8月に入っても東京株式市場では歴史的なこう着相場が継続しています。しかし、時価総額最大企業であるトヨタの決算が無難に終わり、米雇用統計も市場にとって心地よい内容となり、無事通過となりました。当面は為替を大きく動かす材料がなくなり、市場の関心は好調な企業業績に向かいやすくなると考えられます。
こうした中、上場企業の業績拡大が鮮明になってきました。日経平均株価の予想EPSは8/7(月)に1,413円38銭と「過去最高」を更新しました。一方、日経平均株価の予想PERは8/7(月)に14.19倍まで低下し、6/15(木)以来の低水準となりました。株式市場の「期待」値が小さく、なかなかこう着相場から脱却できない東京株式市場ですが、少なくとも、日経平均株価の割安感は強まってきたと考えられます。
<今週のココがPOINT!>
日経平均株価に年初来高値更新のチャンス到来か? |
8月に入っても東京株式市場では歴史的なこう着相場が継続しています。8/1(火)〜8/8(火)の日経平均株価が取引時間に付けた安値は19,904円(8/1)、同高値は20,113円(8/2)とその差は209円しかありません。この間、同平均株価の日中値幅はほぼ連日で100円を下回っています。8/7(月)までNYダウが10営業日連続で高値を更新する反面、8/1(火)にはドル・円相場が一時109円台を付けるなど円高・ドル安圧力がくすぶり続けており、強弱材料が対立していることがこう着状態の要因になっていると考えられます。
こうした中、国内では8/4(金)に331社、8/7(月)に215社の上場企業が決算発表を行うなど、2017年4〜6月期の決算発表が大きなヤマ場を迎えています。そのうち、時価総額最大のトヨタ(7203)は為替見通しの見直し(円安方向)もあり、通期見通しが上方修正されるという決算になりました。その他、多くの企業でも市場予想を上回る決算が続きました。
一方、米国で雇用統計(7月)の発表(8/4)がありました。非農業部門雇用者数は事前予想(前月比18万人増)を上回り、前月比20.9万人増となりました。前月(23.1万人増)に続き20万人を超える増加となりました。失業率は16年ぶりの低水準になった5月に並ぶ4.3%まで低下(前月比-0.1%)しました。また、平均時給は前年同月比2.5%上昇し、事前予想(2.4%)を上回りました。雇用統計は総じて強い内容であったと見受けられます。
ただ、リーマンショック前には平均時給の上昇率(前年同月比)が3〜4%に達していた時期もあり、それと比べれば賃金上昇圧力が特に強い訳ではないと考えられています。米経済指標は強弱マチマチの状態が続いており、インフレ率は高進が加速するメドとされる2%を大きく下回ったままです。こうした中で今回の雇用統計は「総じて強いものの、インフレ率の上昇加速を心配する程ではない」と理解され、市場にとっては心地よい内容になりました。
8/4(金)の米国株式市場ではこれを受け、NYダウが9営業日続伸となり、8営業日連続で最高値を更新しました。続く8/7(月)にもNYダウは上昇し、連騰は10営業日連続となりました。一方、米10年国債利回りは低下が一服し、外為市場では一時1ドル109円台となっていたドル・円相場が110円台後半になるなど、円高・ドル安も一服状態になりました。
時価総額最大企業であるトヨタの決算が無難に終わり、我が国の主力企業の決算発表はヤマ場を越えてきました。さらに米雇用統計も市場にとって心地よい内容となり、無事通過となりました。当面は為替を大きく動かす材料がなくなり、市場の関心は好調な企業業績に向かいやすくなると考えられます。日経平均株価が年初来高値を更新するチャンスが来るかもしれません。
図1:日経平均株価(日足)〜歴史的なこう着相場が継続
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/08/08現在
図2:ドル・円相場(日足)・一目均衡表
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/08/08取引時間中
図3:米10年国債利回り(日足)〜「要注意日」が接近
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/08/07(現地時間)現在
当面のタイムスケジュール〜当面は企業業績への評価が最重要ポイントとなる可能性 |
前回ご説明したように、ドル・円相場(日足)・一目均衡表は8/4(金)に、2本の先行スパンが交差する「要注意日」を迎えました。この日は国内でトヨタ(7203)の決算発表が予定され、米国では雇用統計(7月)の発表が予定されるなど、重要日程が集中していました。このため、8/4(金)を無事通過できたことは当面の安心材料になると考えられます。
表1にもあるように、8/14(月)までは国内企業の4〜6月期決算発表が連日何百社という単位で予定されています。8/10(木)には566社の決算発表が予定されており、発表社数ベースではここが最大のヤマ場になり、個別企業レベルではまだまだ要注意の状態が続くとみられます。ただ、前述したように時価総額最大のトヨタの発表が終わり、7日(月)には日経平均高寄与度銘柄であるソフトバンク(9984)の発表も終了しました。質的な面では大きなヤマ場は越したとみて良さそうです。
内外の経済指標で、株価に大きな影響が想定される重要日程はあまりなさそうです。夏休みの本格化で市場参加者が減少し、さらに動意に乏しい展開になる可能性もありそうです。なお、8/14(月)には我が国のGDP統計(速報値)が発表される予定ですが、同じ期間(4〜6月期)を対象とする上場企業の決算発表が終わった後になるだけに、株式市場への影響は限定的になると予想されます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜当面は企業業績への評価が最重要ポイントとなる可能性
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
8/8(火) | 中国 | 7月貿易収支 | コンセンサスは輸出(前年比・ドル)+10.5%、輸入(同)+18.0% |
日本 | ★決算発表258社 | 大塚HD(4578)、東京海上HD(8766)他 | |
8/9(水) | 中国 | 7月消費者物価指数 | コンセンサスは前年同月比+1.4% |
日本 | ★決算発表324社 | MS&AD(8725)、ブリヂストン(5108)、T&DHD(8795)他 | |
8/10(木) | 日本 | 6月機械受注 | 5月は前月比-3.6% |
日本 | ★決算発表566社(社数ベースで最大のヤマ場) | SOMPOHD(8630)、リクルートHD(6098)、ユニチャーム(8113)他 | |
米国 | 7月生産者物価指数 | 6月のコア指数は前年同月比+1.9% | |
米国 | ☆決算発表 | エヌビディア、スナップ他 | |
8/11(金) | 日本 | ◎東京市場は休場(山の日) | |
米国 | 7月消費者物価指数 | コンセンサス(コア指数)は前年同月比+1.7% | |
8/14(月) | 日本 | 4〜6月期GDP統計(速報値) | コンセンサスは前期比・年率+2.5% |
日本 | ★決算発表128社(決算発表ほぼ一巡) | ||
中国 | 7月鉱工業生産 | 6月は前年同月比+7.6% | |
中国 | 7月固定資産投資 | 1〜6月は8.6% | |
中国 | 7月小売売上高 | 6月は前年同月比+11.0% | |
8/15(火) | ドイツ | 4〜6月期GDP統計(速報値) | 1〜3月期は前年同期比+2.9% |
米国 | 7月小売売上高 | 6月は前月比-0.1% | |
8/16(水) | 欧州 | EU・4〜6月期GDP速報 | |
米国 | 7月住宅着工件数 | 6月は前月比+8.3% | |
8/17(木) | 日本 | 7月貿易収支 | |
米国 | 7月鉱工業生産・設備稼働率 | 鉱工業生産のコンセンサスは前月比+0.1% | |
米国 | 8月フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
8/18(金) | 米国 | 8月ミシガン大学消費者信頼感指数 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | 2018年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) | 1/23(火)、3/9(金)、4/27(金) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) | 1/31(水)、3/21(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】日経平均株価の予想EPSが「過去最高」を更新!割安感強まる日経平均株価 |
決算発表が進捗し、上場企業の業績拡大が鮮明になってきました。8/7(月)までに決算発表を終えた約700社(金融を除く時価総額300億円超の3月決算上場企業)の営業利益は前年同期比で13%増となっています。会社発表の通期・予想営業利益を上方修正した企業は60社に達し、逆に下方修正の企業は6社にとどまりました。
これを受け、日経平均株価の予想EPSは8/7(月)に1,413円38銭と「過去最高」を更新しました。6/26(月)に1,412円29銭の最高値を付けた後は7/6(木)に1,391円38銭まで低下していましたが、ここにきて再上昇してきたものです。このまま外部環境が大きく崩れることなく推移すれば、2017年10月下旬から11月中旬にかけて行われる「中間決算」の発表ではさらに予想業績を上方修正する企業が増え、日経平均株価の予想EPSはさらに上昇することが期待されます。一方、日経平均株価の予想PERは8/7(月)に14.19倍まで低下し、6/15(木)以来の低水準となりました。
すでに何回かご説明しているように、「日経平均株価」は日経平均株価の「予想EPS」と「予想PER」の掛け算として算出されます。この時、「予想EPS」は企業業績という「現実」を示し、「予想PER」は何年分の利益を買って良いのかという「期待」の大きさを示していると考えることができます。すなわち、より単純化して考えれば
(株価)=(現実)×(期待)
と表現することができると思います。予想EPSが過去最高水準にありながら、予想PERが低水準にあるということは、「現実」は強いものの「期待」が大きくないというのが現在の「株価」の姿であると考えられます。図4は日経平均株価(日足)と予想PER13.5倍・15.0倍、16.5倍相当ラインを示しています。日経平均株価は過去約2年、おおむね予想PER13.5倍〜16.5倍に相当する水準で推移してきましたが、現在はそうしたレンジの下限に比較的近い水準となっており、株式市場の「期待」値が小さいことを示していると考えられます。
ちなみに、過去2年間の日経平均株価の予想PERの平均は14.8倍です。現在の予想PERは平均より低いため、先行きは平均並みに回帰していくと考えれば、
1,413円38銭(予想EPS)×14.8倍(予想PER)=20,918円
と計算されます。日経平均株価が21,000円近い水準まで上昇していくというシナリオは、決して突拍子もない考え方ではないことがご理解頂けると思います。こう着状態が続いている株式市場ですが、少なくとも日経平均株価の割安感は強まっていると考えられます。
図4:日経平均株価(日足)と予想PER13.5倍・15.0倍、16.5倍相当ライン
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。データは2017/8/7現在
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