2月相場が終わりました。日経平均株価の終値は16,026円76銭となり、前月末比8.51%の下げとなりました。約8%の下げはこれで2ヵ月連続となり、年初からの株式市場がいかに厳しいものであったかを示しています。なお、月間の下落率は「アベノミクス相場」開始(2012/11/14)以来最悪の記録となりました。
3月相場はどうなるでしょうか。「225の『ココがPOINT!』」では、ようやく株式市場にも「春」が到来し、日経平均株価は戻りを試す展開になると考えています。市場が見落としている好材料は意外に多いと考えられるためです。
波乱の2月相場を振り返る |
2月相場が終わりました。日経平均株価の終値は16,026円76銭となり、前月末比8.51%の下げとなりました。約8%の下げがこれで2ヵ月連続したことになり、年初からの株式相場がいかに厳しいものであったのかを示しています。なお、月間の下落率は「アベノミクス相場」開始(2012/11/14)以来最悪の記録となりました。
2月の日経平均株価は特に前半が厳しい下げとなりました。米国株をはじめ海外株式市場の下落、原油相場の下落、円高・ドル安の進展が重なり、2/12(金)の取引時間中には日経平均株価が14,865円77銭の安値を付けました。この時点では、前月末終値からの下落率が15%に達する急速な下げとなりました。しかし、結果的には直前の2/11(木)が、米国株、原油先物相場、ドル対円相場のボトムになりました。さらに、2/12(金)時点で日経平均の予想PERが12.97倍と、「アベノミクス相場」での最低水準まで低下したことで、日経平均株価は重要な下値支持ラインに届いた形になりました。日経平均株価は2/15(月)には前日比1,069円97銭高の大幅高を演じ、ようやくボトム形成となりました。
ただ、その後の日経平均株価は下値が底堅く感じられるようになると同時に、上値も重い状態が続き、一進一退の展開が続きました。結局、2月末の日経平均株価水準は2/15(月)終値とほぼ変わらない水準となり、2月後半の市場が一進一退で推移したことを印象付けました。
図1:日経平均株価(日足)〜「一目均衡表」上は依然「陽転」の要素なし
- ※当社チャートツールをもとにSBI証券が作成。データは2016/2/29現在。
3月第1週は「雇用統計」が重要 |
今後の相場を予想する上でチェックしておくべき重要日程は表1の通りです。
まずは、米大統領選挙の予備選・党員集会が集中する3/1(火)の「スーパーチューズデー」が重要です。共和党で過激な発言の目立つトランプ氏が優位となった場合、株価がネガティブな反応を示す可能性があります。
なお、同じ日にはISM製造業指数が発表されます。ドル高や原油安を背景に、最近は米国での企業マインドの悪化が目立ってきましたが、そこに歯止めがかかるか否かが注目される所です。なお、製造業のみならず非製造業の雇用指数も注目しておくと参考になります。それとADP雇用統計を合わせてチェックすることで、雇用統計のヒントになると考えられます。
さて、3/4(金)には2月の雇用統計が発表される予定です。現状では、非農業部門雇用者数が前月比19.5万人増、失業率が4.9%というのが市場コンセンサスになっています。雇用者数が市場予想を上回り、失業率も改善が続けば、3/16(水)に結果発表予定のFOMC(米連邦公開市場委員会)で利上げが先送りされる可能性が強くなりそうです。
表1:当面の重要なタイムスケジュール
月日(曜日) |
国・地域 |
予定内容 |
ポイント |
---|---|---|---|
3/1(火) |
日本 |
1月家計調査・労働力調査等 |
|
日本 |
10〜12月期・法人企業統計 |
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中国 |
2月製造業PMI |
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米国 |
ISM製造業景況指数 |
1月から改善の予想だが・・・ |
|
米国 |
2月新車販売台数 |
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米国 |
スーパーチューズデー |
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3/2(水) |
米国 |
2月ADP雇用統計 |
労働省「雇用統計」の前哨戦 |
米国 |
ベージュブック |
米金融政策の判断材料 |
|
3/3(木) |
米国 |
ISM非製造業指数 |
雇用、新規受注等にも注目 |
3/4(金) |
日本 |
1月毎月勤労統計調査 |
|
米国 |
2月雇用統計 |
非農業部門雇用者数は19.5万人増 |
|
3/5(土) |
中国 |
全国人民代表大会 |
中国経済安定化への道筋は? |
3/7(月) |
日本 |
1月景気動向指数 |
|
欧州 |
ユーロ圏財務相会合 |
||
3/8(火) |
日本 |
2015/10〜12期GDP(2次速報値) |
改定値(年率)は-1.4% |
中国 |
2月の貿易収支 |
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3/10(木) |
中国 |
2月消費者物価指数 |
|
欧州 |
ECB(欧州中銀)定例理事会 |
||
3/11(金) |
日本 |
2016/1〜3期法人企業景気予測調査 |
|
日本 |
メジャーSQ |
SQ直前は様子見気分が強まる可能性も |
- ※Bloombergデータ、報道等をもとにSBI証券が作成。海外は現地時間。
なお、3/1(火)の経済指標は、レポート掲載時点で発表済みになっているものもあります。
【ココがPOINT!】市場が見落としている好材料は? |
2月は波乱となった東京株式市場ですが、3月は戻りを試す展開になると「225の『ココがPOINT!』では考えています。投資家は東京市場にとって追い風になる「3つの好材料」を見落としている、または過小評価している可能性があるためです。
第1の好材料は、米国株が「底入れ」した可能性が大きいことです。図2は米国株の値動きを示すS&P500の一目均衡表(日足)ですが、(1)遅行スパンが日々線を下から上に突き抜け、(2)転換線が基準線を下から上に突き抜け、という2つのポイントで「陽転」しています。またすでに同指数は2/25(木)終値が「ネックライン」である2/1(月)の1,947ポイントをクリアしているため、形の上では「Wボトムが完成」したようになっています。あとは、日々線が一目均衡表のクモさえ抜ければ、「3役好転」の形で底入れ色が一層濃厚となりそうです。
米国では昨年末に政策金利が引き上げられましたが、それは景気の過熱を防ぎ、インフレの高進を抑え、米経済の安定的かつ長期的な成長をもたらすことが目的です。したがって、ある程度の減速は織り込み済みだと思います。今後はドル高や円安の悪影響が弱まってくる可能性もあり、米経済に対する信認は次第に回復してくると予想されます。
図2:米国株の値動きを示す「S&P500」の一目均衡表は「3役好転」直前
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/2/29現在。
なお同様に一目均衡表が「3役好転」直前の形になっているものとしては「原油価格」があげられます。図3でご理解いただけるように、WTI先物相場はチャート上「底入れ」確認直前の形と言えそうです。
原油の需給を考える時に重要なことは、原油に対する世界の需要も、大口需要者である中国の需要(輸入)も減少している訳ではないことです。原油価格の下落理由はあくまで、米シェール革命を背景とする生産(供給)量の増加や、これまでの過剰流動性を背景とした投機的需要の減少に求められるものだと考えられます。
その意味で、原油の供給(生産量)は本質的に減らす必要まではなく、過度な増産競争を抑えることで需給はバランスに向かう可能性があります。2016年に入り、原油生産についてようやく「協調」の芽が見えてきたようで、価格の底入れが接近している可能性は十分ありそうです。原油が「底入れ」した可能性が大きいことも市場が見落としている好材料と言えそうです。
図3:原油価格(WTI先物)の一目均衡表も「3役好転」直前
- 当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。データは2016/2/29現在。
市場が見落としている好材料として最後に指摘したいのは「自社株買いがさらに増える可能性」です。日経報道によると、2015年度の上場企業による自社株買いは5兆円に迫り、2007年度の4.6兆円を抜いて過去最高を記録する勢いです。
最近の特徴としては、2月上旬のトヨタ(7203)、NTTドコモ(9437)に続き、同月中旬以降はソフトバンク(9984)、日産(7201)など、時価総額ランキング上位の主力企業で発表が続いていることです。
このことは、我が国を代表する主力企業の経営陣が株価が割安であることを示唆していると捉えることが可能です。また、時価総額上位企業の自社株買いだけに、市場全体の予想EPS(一株利益)やROE(株主資本利益率)の向上にも一役買う可能性がありそうです。
マイナス金利下では、現預金の保有が実質的にマイナス金利になる可能性があり、企業にとっては現預金の取り扱いが重要な問題になりそうです。また、長期金利の一層の低下により、それと比較した配当利回りの相対的な魅力が一層大きくなることも重要です。そのこと自体も投資家にとり、株式投資を促すインセンティブになりますが、企業には自社株買いで発行済み株数を減らし、支払い配当負担を減らすという選択肢が有力になってきます。
マイナス金利の影響は徐々に浸透すると考えられますが、「自社株買いが増加する可能性」はもっとも重要なもののひとつとみられます。
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