日経平均株価は11/9(木)に一時23,382円15銭まで上昇した後は調整に転じ、11/16(木)には一時21,972円34銭、12/1(金)には22,119円21銭の安値を付けました。約2ヵ月で平均株価が4千円超も上昇したこともあり、自律調整局面に入っていたと考えられます。
しかし、日経平均株価は25日移動平均線を長期間割り込むことなく、そこから短期間で切り返しに転じたこと、11/9(木)の高値示現から1ヵ月を経過し、重要日程もある程度消化したことから調整局面を脱した形になりました。12/11(月)終値は22,938円73銭となり、11/7(火)に付けた終値ベースの年初来高値を更新しました。約26年ぶりの株価水準を回復したことになります。
株式市場では大納会に向けて株価が上昇することを「掉尾の一振」と言っています。確かに、年末に向けて株価は上昇しやすいという傾向はあるようです。今年もそうなるのでしょうか。
年末株高に向けて準備は整った? |
日経平均株価(図1)は9/8(金)に19,239円52銭の安値を付け、その後11/9(木)の23,382円15銭まで上昇しました。約2ヵ月で株価は4,142円63銭(上昇率は21.5%)上昇したことになります。さすがに「上昇ピッチが速すぎる」との警戒感が台頭しても不思議ではない上昇スピードでした。日経平均株価のその後の下落は、こうした急ピッチの上昇に対する反動という側面が強かったと考えられます。
この間、米国でロシアゲート問題が深刻化するなど、米政治不安が日経平均株価下落の一因であったことは確かです。しかし、米税制改革が徐々に進展をみせたことで、こうした懸念も後退することになりました。また、中国経済への不透明感を指摘する声も聞かれ、日本株への影響も懸念されました。しかし、同国の貿易統計やマネーサプライ関連指標の動きをみる限り、同国経済の急減速を示す材料は揃っていないように思われます。
12/8(金)に発表された米雇用統計(11月)では、雇用者数の伸びが市場予想を上回る反面で、平均時給は予想を下回るなど、相変わらず強弱感が対立する内容でした。「雇用は強いものの、賃金上昇圧力は弱い」という米労働市場のトレンドに変化はなく、この日の米国市場ではNYダウ(図2)が過去最高値を更新しました。それを受けた12/11(月)の東京株式市場では、日経平均株価の終値が22,938円73銭となり、11/7(火)に付けた終値ベースの年初来高値を更新しました。約26年ぶりの株価水準を回復したことになります。テクニカル的には、日経平均株価が25日移動平均線を長期間割り込むことなく、そこから短期間で切り返しに転じたこと、11/9(木)の高値示現から1ヵ月を経過し、重要日程もある程度消化したことから調整局面を脱した形になりました。
米雇用統計発表や債務上限問題(22日までのつなぎ予算を確保)等の「関門」を通過し、投資家のリスク許容度が回復しやすくなってきたことで、内外で株価は上昇しやすくなってきたと考えられます。外為市場(図3)ではリスク回避の円買い需要が弱まり、やや円安・ドル高傾向が強まっています。また、後述するように年末の株価は上昇しやすい傾向にあります。日経平均株価は2万3千円台で年末を終わることができるかもしれません。
図1:日経平均株価(日足)〜12/11(月)に年初来高値を更新し、約26年ぶりの株価水準を回復
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/12/12現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2017/12/11現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/12/12取引時間中
当面のタイムスケジュール〜日米欧で金融政策を決める会合 |
当面のタイムスケジュールについては、金融政策を決める「中央銀行」の会合が日米欧で予定されており、一応の注意が必要であると考えられます。
米国時間で12/13(水)(日本時間12/14早朝)にはFOMC(米連邦公開市場委員会)の結果発表が予定されています。政策金利(上限)が1.25%から1.5%へ引き上げられることは、市場ではほぼ確実視されており、そのことが市場に大きな影響を与える可能性は小さいと思われます。しかし、2018年の利上げペースについて、それを示唆する動き・発言等があれば、為替、債券、株式の各市場に影響が出る可能性があり、注意が必要です。
欧州時間で12/14(木)にはECB(理事会)理事会が予定されています。すでに10/26(木)の同理事会で債券買入金額の縮小(2018年よりこれまでの月600億ユーロから同300億ユーロに半減)および買入期間の延長(2018/9まで)が決定されており、今回は「無風」となることが予想されています。また、12/21(木)には日銀金融政策決定会合が予定されています。
FOMCが終わると、2017年・年内の重要スケジュールはほぼ一巡した形になると思われます。したがって、12/14(木)以降はリスクがさらに取りやすくなると考えられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜日米欧で金融政策を決める会合
月日 |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
12/12(火) | ドイツ | 12月ZEW景況感指数 | 市場関係者350人に半年後の景況感をアンケート調査 |
12/13(水) | 日本 | 10月コア機械受注 | 9月は前年同月比-3.5% |
米国 | 11月消費者物価指数 | 10月(食品・エネルギーを除く)は前年同月比+1.8% | |
米国 | FOMC(米連邦公開市場委員会)結果発表 | 政策金利(上限)を1.25%から1.5%へ引き上げる公算大 | |
12/14(木) | 中国 | 11月小売売上高 | 10月は前年同月比+10.0% |
中国 | 11月固定資産投資 | 10月は前年同月比+7.3% | |
中国 | 11月鉱工業生産 | 10月は前年同月比+6.2% | |
欧州 | ECB理事会 | ||
米国 | 11月小売売上高 | 10月(自動車・ガソリンを除く)は前月比+0.3% | |
12/15(金) | 日本 | 12月日銀短観 | 9月の大企業・製造業業況判断指数は+22 |
米国 | 11月鉱工業生産 | 10月は前月比+0.9% | |
12/18(月) | 日本 | 11月貿易収支 | 10月は前年同月比+14.0% |
12/19(火) | 米国 | IFO企業景況感指数 | 約7千社のドイツ企業の現況・半年先景況感をアンケート |
米国 | 11月住宅着工件数 | 10月は前年同月比+13.7% | |
12/21(木) | 日本 | 日銀金融政策決定会合 | |
米国 | 11月中古住宅販売件数 | 10月は前月比+2.0% | |
米国 | フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | 米国の企業マインドは? | |
12/22(金) | 米国 | 11月耐久財受注(前月比) | 米民間設備投資の先行指標 |
米国 | 11月PCEコア指数 | 10月は前年同月比+1.4% | |
米国 | 11月新築住宅販売件数 | 10月前年同月比+6.2% | |
米国 | 12月ミシガン大学消費者マインド指数(確報値) |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | 2018年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 12/21(木) | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/13(水) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/14(木) | 1/25(木)、3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木) |
- ※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】アノマリーとしての「掉尾の一振」 |
株式市場には「掉尾の一振」という言葉があります。年末にかけて株価が上昇することを指しています。本当にそのような傾向はあるのでしょうか。
表3は、過去20年における各年の12月のラスト10営業日の日経平均株価の騰落率を示したものです。勝敗に直すと14勝6敗で、平均騰落率は+1.6%という計算になっています。アノマリーとして「年末に株価が上昇しやすい」という傾向は確かにあるようです。
この時期になると投資家の節税対策売りが一巡しやすいことや、翌年にかけての期待が膨らみやすいこと、ドレッシング買いが入る可能性のあること等が背景です。本年は、日経平均株価の調整が一巡した後で比較的タイミングも良いとみられるだけに、年末株高は十分期待できるかもしれません。
ただ、直近では昨年の年末株価は冴えない動きになるなど、株式市場が必ず「掉尾の一振」になる訳ではありません。さらに、1月の株式市場は波乱になるケースも多く、その点も念頭に入れておく必要があると考えられます。
表3 確かに「掉尾の一振」となる傾向はありそう
- BloombergデータをもとにSBI証券が作成。各年の12月のラスト10営業日の日経平均株価の騰落率を示した
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