6月末、日経平均株価の終値は20,033円43銭となり、5月末の19,650円57銭に対して1.9%の上昇になりました。月足ベースでは4月(+1.5%)、5月(+2.4%)に続き3ヵ月連続の上昇となりました。
7月相場はどうなるのでしょうか。7/7(金)には6月の米雇用統計が発表される予定であり、一応の注意は必要とみられます。しかし、日銀短観(6月調査)をみる限り、企業業績は上振れ傾向で、それが株価の追い風になるとみられます。日経平均株価は2015年8月11日の取引時間中に付けた高値20,946円93銭を目指す展開になる可能性もありそうです。
3ヵ月連続で月間の株価が上昇 |
6月末、日経平均株価の終値は20,033円43銭となり、5月末の19,650円57銭に対して1.9%の上昇になりました。月足ベースでは4月(+1.5%)、5月(+2.4%)に続き3ヵ月連続の上昇となりました。反面、月中の安値(終値ベース)は19,831円82銭(6/15)、高値(同)は20,230円41銭(6/20)となり、その差として計算される月間値幅(終値ベース)は398円59銭と、5年11ヵ月ぶりの小ささとなりました。
3月末から6/19(月)にかけて、世界的にも株高基調が続き、そのことが日本株にもプラス材料になりました。この間、米国のS&P500指数は3.8%、独DAX指数は4.7%上昇しました。世界経済は緩やかに拡大しているものの、インフレ率の上昇は低く抑えられており、世界の中央銀行による急激な金融引き締めは想定しにくいと考えられてきました。そうした中、3月末に1,220円だった日経平均株価の予想EPS(一株利益)は6/20には1,408円まで上昇するなど、日本企業の業績拡大傾向が確認され、海外投資家からの日本株に対する好評価につながりました。4月第1週以降、9週間連続で海外投資家は日本株を買い越し、その金額は計1.95兆円に達しました。3月末から6/20(火)までの日経平均株価の上昇率は7.0%に達し、米独の株価上昇率をアウトパフォームしました。
6/2(金)に発表された5月の米雇用統計では、もっとも注目される指標である非農業部門雇用者数が前月比13.8万人増となり、事前予想の18.5万人増を大きく下回り、加えて過去分も下方修正されました。すでに3月下旬以降、米経済指標については、事前の市場予想を下回る結果のものが増えており、6月FOMC(米連邦公開市場委員会)での利上げこそ確実視されていたものの、その後の年内追加利上げ観測については後退する方向となりました。それを受ける形で、外為相場ではドル・円相場が5月末の1ドル110円台後半から6/14(水)には同108円台後半まで円高・ドル安となり、翌日の6/15(木)に日経平均株価が月間の安値を付ける展開となりました。
なお、その後の外為相場はドルが円に対して値を戻す展開となりました。6/14(水)の米FOMCでは政策金利の引き上げが発表され、市場予想通りの結果となりましたが、事前に円高・ドル安が進んでいたことで、会合後は逆に円安・ドル高が進む展開になった形です。6/27(火)にECB(欧州中銀)のドラギ総裁が資産縮小を示唆すると思われる発言を行い、円安・ユーロ高も進みました。すなわち、月の後半は円が主要通貨に対して下落基調となり、それが株価を下支える要因になりました。
図1:日経平均株価(日足)〜高値圏で保ち合い
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/7/4終値現在
図2:ドル・円相場(日足)〜1ドル113円台に
図3:ユーロ・円相場(日足)〜急速な円安・ユーロ高
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/7/4取引時間中
当面のタイムスケジュール〜6月の米雇用統計に注目 |
当面は7/7(金)に発表される6月の米雇用統計が最大の注目材料となりそうです。前述したように、5月の米雇用統計では、もっとも注目される指標である非農業部門雇用者数が前月比13.8万人増となり、事前予想の18.5万人増を大きく下回り、加えて過去分も下方修正されました。
6月の米雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比で17.7万人増加するというのが市場コンセンサス(7/4)になっていて、5月よりは改善すると見込まれています。米労働市場はすでに「完全雇用」の状態になっていると思われ、今後は雇用が大きく増える場面は想定しにくく、実際の雇用者数の増加が十数万人程度であれば、市場はあまりネガティブに捉えないと予想されます。なお、非農業部門雇用者数以外では時間当たり賃金の動向なども注目されそうです。市場コンセンサス(7/4)では前年同月比2.6%の上昇が見込まれており、それを上回れば、年内再利上げ観測が回復し、ドル高を経て、日本株の上昇要因になる可能性もありそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜6月の米雇用統計に注目
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
7/4(火) | 米国 | 米国市場は休場(独立記念日) | |
7/5(水) | 日本 | ★決算発表〜ローソン、良品計画 | |
米国 | 5月製造業受注 | ||
米国 | FOMC(6/14発表分)議事録 | 利上げを決めたFOMCで何が話し合われたのか? | |
7/6(木) | 米国 | 6月ADP雇用統計 | 雇用者数は前回253千人増から今回は190千人増の見込み |
米国 | 6月ISM非製造業景況指数 | 雇用などの個別の指標にも注目 | |
7/7(金) | ドイツ | G20サミット | 米トランプ大統領の発言に注目 |
米国 | 6月雇用統計 | 非農業部門雇用者数は173千人増の見込み | |
7/10(月) | 日本 | 5月機械受注 | 設備投資の先行指標 |
日本 | 6月景気ウォッチャー調査 | 景気動向を肌で感じる人たちに質問による調査を行う | |
中国 | 6月消費者物価指数 | 5月は前年同月比+1.5%。3ヵ月連続で上昇率が加速 | |
7/11(火) | 日本 | 6月マネーストック | 5月はM2が前年同月比3.4%増加 |
7/12(水) | 日本 | 6月企業物価指数 | |
7/13(木) | 米国 | 6月生産者物価指数 | 5月(食品・エネルギーを除く)は前年同月比+2.1% |
7/14(金) | 米国 | 7月ミシガン大学消費者信頼感指数 | |
米国 | 6月消費者物価指数 | 5月(食品・エネルギーを除く)は前年同月比+1.71% | |
米国 | 6月鉱工業生産 | ||
米国 | 6月小売売上高 | 5月は自動車や電気製品など幅広い分野で売上高が低迷 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】上振れ傾向の企業業績が追い風に!? |
7/3(月)に日銀短観(2017年6月調査)の結果が発表されました。大企業・製造業の業況判断指数(「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いた数値)は+17となりました。2017年3月調査時点での「先行き」(+11)や、事前の市場コンセンサス(+15)に対して上振れる形になりました。また、前回調査の業況判断指数(+12)からも上昇しました。
非製造業も同様の傾向で、業況判断指数は全産業規模で前回から上昇し、想定よりも上振れる形となりました。中堅企業や中小企業の業況も改善が確認されました。我が国の企業業績の拡大は広い範囲に及んでいると考えられます。2017年度の大企業・製造業が想定している前提為替レートは108円31銭となっていますが、2017年4月〜6月期の平均為替レートは、ドル・円相場で1ドル111円前後となっています。想定よりも為替相場が円安に振れたことが多くの企業の追い風になっていると考えられます。
7月相場を占う意味で重要なのは、下旬から発表が本格化する3月決算企業の第1四半期の決算発表であると考えられます。1年の4分の1を終了したに過ぎない段階で業績を修正する企業はそれほど多くないとみられますが、好業績銘柄に対する見方がより前向きになり、株価を押し上げる材料になる可能性は十分ありそうです。日銀短観の結果は、上場企業の第1四半期の決算発表が上振れやすいことを示していると考えられます。
もっとも、アナリストによる決算発表直前の企業取材が規制されているという現状で、機関投資家を中心に投資家が決算発表直前の銘柄を仕込むというケースは少ないとみられます。このため、決算発表本格化直前の7月中旬頃には、様子見気分が広がる可能性もありそうです。反面、決算発表が終わった銘柄から好決算を評価されて買われる銘柄が増えると予想され、月末から8月上旬にかけ、日経平均株価が上昇する可能性が高まりそうです。日経平均株価は2015年8月11日の取引時間中に付けた高値20,946円93銭を目指す展開になる可能性もありそうです。
図4は、日経平均株価の月別・平均騰落率(過去10年)をみたものです。7月相場はほどほどのパフォーマンスになる傾向ですが、8月になると波乱になるケースが多いことをこのデータは示しています。決算発表シーズン後に「材料出尽くし」と捉えられる可能性もあり、一応の注意が必要です。
図4:日経平均株価の月別・平均騰落率(過去10年)
- ※日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。
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