東京株市場は強い展開が続いています。日経平均株価は1996/06/02に付けた「バブル崩壊後の高値」を取引時間中ベースでも、終値ベースでも上回り、1992/01/09(終値は23,113円64銭)以来25年10ヵ月ぶりの高値水準を回復しました。
ここから先、株式相場はどうなるのでしょうか。「バブル崩壊後の高値」を更新したことで、当面は特に大きな節目もなく、日経平均株価の動きは大きくなる可能性があります。ここは、今後の目処となる株価についてじっくり、考えるべきタイミングといえそうです。
日経平均株価が「バブル崩壊後の高値」を更新 |
日経平均株価は1989年末に38,915円87銭で過去最高値を付けた後、湾岸戦争も重なって急速な下げとなり、1992/8の「総合経済対策」(宮沢内閣)で底打ちするまで63.5%も下落しました。その後、同平均株価は20数年にも及ぶボックス相場を展開することになります。日経平均株価はその後、1996/6/26に終値ベースで22,666円80銭(取引時間中ベースでは22,750円70銭)の高値を付けますが、その水準はそうしたボックス相場の上限に位置しており、一般的に「バブル崩壊後の高値」と言われています。
11/7(火)の東京市場では日経平均株価がこの「バブル崩壊後の高値」を取引時間中ベースでも、終値ベースでも上回り、1992/1/9(終値は23,113円64銭)以来25年10ヵ月ぶりの高値水準を回復しました。
米国市場では主要株価が連日で過去最高値を更新しており、世界的にも株高傾向となっています。世界経済は順調に拡大していますが、インフレ高進が加速する兆しはほぼみられず、欧米の中央銀行が急激な金融引き締めを行う可能性は小さいとみられています。そうした中、外為相場が安定していることもあり、我が国の企業業績は好調で、業績予想の上方修正が相次いでおり、株式への資金シフトを促す要因となっています。
10/22(日)に投開票の衆議院選挙で安倍首相率いる与党が予想外の大勝となり、世界的にみても日本の政治の安定度が際立つ存在になったことも大きな要因とみられます。また、金融政策の面では、我が国が脱デフレへの糸口が見えないことから、今後も緩和的金融政策を継続せざるを得ないと考えられていることも、プラス要因になっていると考えられます。
もっとも、テクニカル的には過熱感が強まっていることも否めません。日経平均株価の25日移動平均線からのかい離率は、過熱を示唆する5%を上回り、RSI(相対力指数)も引き続き過熱圏とされる70%超で推移しています。スピード調整については、いつ訪れても不思議ではないと考えられます。
図1:日経平均株価(日足)〜1996/6/26のバブル崩壊後高値22,666円を更新
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/11/07現在
図2:NYダウ(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは米国時間2017/11/06現在
図3:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/11/07取引時間中
当面のタイムスケジュール〜我が国の決算発表が佳境に |
米雇用統計の発表(11/3)により、市場参加者は「米労働市場は強いものの、インフレ高進を懸念する程ではない」という現状を確認する形になりました。FRB議長の座を来年以降パウエル氏に譲ることになったイエレン氏が、最後の大きな仕事として、12/13(水)に結果発表となるFOMCで追加利上げを実施する可能性は濃厚と考えられますが、市場には織り込み済みになっているとみられます。
このため、米雇用統計発表後の東京市場では、上場企業の決算発表が最大の関心事になると思われますが、時価総額最大のトヨタ(7203)の発表が11/7(火)に終わり、実質的にはピークアウトのタイミングとなりつつあります。今回の決算発表は見通しの上方修正が相次いだ分、株式市場にとっては好材料であったとみられます。したがって、決算発表の一巡が好材料の出尽くし感の台頭につながる可能性については、注意が必要です。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜我が国の決算発表はピークアウトへ
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
11/7(火) | 日本 | ★決算発表〜トヨタ、味の素、NTTデータ他 | |
韓国 | 米韓首脳会議 | ||
11/8(水) | 日本 | ★決算発表〜清水建、日産自、NTTデータ他 | |
中国 | 10月貿易収支 | 輸出(コンセンサス)は前年同月比+7.2% | |
中国 | 米中首脳会議 | ||
米国 | 10年国債入札 | ||
11/9(木) | 日本 | 9月機械受注 | 船舶・電力を除く民需(8月)は前月比+3.4% |
日本 | 10月都心オフィス空室率 | 9月は3.17%(前月比-0.18%)。08/4(3.03%)以来の低水準 | |
日本 | ★決算発表〜資生堂、ブリヂストン、住友鉱、東芝他 | ||
中国 | 10月消費者物価 | 9月は前年同月比+1.6% | |
米国 | ☆決算発表〜ディズニー | ||
11/10(金) | 日本 | オプションSQ | |
日本 | ★決算発表〜東レ、三井不、NTT他 | 560社が発表を予定(発表社数ではピーク) | |
フィリピン | ASEAN首脳会議(〜11/14) | ||
ベトナム | APEC首脳会議(〜11/11) | ||
米国 | 11月ミシガン大学消費者マインド指数 | ||
11/11(土) | 中国 | 「独身の日」セール | |
11/13(月) | 日本 | ★決算発表〜みずほFG、T&D HD | |
11/14(火) | 日本 | ★決算発表〜電通、リクルート、三菱UFJ他 | 郵政3社も発表 |
中国 | 10月小売売上高 | コンセンサスは前年同月比+10.4%(年初来) | |
中国 | 10月固定資産投資 | コンセンサスは前年同月比+7.3%(年初来) | |
中国 | 10月鉱工業生産 | コンセンサスは前年同月比+6.3% | |
ドイツ | 7〜9月期GDP | コンセンサスは前年同期比+0.8% | |
ドイツ | 11月ZEW景況感指数 | 350人のアナリスト・市場参加者に半年先の景況感を質問 | |
11/15(水) | 日本 | 7〜9月期GDP(速報) | コンセンサスは前期比(年率)+1.4% |
日本 | 10月訪日外客数 | 1〜9月累計で2,120万人(前年同期比+17.9%) | |
米国 | 10月消費者物価指数 | 前回(コア)は前年同月比+1.7% | |
米国 | 10月小売売上高 | コンセンサスは前月比±0% | |
11/16(木) | 米国 | 11月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 | |
米国 | 10月鉱工業生産 | コンセンサスは前月比+0.5% | |
米国 | 11月NAHB住宅市場指数 | ||
米国 | ☆決算発表〜ウォルマート、アプライド・マテリアル | ||
11/17(金) | 日本 | ★決算発表〜SOMPO、東京海上他 | |
米国 | 10月住宅着工件数 | コンセンサスは前月比+5.0% |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | 2018年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 12/21(木) | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金)、6/15(金)、7/31(火) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/13(水) | 1/31(水)、3/21(水)、5/2(水)、6/13(水)、8/1(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 12/14(木) | 1/25(木)、3/8(木)、4/26(木)、6/14(木)、7/26(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】上昇基調は継続か? |
日経平均株価が「バブル崩壊後の高値」を更新しました。この高値は「日本経済の失われた20年」の高値であり、デフレに苦しむ東京株式市場の頭を押さえていた存在であるとも言えます。2015/6および1996/6の高値を上回り、テクニカル的には長期にわたって続いたボックス相場を上放れたということは、この上昇相場がかなり雄大な上昇相場につながる可能性を示唆しているとも考えられます。過小評価はむしろ危険といえるかもしれません。
平成バブル相場(1985/9〜1989/12)は、プラザ合意(1985/9)後に進んだ円高から日本経済を守るべく、金融緩和を進めたことが引き金になりました。土地や株式などの資産価値が上昇し、それを実力と「勘違い」してしまった銀行、家計、企業が借り入れを増やしてさらに投資に奔走し、最後ははじけてしまいました。現在、我が国では脱デフレを実現すべく、日銀が未曾有の金融緩和を行っており、行き場のないマネーが株式市場に流入しやすくなっているという点では、平成バブルと共通する点があるとみられます。
ただ、平成バブルと現在を比べ、明らかに異なるのは、企業業績と比べ、株価に割高感が乏しいことです。図4にもあるように、過去約2年間、日経平均株価は概ね予想PER15倍±10%(13.5〜16.5倍)の間を推移してきました。11/6(月)現在、日経平均株価は22,548円35銭ですが、予想EPS1,483円44銭であり、予想PERは15.2倍と「レンジ内」にとどまっています。特に割高感が強い訳ではありません。
仮に、日経平均株価が予想PER16.5倍と過去2年間の上限近辺まで評価された場合、
予想EPS1,483円×予想PER16.5倍=日経平均株価24,469円
と計算されます。日経平均株価に上値余地が残っている可能性はありそうです。
図4:日経平均株価(日足)と予想PER13.5倍、15.0倍、16.5倍相当ライン
- Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。
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