2017年の日経平均株価はここまで堅調に推移してきました。金融政策の面で米国が出口戦略を巧みに進め、投資家のリスク許容度が高めに維持される中、世界経済が順調に拡大を続けていることが背景とみられます。
そんな2017年の東京株式市場も残す所あとわずかになりました。日経平均株価は12/25(月)に年初来高値(これまでの高値は12/11に付けた22,938円73銭)を更新しましたが、引き続き23,000円の壁を抜き切れないでいます。年末休暇を取る市場参加者が増えたとみられ、東証1部の売買代金はこの日、1兆5,458億円と約2年ぶりの低水準まで減少しました。チャート的には「三角保ち合い」の形になっており、「嵐の前の静けさ」の様相を呈しています。
2018年はどうなるのでしょうか。今回の「225の『ココがPOINT!』」では足元の株式相場を整理するとともに、2018年の重要日程をチェックし、それを参考にしながら株式相場の方向感を占ってみたいと思います。
<今週のココがPOINT!>
世界株高の中で上昇した2017年の日経平均株価 |
12/12(火)の「漢字の日」に、清水寺(京都市)で発表された「今年の漢字」は「北」になりました。核実験やミサイル発射実験を繰り返した北朝鮮が念頭にあったことは間違いのない所でしょう。2017年は北朝鮮問題を中心とする地政学的リスクや、今年から本格的に始動した米トランプ大統領、欧州等でのポピュリズムの台頭等に振り回された1年になりました。
しかし株式市場は世界的に堅調な年になりました。12/22(金)現在、年初来の株価上昇率は日経平均株価が20%、米NYダウが25%、独DAX指数が14%、香港ハンセン指数が34%等となっています。金融政策の面で米国が出口戦略を巧みに進め、投資家のリスク許容度が高めに維持される中、世界経済が順調に拡大を続けていることが背景とみられます。IMF(国際通貨基金)の推計によれば、世界経済の成長率は2016年の3.2%(世界金融危機以来最低)から2017年は3.6%に加速したとみられています。
こうした中、我が国では上場企業の業績が順調に拡大しました。日経平均株価の予想EPS(一株利益)は2016年末の1,181円36銭から12/22(金)には1,513円14銭と28%超増加しました。日経平均株価の上昇は企業業績の拡大を素直に評価したものと考えることができそうです。さらに、総選挙で与党が大勝したことによる政治の安定や、年間を通じて安定していた為替相場等も追い風になったとみられます。年末にかけては米国で税制改革法案が成立の方向となり、米企業業績の更なる拡大に向け期待が高まったことも支援材料になりました。
そして、2017年の東京株式市場も残す所あとわずかになりました。日経平均株価は12/25(月)に年初来高値(これまでの高値は12/11に付けた22,938円73銭)を更新しましたが、引き続き23,000円の壁を抜き切れないでいます。年末休暇を取る市場参加者が増えたとみられ、東証1部の売買代金はこの日、1兆5,458億円と約2年ぶりの低水準まで減少しました。チャート的には「三角保ち合い」の形になっており、「嵐の前の静けさ」の様相を呈しています。
図1:日経平均株価(日足)〜足元は「三角保ち合い」を形成
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/12/26取引時間中
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2017/12/22現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/12/26取引時間中
当面のタイムスケジュール〜2018年の年初はあわただしくスタートか |
12/25(月)・12/26(火)と世界では多くの株式市場が休場になっています。これを境に年末休暇に入る市場参加者も増えるとみられます。表1でも明らかな通り、年内の重要日程はほぼ一巡しているとみられます。我が国の株式相場は平穏な状態で「大納会」を迎えることができそうです。
ただし、2018年の年初はいきなりあわただしくなりそうです。米国株式市場は1/2(火)から取引再開となり、1/3(水)には企業マインドを計る重要な経済指標であるISM製造業景況指数(12月)が発表されます。1/5(金)には米雇用統計(12月)の発表が予定されています。同統計では非農業部門雇用者数の増減が注目されますが、最近は「時間当たり平均賃金」がインフレ率を左右する重要な指標として注目されています。
事前の市場コンセンサスでは、米雇用統計(12月)において「時間当たり平均賃金」は前年同月比2.5%増えると予想されています。実際の数字がそれを下回ると米金利低下・円高要因、上回ると米金利上昇・円安要因になると考えられ、十分注視する必要があると考えられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜2018年の年初はあわただしくスタートか
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
12/26(火) | 日本 | 11月全国消費者物価指数 | 10月は前年同月比(生鮮食品を除く)+0.8% |
日本 | 有効求人倍率/失業率 | 10月有効求人倍率は1.55倍(74/1=1.64倍以来の高水準) | |
日本 | 日銀金融政策決定会合議事要旨 | 10/31結果発表分 | |
12/27(水) | 米国 | 12月コンファレンスボード消費者信頼感指数 | コンセンサスは128.0 |
米国 | 11月中古住宅販売成約指数 | コンセンサスは前月比-0.5% | |
12/28(木) | 日本 | 日銀会合「おもな意見」 | 12/21発表分 |
12/29(金) | 日本 | 大納会 | 終値は日経平均株価終値は19,114円37銭 |
12/31(日) | 中国 | 12月製造業PMI | 11月は51.8 |
1/1(月) | 日本 | 休眠預金活用法施行 | |
日本 | 「つみたてNISA」開始(1月〜) | ||
1/3(水) | 欧州 | EUが「第2次金融商品市場指令」を導入 | いわゆる「MiFID2」導入 |
米国 | 12月ISM製造業景況指数(日本時間1/4 0:00) | コンセンサスは58.2(前月と同水準) | |
米国 | FOMC議事録(12/13発表分) | ||
1/4(木) | 日本 | 大発会 | |
米国 | 12月ADP雇用統計 | コンセンサスは前月比19.0万人増 | |
1/5(金) | 米国 | 12月雇用統計 | 非農業部門雇用者数のコンセンサスは前月比+18.5万人増 |
米国 | 12月ISM非製造業指数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2018年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火)、9/19(水)、10/31(水)、12/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水)、9/26(水)、11/8(木)、12/19(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 1/25(木)、3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木)、9/13(木)、10/25(木)、12/13(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】2018年はさらなる上昇に期待〜年後半にはリスク要因も? |
2018年の株式相場も堅調に推移しそうです。IMFの見通しによると世界経済成長率は2017年3.6%に対し、2018年も3.7%と拡大が加速する見込みです。米国では税制改革により、S&P500採用企業の予想EPSは6%程度上乗せされるとの分析もあるようです。今後、インフラ整備計画が具体化してくるとみられ、米株式市場の上昇に期待できそうです。
そうした中、我が国でも企業業績の拡大が続きそうです。日経平均株価採用企業の予想EPSは、市場コンセンサスのある企業だけでの集計では来年度に12%程度増える予想(12/26現在)となっています。12/22(金)現在の日経平均株価の予想EPS(一株利益)は1,513円ですので、これが2018年末までに12%増えると1,694円と計算されます。
この1,694円に対して予想PERを何倍でかけるかによって、目安となる株価が変わってくる計算です。過去2年間程度、日経平均株価は予想PER13.5〜16.5倍のレンジでおおむね推移しています。
1,694円×13.5倍=22,869円
1,694円×16.5倍=27,951円
2018年末頃は上記の計算を参考にすると、おおむね23,000〜28,000円で推移していると予想されます。ただし、海外経済の減速や円高等で予想EPSが低下したり、リスク許容度の低下で予想PERが低下する場合は、このレンジが切り下がる可能性があります。また、3月決算企業の本決算が実施される2018年4月下旬から5月中旬において、予想EPSがいきなり12%切り上がるとは限らない(企業の業績予想は保守的な傾向があるため)点も注意が必要です。
なお、2018年は海外で選挙等の日程が少ないことは安心材料と言えるでしょう。反面、2019年10月に消費税率が再引き上げされる予定であることから、再来期の業績は読みずらくなりそうです。仮に来期が企業業績のピークとの見方が増えた場合、予想PERが低下して株価が下落する可能性も注意が必要です。その意味では、年後半に「波乱」となる可能性もありそうです。
表3:2018年のおもな重要日程
月 | 日 | おもな予定 |
---|---|---|
1 | 1 | 休眠預金活用法施行 |
「つみたてNISA」開始(1月〜) | ||
「ロシアにおける日本年」「日本におけるロシア年」がスタート | ||
ECBが資産買入額を縮小(1月〜) | ||
3 | EUの第2次金融商品市場指令(MiFID2)が施行 | |
8 | 金正恩氏誕生日 | |
19 | 通常国会召集(6月頃まで)(予定) | |
20 | 北米国際自動車ショー(デトロイト)一般公開 | |
23 | 世界経済フォーラム年次総会(ダボス) | |
2 | 1 | パチンコの出玉を現行の3分の2に規制 |
3 | イエレンFRB議長が任期満了 | |
9 | 第23回冬季五輪(韓国・平昌〜2/25) | |
15 | 中国・春節(〜21日) | |
3 | 1 | イタリア総選挙(5月までのどこかで?) |
中国全国人民代表会議(月内) | ||
8 | ジュネーブ国際自動車ショーの一般公開開始 | |
18 | ロシア大統領選挙(第1回投票) | |
19 | 岩田・中曽、日銀副総裁が任期満了 | |
G20財務相・中銀総裁会議(ブエノスアイレス) | ||
29 | 「東京ミッドタウン日比谷」が開業 | |
4 | 4 | 日銀が量的・質的金融緩和を導入してから5年 |
8 | 日銀・黒田総裁が任期(5年)満了 | |
20 | G20財務相・中央銀行総裁会議(ワシントン) | |
3月決算企業の決算発表が本格化(4月下旬〜) | ||
25 | 北朝鮮建軍節 | |
27 | 北京モーターショー開幕 | |
5 | 15 | ラマダン開始(〜6/14) |
6 | 8 | G7首脳会議(カナダ・シャルルボワ、9日まで) |
12 | 米ゲーム見本市「E3」(ロサンゼルス) | |
14 | サッカーW杯(〜7/15) | |
15 | 観光庁が「民泊法」を施行 | |
22 | OPEC総会(ウィーン) | |
7 | 21 | G20財務相・中央銀行総裁会議(ブエノスアイレス) |
24 | 東京五輪開幕まで2年 | |
28 | 日本全国で皆既月食を観測 | |
31 | 火星大接近 | |
8 | 1 | ジャクソンホール会合(月内) |
9 | 16 | 安室奈美恵さんが引退 |
20 | 東京ゲームショウ | |
30 | 安倍首相が自民党総裁2期目任期満了 | |
10 | 1 | 売買単位を100株に統一する期限 |
4 | パリモーターショーの一般公開開始 | |
7 | ブラジル大統領選挙(第1回投票) | |
10 | 朝鮮労働党創建記念日 | |
16 | 家電・IT見本市(シーテック)開幕 | |
11 | 4 | 秋篠宮家長女眞子さまが結婚式 |
6 | 米中間選挙 | |
11 | 中国・春節(〜21日)独身の日 | |
30 | ロサンゼルスモーターショーの一般公開開始 | |
G20首脳会議(ロサンゼルス) | ||
12 | 3 | COP24開催 |
28 | 大納会 |
※Bloomberg、各種報道等をもとにSBI証券が作成。予定は201712/26時点のもので、今後予告なく変更される場合があります。また、この表に掲載されているスケジュール以外の重要スケジュールもあるとみられます。
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