東京株式市場では、5/16(火)に日経平均株価が一時20,000円の大台まであと1円51銭に迫る19,998円49銭まで上昇、終値も19,919円82銭と年初来高値を更新しました。しかし、その後は米国政治への不透明感もあり、不安定な展開になっています。
こうした中、3月期決算企業の決算発表が終了しましたが、日本企業の円高への耐久力を確認する内容となりました。日経平均株価の予想EPSも過去最高水準を更新しており、日経平均株価が20,000円の節目を超えて上昇する可能性が膨らんでいます。
一時20,000円大台まであと一息の水準まで上昇 |
東京株式市場では、5/16(火)に日経平均株価が一時20,000円の大台にあと1円51銭と迫る19,998円49銭まで上昇、終値も19,919円82銭と年初来高値を更新しました。地政学的リスクが後退する中で決算発表が一巡し、企業業績の好調が確認され、見直し買い機運が強まりました。
しかし、5/17(水)の米国市場ではNYダウが大幅続落となり、前日比372.82ドル安となりました。下げ幅は昨年9/9(金)の394.46ドル安以来の大きさとなっています。ロシアとの関係を疑われていたフリン前大統領補佐官への捜査について、トランプ大統領がコミー前FBI長官に捜査終結を求めたと伝わったことが背景です。こうした米国市場の動向を受け、5/18(木)の日経平均株価は前日比261円02銭安と大きく下落しました。
コミー前FBI長官の解任に続き、トランプ政権による司法への介入やロシアとの不透明な関係が米国内で疑われており、ニクソン大統領が辞任に追い込まれた「ウォーターゲート事件」(1972〜74)になぞらえて「ロシアゲート」と言う表現も出てきています。トランプ大統領が弾劾されるとの見方は今の所少数派ですが、事態の今後の推移には十分な注意が必要です。
ちなみに、ウォーターゲート事件の発生(1972/6/17)からニクソン大統領の辞任(1974/8/9)までNYダウは18%下げました。一見、事件の影響が考えられますが、72/6/17以降73/1/11までは逆に1割上昇しています。73年1〜3月期にGDP(前期比・年率)が10.2%も成長するなど、経済が好調だったことが追い風になりました。その後74年1〜3月期に-3.3%まで落ち込むなど、経済の減速がみられ、株価の下落についてはその影響も大きかったと考えられます。
したがって、足元の米国株についても、注目点はむしろ景気・企業業績の動向であると考えられます。ここにきて米経済指標に弱いものが散見され始めており、「利上げは年内あと2回」とのコンセンサスがやや後退しているようです。ただ、米経済については「減速は一時的」との見方が中心となっているようです。
5/18(木)以降の東京市場は落ち着きを取り戻しています。図2および図3にあるように、米国株式市場や外為市場の動きが落ち着きを取り戻したことが背景です。ただ、米国の政治に対する不透明感はくすぶり続けており、日中の変動値幅が縮小する傾向が強まっています。5/23(火)には日経平均株価が3営業日ぶりに下げるなど、不安定さが残っています。
図1:日経平均株価(日足)〜5/16(火)に20,000円まであと1円51銭の水準まで上昇したものの・・・
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2017/5/23現在
図2:ドル・円相場(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/23取引時間中
図3:S&P500(日足)
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2017/5/22(現地時間)現在
当面のタイムスケジュール〜OPEC総会に注目 |
日米で1〜3月期の決算発表が終わり、今週は大きな経済指標の発表も予定されていません。ただ、OPEC(石油輸出国機構)総会はその後に原油価格の変動につながることも多いため注意が必要です。
原油先物相場(WTI)は5/5(金)は1バレル43.76ドルをボトムとして反発に転じ、5/22(月)には同51.43ドルまで上昇しました。ロシアとサウジアラビアが原油の減産を継続することで合意したこと等が背景となっています。したがって、OPEC総会でその流れが他の産油国に正式に広がるか否かが重要なポイントとなります。
資源・エネルギーのほとんどを輸入している日本にとり、原油先物価格の下落は悪い話ではありません。しかし、原油先物相場が下落した場合は米国株が下げやすくなり、その影響で日本株も下げやすくなってしまいます。したがって、OPEC総会の結果は、今後の株式相場にも大きな影響を与える可能性があると考えられます。
なお、来週は米雇用統計(5月)をはじめ、重要日程が目白押しの状態になっています。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜OPEC総会に注目
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
5/23(火) | ドイツ | 5月Ifo景況感指数 | 7千社のドイツ企業を対象にしたアンケート |
米国 | 4月新築住宅販売 | コンセンサスは前月比-1.0% | |
米国 | 米大統領が予算教書を議会に提出 | ||
5/24(水) | 日本 | 日銀が国際コンファレンスを主催 | バーナンキ前FRB議長が講演 |
米国 | 3月FHFA住宅価格指数 | 2月は前月比+0.8% | |
米国 | 4月中古住宅販売件数 | コンセンサスは前月比-0.7% | |
米国 | FOMC(5/3発表分)議事録 | ||
5/25(木) | 英国 | 1〜3月期GDP改定値 | コンセンサスは前期比+0.3% |
- | OPEC総会 | 原油の減産合意が延長されるのか?今後の生産規模は | |
- | NATO首脳会議 | ||
5/26(金) | 日本 | 4月消費者物価指数 | コンセンサスは前年同月比+0.4%(生鮮食品を除く) |
- | G7シチリア・サミット | ||
米国 | 1〜3月期GDP改定値 | コンセンサスは前期比+0.9% | |
米国 | 4月耐久財受注 | コンセンサスは前期比+0.4%(輸送用機器を除く) | |
5/27(土) | - | ラマダン(〜6/25頃) | 海外投資家の買いが鈍る可能性も |
5/29(月) | - | 米国、英国、中国、台湾が休場 | 米国はメモリアルデー、中国は端午節 |
5/30(火) | 日本 | 4月有効求人倍率他 | 前回は1.45倍 |
米国 | 3月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | コンセンサスは前月比(季調済)+0.9 | |
米国 | 5月CB消費者信頼感指数 | ※CB=カンファレンスボード | |
5/31(水) | 日本 | 4月鉱工業生産 | |
中国 | 5月製造業PMI | 4月は51.2 | |
米国 | 4月中古住宅販売仮契約 | コンセンサスは前月比+1.0% | |
米国 | ベージュブック | 米金融政策に影響 | |
6/1(木) | 日本 | 1〜3月法人企業統計 | |
日本 | 5月新車販売台数 | ||
米国 | 5月ADP雇用統計 | 雇用者数のコンセンサスは+175千人 | |
米国 | 5月ISM製造業景況指数 | コンセンサスは55.2 | |
米国 | 5月新車販売台数 | ||
6/2(金) | 米国 | 5月雇用統計 | 非農業部門雇用者数のコンセンサスは+175千人 |
表2:日米欧中央銀行会議の結果発表予定日
2017年 | |
---|---|
日銀金融政策決定会合 | 6/16(金)、7/20(木)、9/21(木)、10/31(火)、12/21(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 6/14(水)、7/26(水)、9/20(水)、11/1(水)、12/13(水) |
ECB(欧州中銀)理事会・金融政策会合 | 6/8(木)、7/20(木)、9/7(木)、10/26(木)、12/14(木) |
※各種報道、日米欧中銀Webサイト等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは当レポート作成日現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。なお、ECB理事会は金融政策の議論・決定を行う会合の日程のみ掲載しました。日付は現地時間を基準に記載しています。
【ココがPOINT!】円高への耐久力を付けてきた日本企業 |
3月決算企業の決算発表が終わりました。日経新聞の計算では新興市場を除く全産業の経常利益は17年3月期に4.1%伸びました。18年3月期は3.4%の増益が見込まれています。また純利益については17年3月期が14.5%増益となり、18年3月期が6.7%増益見通しとなっています。
今回の決算の特徴は、円高にもかかわらず日本企業が増益を確保できたことです。17年3月期・期中の平均為替レート(ドル・円)は16年3月期から1ドル12円も円高となり、同108円となりました。「円高に対する耐久力がついた」ことは確かかもしれませんが、もう少し踏み込んで考えてみたいと思います。
一般的に円高が逆風となる業種と言えば、自動車、電気機器、機械、精密などが代表的な業種です。このうち、自動車、機械、精密などは前期比で経常減益になっており、やはり円高は逆風と言えそうです。1ドル12円も円高となった割に減益率が鈍いかもしれませんが、今はそれ以上のことが言える訳ではありません。
ただ、電気機器は大幅増益になっており、円高が逆風になる業種とは一概に言えなくなってきたかもしれません。理由はいくつか考えられます。ゲームや金融他を抱えるソニー、建機や化学他を抱える日立製作所など、電気機器大手の業態が拡大していることがひとつ。円高に強い電子部品や半導体の活躍が目立ってきたことも影響しているでしょう。大手電機がリストラの過程にあり、為替変動の影響が見えにくくなっている面もあります。海外生産が拡大し、為替変動の影響を受けにくくなった面もありそうです。
電気機器は円高や人件費問題、技術開発競争の中で、もっとも国際競争にもまれた業種のひとつです。そうした中で、いくつかの会社、多くの事業が市場から消えていきましたし、現在もその動きは続いています。要は新陳代謝の結果、円高の影響が表れにくくなったと考えることが可能です。
決算発表が一部の例外を除いて終わり、日経平均株価の予想EPS(一株利益)は5/22(月)に過去最高の1,398円まで上昇しました。日経平均株価は過去20数年間、20,000円を少し超えた水準が高値となり、跳ね返されてきた(図4)という経緯があります。しかし、企業業績が円高への耐久力を付け、予想EPSが過去最高を付けてきたことは、株価がこの上値の節目を突破する条件をひとつクリアしたと言えるでしょう。
図4:日経平均株価(月足)〜過去20年間20,000円を少し超えた水準が高値に・・・
- ※BloombergデータをもとにSBI証券が作成
先物・オプションの関連コンテンツ
【サキモノのココがPOINT!】
24日夜に相場の雰囲気が変わるか