2017年末の日経平均株価終値は22,764円でしたが、株価の下げでその水準が接近しており、買い場は近いと考えられます。
図4:米10年国債利回り(月足・過去5年)
図5:アップル(日足)
※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2018/01/29現在
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