11/10(木)以降、東京株式市場を取り巻く空気はまさに「一変」した感じです。米大統領選における「トランプ氏当選」で前日比919円安となった11/9(水)をボトムに11/28(月)まで、日経平均株価は上昇10日、下落2日となり13%近くも上昇しました。10月以降徐々に米長期金利の上昇およびそれを背景とする円安・ドル高が進んでいましたが、それらがさらに加速することで株価も上昇しました。
ただ、11/25(金)現在で日経平均株価の25日移動平均からのかい離率やRSI(相対力指数)、騰落レシオ(東証一部)はおおむね目先の過熱圏を示し、米長期金利上昇や円安・ドル高も一服しています。これらを受け、日経平均株価にもようやく「押し目形成」のタイミングが到来しているように見受けられます。しかし、株式市場はすでに「トレンド転換」しているとみられ、押し目は買い場とみられます。
<今週のココがPOINT!>
押し目形成か? |
米国では10年国債の利回りが11/8(火)の1.861%から11/25(金)には2.360%まで上昇しました。トランプ次期大統領が大規模減税や財政出動を伴う社会インフラ整備を主張しているため、期待インフレ率が一気に高まったことが主因と考えられます。これを受けて外為市場ではドル・円相場が11/9(水)に一時1ドル101円18銭を付けていましたが、11/25(金)には113円89銭を付けるなど、一気に円安・ドル高が進みました。
我が国の株式市場ではこうした動きを追い風にする形で、日経平均株価が11/9(水)の16,251円から11/28(月)には18,356円まで13%近い上昇となりました。
しかし、日経平均株価の上昇をもたらしてきた米長期金利の上昇や円安・ドル高は一服する兆しを見せています。このうち、米長期金利は11/17(木)から11/28(月)までの7営業日、利回りが2.3%台で終わっています。またドル・円相場も11/28(月)には一時111円35銭まで円高・ドル安方向に揺り戻される展開になっています。
折しも、2週間弱の期間で13%近い上昇となっただけに、日経平均株価についてもさすがに短期的な過熱感が漂い始めてきました。一般的に日々線がそこから5%前後かい離すると反転しやすいとされる日経平均の対25日移動平均かい離率は11/25(金)の段階で+5.1%まで拡大しました。さらに70%超で「過熱」を示唆するといわれるRSI(相対力指数)は72.1%に、120%超で「過熱」を示唆するとされる騰落レシオ(東証1部)は133%に上昇しました。
こうした中、11/28(月)の東京市場では日経平均株価が一時159円安となるなど、上昇一服の兆しを見せています。上昇相場で出遅れた投資家が押し目買いを入れている可能性があり、大崩れしそうな空気はありませんが、急上昇した反動に注意は必要です。もともと「トランプ・ラリー」は理想買いの側面が強いだけに、今後「現実」とのすり合わせの中で、思わぬ下落場面に遭遇するリスクもあると考えられます。
図1:日経平均株価(日足)〜スピード警戒感が台頭か?
- ※当社チャートツールもとにSBI証券が作成。データは2016/11/28現在。
図2:ドル・円相場(日足)・過去1年
図3:米10年国債利回り(週足)・過去2年
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/11/28現在。
当面のタイムスケジュール〜11/30(水)のOPEC総会や12/2(金)の米雇用統計に注目 |
当面のスケジュールの中で要注目なのが現地時間11/30(水)(日本時間では11/30〜12/1)に予定されているOPEC(石油輸出国機構)の定例総会です。OPEC加盟国の生産量は日量3,324万バレルと伝えられていますが、9/28(水)にこれを3,250〜3,300万バレルに減産することで合意し、市場では原油価格安定への期待が高まりました。仮に、今回の総会で3,250万バレル程度への減産が決まれば、原油価格の上昇が見込まれ、米国株の安定を通じ、日本株にも追い風になると予想されます。
ただ、減産の規模がレンジ上限の3,300万バレル程度だったり、そもそも減産が合意されなかった場合は原油価格が下落し、米国株の下落を通じ、日本株にも逆風が吹く可能性があります。
12/2(金)には米国の11月雇用統計が発表される予定です。現在、金利先物市場が示す12/14(水)に実施が予定されているFOMC(米連邦公開市場委員会)での「利上げ確率」は100%になっています。無論、何が起こるかわからない金融市場であり、利上げが見送られる可能性はゼロではないと考えられますが、市場の予想はそこまで偏っているということです。それだけに、FOMC以前としては最後の雇用統計発表(12/2)で弱い数字が出た場合の衝撃も大きくなりやすいので、十分な注意が必要だと思われます。
表1:当面の重要なタイムスケジュール〜11/30(水)のOPEC総会や12/2(金)の米雇用統計に注目
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
11/29(火) | 日本 | 10月失業率・有効求人倍率 | 9月は失業率3.0%、有効求人倍率1.38倍 |
米国 | 7〜9月期GDP(改定値) | 市場コンセンサスは前期比(年率)+3.0% | |
米国 | 9月S&PコアロジックCS住宅価格指数 | 8月(季節調整前)は前年同月比+5.1% | |
米国 | 11月CB消費者信頼感指数 | 市場コンセンサスは101.3 | |
11/30(水) | 日本 | 10月鉱工業生産 | 市場コンセンサスは前月比横ばい |
日本 | 臨時国会会期末(延長も?) | 10日程度の延長が検討されている模様 | |
- | OPEC定例総会 | 日量3,269万バレルで需給が均衡との見方 | |
米国 | ベージュブック | 米金融政策の重要な判断材料 | |
米国 | ADP雇用統計 | 事前予想では前月比16万人増 | |
12/1(木) | 日本 | 7〜9月法人企業統計 | 設備投資動向に注目 |
中国 | 11月製造業PMI | 中国企業のマインドは? | |
米国 | 11月自動車販売台数 | 市場コンセンサスでは年率1,770万台 | |
米国 | ISM製造業景況指数 | 市場コンセンサスでは52.2(日本時間では2日0時) | |
12/2(金) | 米国 | 11月雇用統計 | コンセンサスは非農業部門雇用者数で17.5万人増 |
12/5(月) | 米国 | 11月ISM非製造業景況指数 | 雇用統計の直後なので重要度は低下?(日本時間6日0時) |
12/8(木) | 日本 | GDP改定値(推計値で新基準) | 1次速報値は前期比+0.5%(年率+2.2%) |
日本 | 11月都心オフィス空室率 | 10月は3.64% | |
日本 | 11月景気ウォッチャー調査 | 景気に敏感な職業の人々が報告する「街角景気」 | |
中国 | 11月貿易統計 | 収支以上に輸出や輸入の増減が重要 | |
欧州 | ECB定例理事会(ドラギ総裁会見) | (1)債券買取期間(〜17/3)延長は?(2)国債買取条件の緩和は? | |
12/9(金) | 日本 | 10〜12月期法人企業景気予測調査 | |
日本 | メジャーSQ | 直前は思惑が交錯して波乱になる可能性に注意 | |
中国 | 11月消費者物価 | 10月は前年同月比+2.1% | |
米国 | 12月ミシガン大学消費者マインド指数 | 9月91.2、10月87.2、11月93.8 |
表2:日米中央銀行会議の結果発表予定日
2016年 | 2017年 | |
---|---|---|
日銀金融政策決定会合 | 12/20(火) | 1/31(火)、3/16(木)、4/27(木)、6/16(金)、7/20(木) |
FOMC(米連邦公開市場委員会) | 12/14(水) | 2/1(水)、3/15(水)、5/3(水)、6/14(水)、7/26(水) |
※各種報道等をもとにSBI証券が作成。「予想」は市場コンセンサス。データは2016/11/28現在。予定は予告なく変更される場合がありますので、あくまでもデータ作成段階のものです。
【ココがPOINT!】「トレンド転換」に乗り遅れるな?ただし「日経平均株価」で良いのか? |
短期的にはスピード警戒感が台頭している日経平均株価ですが、中長期的な視点からみるとトレンドが変わった可能性があります。図4は日経平均株価の週足チャートですが、2015年高値から続く上値抵抗ラインから上放れた形になっています。
株式市場のトレンドを変えたのはおもに主要国の金融政策の変化であると考えられます。米国はすでに好調な経済を受けて再利上げが検討されていますが、仮にトランプ氏の政策が実行されれば、インフレ率上昇が加速する公算が大きく、利上げペースが速まる可能性があります。また、日本や欧州についても中央銀行が明らかにマイナス金利の限界を示唆し始めており、金利はボトムアウトの様相が強まっています。
こうした流れを受け、世界的に債券から株式へ、新興国から先進国へという資金シフトが起きやすくなっていること、日米金利差が拡大しやすく円安・ドル高が進みやすくなってきたことから、日本株が選好されやすくなっていると考えられます。日本株は、そして日経平均株価は本格的な上昇相場を迎える可能性がありそうです。
図4:日経平均株価(週足)〜上値抵抗ラインを上放れ
- ※当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/11/28現在
もっとも、日本株が選好されるとのシナリオを取るにしても、インデックスとして日経平均株価への投資がもっとも効率的かと問われれば、微妙な所だと思います。図5に示したように日経平均株価をTOPIXで割って求められる「NT倍率」が下落の様相を強めているためです。
ちなみに、11/25付「日本株投資戦略」では「トランプ・ラリー」で買われてきた銘柄の特徴をご紹介しています。そこでご説明しているように、銀行株を中心に金融株が多いことが大きな特徴です。一般的に銀行株は、金利上昇期の方が利ザヤを確保しやすいため、株価が上昇しやすいと考えられています。トランプ氏当選で米長期金利が上昇し、世界的に金利ボトムアウト感が醸成されてきたことは、銀行株に強い追い風になるとみられます。
こうした銀行株は、インデックスに対してはどのような影響を与えているのでしょうか。指数に組み入れられているウェイトでみると、日経平均株価が0.9%であるのに対し、TOPIXは7.6%、JPX日経400は7.8%です。こうした銀行株の組み入れ比率の違いが、「TOPIXの方が日経平均よりも相対的に強い」という状況を作り出したと考えられます。ちなみに、11/10(木)から11/28(月)までの12営業日で、日経平均株価は10勝2敗でしたが、TOPIXおよびJPX日経400は12連騰となっていますが、この差も銀行株の組み入れ比率の差が影響していると考えられます。
世界の株式市場は主要国のポスト「ゼロ金利時代」を意識し始めているのだとすれば、そしてそれこそが今後の上昇相場のエンジン役だとすれば、日経平均株価よりもTOPIXやJPX日経400の方が優位という状態も長期化する可能性がありそうです。
図5:NT倍率(日足)
- ※Bloombergデータを用いてSBI証券が作成。データは2016/11/28現在。NT倍率とは日経平均株価をTOPIXで割った数値。
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1579 | 日経平均ブル2倍上場投信 | ||
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