日経平均株価は今週に入り続伸していますが、総じて2万円をはさんだもみ合い商状の域を出ていないと思われます。しかし、今週以降徐々に始まる4〜6月期決算の発表が進捗するとともに、上昇が加速すると予想されます。
2017年4〜6月期にドル・円相場は6四半期ぶりに前年同期比で円安・ドル高に、ユーロ・円相場は実に10四半期ぶりに前年同期比で円安・ユーロ高になっており、そのことが企業業績への追い風になりそうです。
日経平均株価は2万円をはさんでもみ合い |
7月第1週(7/3〜7/7)の東京株式市場では、日経平均株価が買い先行となりました。7/2(日)の東京都議会選挙で自民党が大敗したものの株価への影響は限定的で、むしろ7/3(月)に発表された日銀短観(2017年6月調査)の結果が上振れしたことを好感する展開となりました。NY株高(7/3)の追い風もあり、7/4(火)には一時20,197円16銭まで上昇しました。
しかしこの日、北朝鮮によるミサイル発射と「特別重大報道」の予告があり、それを嫌気する形で日経平均株価も下げに転じました。さらにその「報道」で同国がICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射に成功していたことが明らかになり、7/5(水)には日経平均株価が一時19,888円90銭まで下落する展開となりました。
北朝鮮のミサイル発射問題が落ち着いた後は一時落ち着く場面もありましたが、7/6(木)と7/7(金)の日経平均株価は続落し、週終値は19,929円09銭と2万円大台を割り込んでしまいました。我が国の10年国債利回りが2/6(月)以来の0.1%まで上昇し、一時的に円高圧力が強まったことや、数多くのETFが決算期を迎えて分配金捻出のために先物売りを増やしたことが要因とみられます。米雇用統計の発表を7/7(金)に控え、ポジション調整の売りが出た可能性もありそうです。
こうした中、発表された米雇用統計(6月)は、非農業部門雇用者数が事前の市場予想を上回ったものの、時間当たり賃金は予想を下回るなど強弱マチマチの内容となりました。その結果、重要イベント通過でリスクが取りやすくなった7/7(金)のNY市場ではダウ平均が上昇し、外為市場では1ドル114円台まで円安・ドル高が進む展開になりました。7/10(月)の日経平均株価は前週末比151円89銭高の20,080円98銭と「大台」を回復。7/11(火)もその勢いを持続して続伸となりました。
なお、ドイツのハンブルクで開催されたG20サミットは、米国と欧州の決定的な対立こそ回避されたものの、目立った成果もなく、7/8(土)に閉会しました。株式市場で話題になった場面はほとんどありませんでした。
図1:日経平均株価(日足)〜2万円大台をはさんでもみ合い
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/07/11取引時間中
図2:ドル・円相場(日足)〜1ドル114円台に
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/07/11取引時間中
図3:ナスダック総合〜上値の重い展開が続く
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/07/10(現地時間)現在
当面のタイムスケジュール〜市場の関心は決算発表へ |
米雇用統計の発表やG20サミットが終わり、当面は特に重要なタイムスケジュールが予定されていません。株式市場の関心は今後、日米ともに、今週から始まる2017年4〜6月期の決算発表に移っていくものとみられます。
外為市場では2017年に入り、ユーロや人民元がドルに対して上昇傾向にあります。このため、ドルの実効相場は下落傾向になっています。このため国際的に事業を展開している多くの米国企業にとっては追い風が強まりつつあるとみられます。通常、米国市場では決算前には警戒感から株価が下がりやすくなるものの、決算発表が始まると、純利益が予想を上回る企業が増え、その分株価が上昇しやすくなる傾向にあります。したがって、米国企業の決算発表が本格化する今後しばらくは、米国株高という「外からの追い風」が吹きやすくなると考えられます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜6月の米雇用統計に注
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
7/12(水) | 日本 | 6月企業物価指数 | コンセンサスでは前年同月比+2.0% |
★決算発表〜ホギメディカル(3593)他 | 2017年4〜6月期決算発表がスタート | ||
7/13(木) | 米国 | 6月生産者物価指数 | コンセンサス(食品・エネルギーを除く)は前年同月比+2.0% |
7/14(金) | 米国 | 7月ミシガン大学消費者信頼感指数 | コンセンサスでは95.0 |
米国 | 6月消費者物価指数 | コンセンサス(食品・エネルギーを除く)は前年同月比+1.7% | |
米国 | 6月鉱工業生産 | コンセンサスでは前月比0.3%増 | |
米国 | 6月小売売上高 | 5月は自動車や電気製品など幅広い分野で売上高が低迷 | |
米国 | ☆決算発表〜シティ、JPモルガン・チェース | 2017年4〜6月期決算発表が本格化 | |
7/17(月) | 日本 | ◎東京市場は休場(海の日) | |
中国 | 6月鉱工業生産 | コンセンサスは前年同月比6.5%増 | |
中国 | 4〜6月期GDP成長率 | コンセンサスは前年同期比+6.8% | |
中国 | 6月小売売上高 | コンセンサスは前年同月比10.6%増 | |
米国 | 7月NY連銀製造業景況指数 | コンセンサスは13.8 | |
7/18(火) | ドイツ | ZEW景況感指数 | アナリストや機関投資家など350人にアンケート |
米国 | 7月NAHB住宅価格指数 | コンセンサスは68 | |
米国 | ☆決算発表〜IBM | ||
7/19(水) | 日本 | 6月全国百貨店売上高 | |
米国 | 6月住宅着工件数 | コンセンサスは前月比6.2% | |
7/20(木) | 日本 | 日銀金融政決定会合結果発表 | |
日本 | ★決算発表〜安川電機(6506)他 | 2017年4〜6月期決算発表が本格化 | |
欧州 | ECB定例理事会 | 資産縮小へ向けた動きは表面化するのか? | |
米国 | フィラデルフィア連銀製造業景況指数 | ||
7/21(金) | 日本 | ★決算発表〜東京製鐵(5423)他 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】決算発表の進捗とともに株価上昇の可能性 |
我が国でも今週以降、3月決算企業の4〜6月期決算について、発表が始まってきます。上場企業の利益は想定を上回る拡大を示すと予想されます。
先週もご紹介したように、7/3(月)に発表された日銀短観(2017年6月調査)では、大企業・製造業の業況判断指数が+17となりました。2017年3月調査時点での「先行き」(+11)や、事前の市場コンセンサス(+15)に対して上振れる形になりました。また、前回調査の業況判断指数(+12)からも上昇しました。非製造業も同様の傾向で、業況判断指数は全産業規模で前回から上昇し、想定よりも上振れる形となりました。
2017年度の大企業・製造業が想定している前提為替レートは108円31銭となっていますが、2017年4月〜6月期の平均為替レートは、ドル・円相場で1ドル111円台となっています。想定よりも為替相場が円安に振れたことが多くの企業の追い風になっていると考えられます。図4では、ドル・円相場およびユーロ・円相場の四半期平均レートが前年同期比で何%円安・ドル高あるいは円安・ユーロ高になっているのかを示しています。2017年4〜6月期にドル・円相場は6四半期ぶりに前年同期比で円安・ドル高に、ユーロ・円相場は実に10四半期ぶりに前年同期比で円安・ユーロ高になっています。
なお、原油先物相場についても、期中大きく下げる場面こそあったものの、前年同期比では上昇を維持することができました。このため、資源・エネルギー系の業種も堅調な業績を維持することが可能になったとみられます。
日銀短観では、建設、運輸・郵便、石油・石炭製品など23業種が3月調査時点での「先行き」よりも上振れることになり、「下振れ」は3業種にとどまりました。決算発表の進捗とともに、個別企業に見直し買いが本格化し、日経平均株価が上昇する可能性は大きいと考えられます。
図4:ドル・円およびユーロ円相場(四半期平均レート)の変化率(前年同期比)
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成。ドル・円相場およびユーロ・円相場の四半期平均レートが前年同期比で何%円安・ドル高あるいは円安・ユーロ高になっているのかを示しています。
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